1-3.再会
目的地に着くと、美由紀が予想していた両親よりも先に、出迎えに現れる姿があった。いくらか驚きながら彼女が窓越しに手を振ると、ほとんど手を挙げるだけの返答を受ける。
――美佳、呼んでたんだ?
――荷物持ち要員。
そのあっさりとした返答に、美由紀は苦笑した。そして窓の外の、両手を後ろに回して待ち構える、軽いジャケットを着て、髪型は短めのボブカットの無表情な顔という見慣れた姿を、いくらか目を細めて眺めた。
――そんじゃ、私はここまで。後は美佳に頼んでよ。
――うん、ありがとう。また夜にね。
美由紀が車を降りると、トランクから取り出した荷物を持っていた美佳が、何も言わないままドアを閉めた。そして二人ともが窓をのぞき込んで恭子と手を振り合う。走り去っていく車を見送ってから、美由紀は向き直った。
――待った?
――意外と。どっか寄ってたの?
――まあ、少しね。懐かしくって。
――ふうん……
ゆっくりと並んで歩きながら、何度か顔を見合わせて、美由紀の膨らんだ腹をしげしげと眺めたりしてからようやく、美佳が言う。
――髪、ずいぶん短くしたよね。
いたずらっぽく笑った美由紀は、ほとんど露わになっている耳の周りを指でなぞりながら答えた。
――そうそう。しばらく、切りに行けないからさ。できるだけ持たせられるようにしておこうと思って。
――こっちにも、美容院ぐらいはあるんだけど。
――ああ、そういうことじゃなくて……長い時間出かけたり、座ったりできなくなるんだよね。だからまだ安全なうちに、さ。
――あ、そっか……ごめん。
――ううん、別に。でもこんなに短くしたのとか、高校時代以来だと思うなぁ……美佳は、ずっと同じ髪型だね、あの頃から。
美由紀が笑いかけると、美佳は何も言わず、表情も変えないまま、顔を背けた。