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海の向こうへ、海の向こうから  作者: 入江晶
1.海を渡って
3/9

1-3.再会

 目的地に着くと、美由紀が予想していた両親よりも先に、出迎えに現れる姿があった。いくらか驚きながら彼女が窓越しに手を振ると、ほとんど手を挙げるだけの返答を受ける。

 ――美佳、呼んでたんだ?

 ――荷物持ち要員。

 そのあっさりとした返答に、美由紀は苦笑した。そして窓の外の、両手を後ろに回して待ち構える、軽いジャケットを着て、髪型は短めのボブカットの無表情な顔という見慣れた姿を、いくらか目を細めて眺めた。

 ――そんじゃ、私はここまで。後は美佳に頼んでよ。

 ――うん、ありがとう。また夜にね。

 美由紀が車を降りると、トランクから取り出した荷物を持っていた美佳が、何も言わないままドアを閉めた。そして二人ともが窓をのぞき込んで恭子と手を振り合う。走り去っていく車を見送ってから、美由紀は向き直った。

 ――待った?

 ――意外と。どっか寄ってたの?

 ――まあ、少しね。懐かしくって。

 ――ふうん……

 ゆっくりと並んで歩きながら、何度か顔を見合わせて、美由紀の膨らんだ腹をしげしげと眺めたりしてからようやく、美佳が言う。

 ――髪、ずいぶん短くしたよね。

 いたずらっぽく笑った美由紀は、ほとんど露わになっている耳の周りを指でなぞりながら答えた。

 ――そうそう。しばらく、切りに行けないからさ。できるだけ持たせられるようにしておこうと思って。

 ――こっちにも、美容院ぐらいはあるんだけど。

 ――ああ、そういうことじゃなくて……長い時間出かけたり、座ったりできなくなるんだよね。だからまだ安全なうちに、さ。

 ――あ、そっか……ごめん。

 ――ううん、別に。でもこんなに短くしたのとか、高校時代以来だと思うなぁ……美佳は、ずっと同じ髪型だね、あの頃から。

 美由紀が笑いかけると、美佳は何も言わず、表情も変えないまま、顔を背けた。

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