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Episode21 開けた結界、向かう末には①

 ―――だがしかし、祈れどもそれが叶うことはなかった。

 “世界”が、拒否した。それは、まだできる状況に整っていない、と。それをするには、今に対峙している“世界”を支配している霊長たる人類を喰らい尽くそうとしているそこに無限の神―――ウボ=サスラを倒さなければならない、とも。

 その倒せ、という要請に対する答えは―――イエスだ。

 やってやるよ。この“世界”―――ひいては、ファンを含めたすべての人々を守るために。そうして私は、金属片を握りしめる。すると、私の力に反応したのだろうか、金属片が再生し始めて柄の形となる。それは黒々と輝いていて―――。

「ふふふっ」

 良いことを思いついてしまった。この状況を打破する最善の策。私が今、ある程度“世界”を好き勝手できるのだとすれば、先程のウボ=サスラの『存在』とは何かの説明を聞いて思いついた、存在を焼き切る最上の剣。

「何を笑っているの? 何がそんなにオカシイの? ねぇ!」

 一度心象風景を顕界させてしまって、もう体力がないウボ=サスラが吠えているが、それを無視する。すると、私は手を前に出す。それは、金属片が再生してできた柄を持っている方の腕。両手で持って、構えを取る。そして、叫ぶ。

「私は、次の“世界”の管理者たる横山慧宙! そして、私の力の本来の名は―――『神聖・死霊魂(バアル=ゼブル)』! 高き館の高貴なる主人の名を冠するもの! この“世界”の住人よ、その存在の欠片、私に捧げよ!」

 そう言うと、その柄が、熱くなる。何かが纏うように、握る柄の上に付随し、光り輝く炎のようなものが現れる。それは段々と真の姿を現していき―――やがて、炎の鞘から飛び出した。

 それは、希望の剣。最果てより来る剣の、さらに以前の存在。骨組みとなった試作創造品(プロトタイプ)。伝承における星の輝き。その最古の光が、今、ここに。燃え上がるように熱く、また、全てを照らすように、全てを飲み込み喰らい尽くすように自己の光を燦々(さんさん)と放つ、それの名は―――

「この“世界”に存在するもの全ての『存在』の一欠片を集めて鋳造(ちゅうぞう)した、世界を救おうとする、数多の意思の集合体―――“契約幻想罪念武装(アーク)憐憫せし美徳の愉悦(カリバーン・ダエーワ)!」

 阿頼耶識(あらやしき)を象徴する、霊長の意思の集合体。阿頼耶識とは、要約するにヨーロッパの哲学者が唱えた「集合的無意識」と同じようなことである。そして、自らの存在するこの“世界”を守ろうという全人類共通の意思―――その塊。それが、“契約幻想罪念武装(アーク)憐憫せし美徳の愉悦(カリバーン・ダエーワ)なのである。

「何―――、くぅっ! 来い、“純聖剣”最果てよりの希望(エクスカリバー)!」

 ウボ=サスラが、自らの切り札である“純聖剣”最果てよりの希望(エクスカリバー)を呼び寄せる。すると、地面に放り出されていた“純聖剣”最果てよりの希望(エクスカリバー)が、吸い寄せられるようにウボ=サスラの手に収まる。

 そうして、私はウボ=サスラが“純聖剣”最果てよりの希望(エクスカリバー)を構えたのを確認すると、“契約幻想罪念武装(アーク)憐憫せし美徳の愉悦(カリバーン・ダエーワ)を振り下ろした―――のではなく。

 振り下ろすふりをして、手を鉄砲の形にする。そして―――

「轟け雷鳴! されど響け雨音! それは、悪魔たちの喝采の結晶! 『暗黒の銀の弾丸(ミスリル・バレット)―――時雨超錯乱射撃(モード・マシンガン)』!」

 この真象風景内は、私の思うがまま。一発しか再現できなかったこの『暗黒の銀の弾丸(ミスリル・バレット)』を、ウボ=サスラを覆うように展開し、それを一気に放つ。それが、新たなる怪しく輝くキュグデの結晶―――『暗黒の銀の弾丸(ミスリル・バレット)―――時雨超錯乱射撃(モード・マシンガン)』である。

 それは、確かな銃声を響かせて、無限の神へと牙を向いたのであった。

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