Episode13:Chapter3/Side:superbia 霊の戦い・第三節―――黙示録の戦《アポカリプス》⑩
(―――さて、どうするか)
思考を巡らし、この状況からどうやって脱却するかを考える。眼の前には伝説の太陽の聖剣を携えた「破壊の天使」。しかもその剣は超高温。全てを燃やし尽くす希望の業火を纏いし剣。すでに自らの剣が最早使い物にならない有可にとって、もう自らの手に残る手段はほぼ残されていなかった。
「どうした、悪魔よ。我が手の剣の能力を暴いたとて、貴様の絶望的状況は変わりはせぬ。この太陽より使わされた聖剣―――“陽聖剣”至高天へと至る剣は、最早いかなる攻撃をも焼き切ってしまう。これは、神が認めた最初にして最後の絶対武装。貴様ら悪魔ごときがこの神の御業を破るなど、千年早い―――否、早いどころではないな。永久にたどり着けぬよ」
額に冷や汗。そんな状況の有可に対して、容赦なくジリジリと攻め寄ってくるヱリルの手には、不可視の炎に包まれていた黄金の剣身があらわになっている“陽聖剣”至高天へと至る剣が。絶望的状況、その言葉が最も似合う場である。運命の前借り、それによって最早攻撃そのものが無へと化してしまう。要するに、もう攻撃はできない。
(となると、私は詰みか……)
―――認められない。
今、この瞬間にでもヱリルは距離を縮めてきている。彼女を処刑するために。
(私は傲慢だが、いっそのこともう潔く)
―――それだけはならない。
胸の奥から熱い―――熱すぎるものが溢れてくる。それは、鼓動に合わせ心臓から溢れ出るように。
(さっきから何だこれは……)
―――何のためにやって来た。
頭の中にガンガンと響く誰かの声。まるでそれは、有可が自らの思想を否定しようとするのを阻止しているような。
(うるさい……)
―――王として、皇帝としての矜持を。
「―――ッ!」
その言葉で思い出す。彼女は何者で、何を背負って、何を目標として生きてきたか。愚かだが愛でるべき仲間たち。陰ながら支える舞台裏の人物たる経営陣。その期待全てに応えるべく、彼女は、今まで生きてきたのではないか。
「フフフッ、ア―――ハッハッハ!」
(そうだ、失念していた。私が……ワタシが何を掲げて生きてきたのかを。全ての民から愛されるべくしてワタシは―――)
―――ワタシの手を取れ、堕天使。
「どうした、悪魔よ。まさか、この剣の威光にさらされ気が触れてしまったのではあるまいな?」
その言葉に、得意げな表情を浮かべ、有可は振り返る。―――否、有可ではない。それは―――
【ワタシを悪魔などと……まだ根に持っているのか? その神は】
黄金にたなびく髪を優雅にまとめ上げ、禍々しく輝く黄金の目を見開き、言った。
「まさか……貴様は……」
【ワタシが何者かを知りたいか? そうか、ならば教えてやろう。―――ワタシこそがローマ帝国第五代皇帝たるネロ・クラウディウス・カエサルその人である! ……いや、貴様らの場合は、『666の獣』と名乗ったほうがわかりやすいか?】
【副音声的なもの】
・覚醒フラグ
おや? 有可のようすが……
・覚醒しました
おめでとう! 有可はネロ・クラウディウス・カエサルに進化した!