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Episode21 開けた結界、向かう末には②

 ―――無限の神へと一斉射撃を行うそれは、まさに霧雨(きりさめ)の日に突然のように鳴り響く雷撃のようであった。縦横無尽にそれが移動しているかのように、現れては消え、現れては消えを繰り返す。三百六十度全方位から放たれる弾丸の嵐。それを防ぐのは、不可能のように思えた。だが……

「はぁ、はぁ、はぁ……この、悪魔め―――どこまでも私を―――!」

 ウボ=サスラは、間一髪のところで耐えていた。その手には、“純聖剣”最果てよりの希望(エクスカリバー)が握られている。なるほど、あれで『暗黒の銀の弾丸(ミスリル・バレット)―――時雨超錯乱射撃(モード・マシンガン)』の全方位から降り注ぐ弾丸の雨を防いだのか。見れば、“純聖剣”最果てよりの希望(エクスカリバー)の周りには稲妻が走っている。恐らくは、あれは原子がプラズマ化した時に出る、今まで原子核の周りを回っていた電子の塊! ―――それほどまでに、あの“純聖剣”最果てよりの希望(エクスカリバー)は高火力なのか。

 ウボ=サスラが、私を睨み“純聖剣”最果てよりの希望(エクスカリバー)を振り下ろす。すると、空間を切り裂く雷鳴が轟く。紫色に染まっている雷轟は、空間を伝わり、私の下まで―――。

 バッと土煙が上がる。

 その瞬間、視界は暗転する。そして、神経網の痛覚が一瞬のうちにそこからの信号がシャットされたような感覚に(おちい)る。恐らく、まあ、“純聖剣”最果てよりの希望(エクスカリバー)から放たれた高火力のエネルギーに当てられて、何かしら身体に異常をきたしたのだろう。最悪の場合、私は油断から首を落とされ、自らの崩れ行く身体をローアングルから眺めていることだろう。

 だが、そんなことにはならなかった。

「な―――! あ、あれは―――」

 ジャラジャラと、鎖が擦れる音が聞こえる。それは金色に輝く途方もなく長い鎖なのだと、視界が開けてからわかる。眼の前には、目を見開いて驚嘆の表情を隠せないウボ=サスラの姿であった。未だに手に握る“純聖剣”最果てよりの希望(エクスカリバー)は、先程『暗黒の銀の弾丸(ミスリル・バレット)―――時雨超錯乱射撃(モード・マシンガン)』の攻撃を受けたにも関わらず、そして、大量のエネルギーを放出したにも関わらず、煌々と輝き続ける剣身を天の岩戸に隠さない。

「あれは―――この世の全てを監視する、抑止の鎖。“世界”の危機に現れる、“世界”よりの守護の御使い! そしてその名を―――『天からの懲罰は鎖(エンキドゥ)』! なぜここに!?」

 これが……

「『天からの懲罰は鎖(エンキドゥ)』……」

 話には聞いていたが、まさかこれほどまでに神秘を感じるものだとは。まさに“世界”が創造した神世よりの遺物(アーティファクト)とか、失われし時よりの品(オーパーツ)とか呼ばれるものと同等の、またはそれ以上の存在である。

 そして、なぜ『天からの懲罰は鎖(エンキドゥ)』が私のところへ来たのか。その要件は、大体想像がつく。それは―――

「私を、新たなる“世界の守護者”にしようと?」

 その証拠に、先程まで舞っていたエネルギーに由来する暴風は嘘のように止み、辺りは静まり返っている。

 そして『天からの懲罰は鎖(エンキドゥ)』は、私に巻き付いた。そうして数秒の後―――『天からの懲罰は鎖(エンキドゥ)』は私に密着すると、霧散する。すると、私の衣装が変わる。白基調のスカートで、ところどころ金色のメッシュが入り、禍々しい紫色で文様が走っていた。

「……ならば、“世界の守護者”として、今ここで“世界”の敵を駆逐する! 世界よ、微笑(ほほえ)み給え―――“契約幻想罪念武装(アーク)”―――」

 私は、その踏み込みとともに、

「―――憐憫せし美徳の愉悦(カリバーン・ダエーワ)!」

 膨大なるエネルギーを、ウボ=サスラという神に向けて、救済の光を放ったのである。

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