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Episode15 双星、乖離の杯①

やっと、ラストスパート。

 ―――姉妹事務所『ティンダロス』の社長たるフェン・ミゼーアが正体不明の少女―――自称・会長の双子である一条天遥に殺害され、その天遥が自らの“想像力”に呑まれ「自我の上書き」に遭い、ウボ=サスラとなってしまった事件と、“金色の使者(プライド)”がこの“世界”の真理を話した出来事から数週間。度々報じられるウボ=サスラ関係の事件をテレビで見るたび、胸が後悔で苦しくなり、心が締め付けられるように痛む。そんな頃から、会長の様子が変になっていた。

 いつもは“想像力”の訓練などさせないくせに、もう数週間前に終わったライブで、私達の中で〈フェーズ〉が〈ファイナルフェーズ〉に到達した出たという理由から、急に訓練をさせ出したりした。不可解な会長の行動に、思案していた日々。そんなある日、重大な凶報が耳に飛び込んできた。

 ―――会長が、失踪した。


「―――捜したぞ、ウボ=サスラ」

 誰もが凍りつきそうなほど、冷酷、かつ内なる憎悪で埋め尽くされた低い声で言うのは会長―――空海無垢美であった。

 いつもの質素に見えて意外と中々ハイブランドない服に身を包んだ状態とは違い、どこから引っ張り出してきたのか、来ているのはお世辞にもきれいとは言い難い学生服であった。しかし、ブレザーであり、多少はアクロバティックな動きはできそうではある。

「あなたでありましたか。アザトース」

 その可愛らしくも凛とした声で言う絶世の美女―――あるいは美少女―――は、会長の自称片割れである一条天遥の身体を乗っ取ったウボ=サスラであった。どこから強奪してきたのであろうか、鮮やかな紫色の着物を身にまとっており、その着物には淡い色で蝶の模様がこしらえられている。どこか優雅な雰囲気を醸し出す彼女は、その荘厳で華美な衣装に着られているような感じは一切なく、その華美と優雅さが合わさって、優美で幽玄。夢幻にして、どこまでも飛び出してきそうな現実のような。そんな相反する印象を強く纏っている。

 しかし、そんなものには目もくれず、無垢美はウボ=サスラに強く言い放つ。

「私をアザトースと呼ぶな、この塵芥(ちりあくた)いかの腐れ外道が」

 その言葉に、手に持つ扇子を開き、パタパタと仰ぎながら意外そうな顔でウボ=サスラも答える。

「あら、これは心外ですわね。私は、貴女(あなた)が目を覚ますのを楽しみ待っていますのに」

()かせ」

「本当ですのに……。残念ですわ〜」

 ウボ=サスラが泣き真似をして余裕そうな雰囲気で答えたその時であった。後方で、電柱―――あるいはそれに類する何かが倒れる爆発音が聞こえてきた。クスクスと笑っていた余裕が少し削がれ、笑って閉じていた目をすっと無垢美の方に向けると、その指は銃の形をなしており、その形状からウボ=サスラは無垢美が、自らの“想像力”を使って『無銃(ナッシングガン)』を放ったのだと判断した。

「あら、不意打ちなんて無粋でなくて?」

「私は貴様のように姑息な真似などせん。その証拠に、私は指を構えていたぞ。私を責めるのは、お門違いというものではないか?」

「……貴女、相手に―――しかもレディに姑息とは失礼でなくて?」

 そう言った時、またしても後方から―――否、自分の真横から聞こえた。ぐちゃっという肉の音が。余裕の象徴たる扇子を持っていた右手が、吹き飛ばされた―――否、無に置き換えられた。

「こちらも、もう怒っていますのよ? そろそろ大人しく服従して、その身をもとある所に返せば良いと思いますわよ?」

「うるさい。もう喋るな―――」

 そう言うと、何かが集まっているのかは分からないが、とても大きな物が一度米粒大に圧縮されたかのようなも物凄いエネルギー密度がそこに現れたかのような気配がした。その様子に、ウボ=サスラも理解が追いつかず混乱する。

「何が……?」

 それに、無垢美は返す。―――もっとも、この場において厄介極まりない答えを。

「……貴様の得意なことだ」

 無垢美のその言葉が、合図となったのだろうか。その米粒大に圧縮されたかのような謎のモノはこの地域一体を飲み込むほどの大きさに広がっていく。それは、生体反応のあるものだけを残して、全てを塗り替えていく。“世界”すらも、塗り替えられる。

 そして告げるは、死刑宣告。世界への無礼の、最大の罰則。

「心象風景―――『夢幻の万魔殿(パンデモニウム)』!」

 決戦は、この時―――ゴングが鳴らされた。

この戦いが終われば、多分、私の戦いも終わるんだ!

あと、何気に一周年過ぎてた。おめでとー!(今更)

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