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Episode13:Chapter3/Side:superbia 霊の戦い・第三節―――黙示録の戦《アポカリプス》⑪

遅れました……

「―――ネロ……ネロ……! あの我らの信徒を迫害したという……あの“暴君”第五代ローマ皇帝ネロ・カエサルか!」

 ヱリルは叫ぶ。―――彼女らの主たる神を信じ、崇める民を一方的に迫害したのだという。それを彼女は―――。

(―――赦してなるものか!)

【……はぁ、貴君も硬いなァ。まあ良い。あまり長々と話をするのも、あまり好きではないのでな】

 皇帝、その威厳。それらが彼女の(彼の?)背中からどす黒い赤色を伴って勢いよく飛び出し、その瘴気が辺りに充満している(外だが)幻覚さえも見えてきそうだ。

 そして、彼女はどこから取り出したかわからない石を主原料としているであろう椅子に座る。瞬間、黄金の宮殿が花開く。辺りは見えない影、だが確かにそこにいる楽団が鎮座しており、今にもその手に持つ楽器から爽やかかつ、荘厳な音色を奏で出しそうな気さえ感じる。

 しかし、それに似つかわしくない苛立ちを醸し出しながら、皇帝は自らの口を開く。

【―――それにしても、だ。神だの、主だの、それを信じる民を追いやっただの。ワタシはそのような話に飽き飽きしている。その信徒を追いやった。それは事実だ―――だが、それが何だというのだ】

 ネロは続ける。

【ワタシは、ワタシの愛する民草を守ろうとしただけ。それのどこが悪徳というのか! あの大火、その恨み―――晴らさでおくべきか!】

「黙れ、傲慢の悪魔よ! 暴君ネロよ!」

 怒号が飛ぶ。それは、自らの主を貶された怒り。それは、自らが守護する民を貶された怒り。その怒りは、今や絶頂の域に達していた。―――ほぼ同時期に行われていた魔王と天使長の決闘に影響されたのではないだろうかとも考えられるが。

「貴様は何も分かっていない! 何が犯人だ。我々の守護する民が、悪だというのか! 我らこそ、正義そのものだ。間違っているのは、貴様だ!」

 一度剣身を見せた黄金に輝く剣―――“陽聖剣”至高天へと至る剣ガラティン・プリーステスだが、またしても温度が上がり、陽炎で見えなくなってしまう。例えるならば「天岩戸隠れ」―――とでも言うべきか。ヱリルの感情の高ぶりとともに、その剣の温度は上がっていく。悲しみでも、憎しみでも、怒りでも。どのような感情であろうと、太陽の輝きに変換されていく。

 そのようにして十分に熱された黄金の剣が、渾身の力を込めて振り下ろされる。その時に、あまりの熱さに周りの空気は、それまでなんとか耐えていたものの、その一撃が原因でプラズマ化。大量の電子を纏ったことで稲妻を伴う斬撃を―――。


 ガキンッ!


 と、激しい金属音が鳴り響き、その一撃は防がれる。超音速かつ超高温の絶対的な斬撃。それを止めることなど、ほぼ不可能に等しい。だが、実際にそれは起こってしまった。見れば、ネロの手には先程までは見られなかった黒と黄金が散りばめられたような色―――グラデーションがかかった剣が握られている。その剣を持ち、ネロは―――殺意を込めた目線で、また侮蔑するような、相手を侮辱するような目線で、ヱリルを見た。その剣はワタシには届かぬぞ―――とでも言うかのように。

「馬鹿な、我の渾身の一撃が……この細い、貧弱な芸術品としか思えない作りの剣に防がれただと……!」

【ふむ。悪くない、とだけ言っておこうか。だが―――いささか無駄が多い。感情の制御がなっていない。本物の神の使徒とは、自らの感情を完全に抑えることができる。―――それは、神の生き写しもまた同じだ】

 ガラッと雰囲気が変わる。そこに相対するのが、まさか同じ人間(肉体は)とはとても思えないほど、威圧感に満ちていた。今まで溜めてきた、人生を捧げてきた全て―――ローマ。そのローマの風景を壊されたことが、ネロは気に食わなかった。いや、気に食わなかったという次元ではない。憎かったのだろう。その罪を認めないどころか、自分たちは正義だと言い張る。その態度が、皇帝の怒りを更に買ってしまった。

【神の生き写しとは、神格化され、人々に崇拝されたワタシのことだ。ワタシが今まで抑えてきた感情の高ぶりを―――今、ここで解き放とうか!……それは、厄災の炎。それを感じた絶望の剣。全てを失い、ただ憎み、我を失いし獣の名。七つの王を焼き尽くし、正義と叫ぶ傲慢の名。来たれ、大いなる剣よ……『七つの王の墓にて(セプティモンティウム)』!―――装填完了、熱気開放(セット・オン)特殊形態(モード・)金色と浪漫の大火フレイム・オブ・ローマ』!】

 轟々と燃え盛る炎は、太陽を飲み込む。それは、憎しみの烈火。怒りの猛火。地獄より這い上がった、業火の猛獣。その獣に飲み込まれ、天使は再起不能(リタイア)した。

やっぱ、副音声的なものは負担が大きいので止めときます。はい。

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