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海の向こうへ、海の向こうから  作者: 入江晶
2.旧友――今と昔
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2-1.親友同士、三人

 ――おいしい。

 ――でしょう、やっぱり。

 ――今更? さんざん食べ慣れてるでしょ。実家の料理なんだし。

 ――それがおいしいんだって。離れてみると、すごく感じるなぁ。

 ――じゃあ美佳にも分かるんじゃない? 私とは違って、最近まで向こうにいたんだから。

 ――かもね。まあ、おいしいと思うのは、作った人の腕前とかもあるんだろうけど。

 ――おっ、ご謙遜。ちょうどいいじゃん、今度美由紀に何か作ってあげなよ。

 ――やめとく。がっかりさせたら悪いから。

 ――あはは、心配いらないのに。ああそういえば、こういうことあったよね。高校卒業したときに。お店で集まったけど、お酒なしでさ。

 ――あったねー。美由紀と美佳が島を出ちゃうからって、みんなで集まって。今日の純くんとか、あのときと同じくらい寂しそうにしてたんじゃない? 本当に辛そうだったの、覚えてるなあ。まあ、一年ほとんど会えなくなったんだから、気持ちは分かるけど。

 ――確かに、そうだったかも。申し訳なくなるくらいで。今日もだけど……やっぱり変わってないのかなあ、みんな。恭子なんか何も変わってないから、そう思っちゃう。

 ――一番変わってる張本人が、そんなこと言う?

 ――いや、みんな変わってないでしょ。私だけじゃなくて。変わってるところもあるかもしれないけどさ、本当は、きっと、みんな変わってないんだよ。

 ――だといいね、きっとそうだよ。


 ――今は、純くんは?

 ――たぶん、もうご飯食べてると思う。自分で作ってるんじゃないかな。

 ――ふうん……いつもは、彼に作ってあげてるの?

 ――うん、私の方が、帰るの、早いことが多いから。休みの日なんかは、だいたい作ってくれるけど。

 ――でも一人になっちゃってるし。純くんの大事な奥さん借りてて、なんか悪い気がするなあ。

 ――分かってくれるよ、私たちの付き合いなら……たぶん。

 ――大丈夫でしょ。彼、優しい人だから。私もよく知ってるくらいだし。

 ――私もね! よーく知ってるよ。……でもさあ、純くんが許してくれるとかとは別で、今更っていうか、未だに心配なんだけど、私たち、本当に来て良かったの?

 ――最近は落ち着いてるから。それに、何もできないとか、ちょっとしたことですぐに悪い影響があるとか、そういうわけじゃないし、そんなに気を遣わなくても大丈夫だよ。いろいろ、気をつけてはいるけどね。

 ――いや、相当大変でしょ……大きな荷物、ずっと抱えてるようなものなんだから。

 ――まあそうだけど、もう慣れちゃったかな。ああでも、純くんも驚いてたなあ。

 ――どういうこと? 彼が驚くって。

 ――重さをね、体験できるんだよ。着ぐるみみたいなの羽織って。それで、すごく心配してくれてた。あと、お風呂入れる練習みたいなこともやったかな。人形を使ってたのに、めちゃくちゃ真剣っていうか、慎重になっててさあ。真面目なのは嬉しいけど、笑っちゃいそうだったよ。こっちの不安とか、一瞬忘れるくらい。

 ――純くんだったら、そうなるだろーね。簡単に想像できちゃうなあ。でも気持ちは分かるね。あれやったら、最初は重さにびっくりするもん。だから本当に、美由紀は尊敬するよ……ん? ああ、私は役場のイベントの手伝いに行った時に、やらせてもらったんだけどね。

 ――ふうん……じゃあ、分かってないのは、私だけか。

 ――十分分かってたでしょ、美由紀の大変さとか。

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