Episode13:Chapter3/Side:superbia 霊の戦い・第三節―――黙示録の戦《アポカリプス》⑧
遅くなりました。
―――刀と剣は火花を散らす。打ち合いは未だ決着はつかず、神話は続く。時折、轟々と燃え盛る炎をヱリルが爆発させ―――『獄炎・裂』―――たり、輪廻転生の名を変えた“凛廻天聖”の名の如く一周して戻ってくる奇妙な軌道を描く一閃を有可が撃ち出し―――『瞬光の如き廻閃』―――たりなどするが、一向に勝負はつかない。その状況に痺れを切らした有可がいよいよ本格的に動き出す。
「先程からこう何分も、何十分も打ち合っているが一向に埒が明かない。故に! 私はここで決めさせてもらうぞ、愚民よ!―――千里、須臾、運命と境界。ああ、天使よ! なんと嘆かわしいことか。その体の自由を得たいとは思わないか。人形よ、その糸を断ち切りたいと思わないか! 今、天地開闢より濁りきったその罪を、ただ、罰として与えたもう!―――『不幸咒・憐憫』!」
有可が“想像力”を発動した、その瞬間、
「グフッ―――! ガハッ! ……一体、何が起きたというのか」
誘惑の言葉とともに起こったのはヱリルに向けて放たれた数百の斬撃。しかし、数秒前には何も剣を振るう素振りすら見せなかった。では何故、このようなことが起こったのか? それは次の有可の言葉で説明される。
「何が起きたか? 教えてやろうではないか。それは、“運命”そのものだ。貴様が歩むであろう人生―――その可能性。そしてその中でも確定した結果―――“運命”を一瞬に詰め込んでその中から『斬撃』に関わる“運命”を今、この場に降ろした。そして―――それには私がこれから放つであろう斬撃も含まれている。故に、ここで貴様は終わりだ」
そう、それは数多の者の手による幾千、幾万にも及ぶヱリルに対しての危害、その結晶。そして、今この瞬間にでも脱落しそうなヱリルは、これ以上危害が加えられることはないとはいえ、今にも立っているのがやっとというところであり、非常に危険な状態である。
(……私も、もう終わりか? このような悪魔に? こんな簡単に討ち取られて、世界から退場しても良いのか? ―――否、それはだめだ。あってはならない! 我らが主を残したまま、死ねるわけがあるまい―――!)
意識が朦朧とする中、彼女が考えていたのは彼らの主たる神のことであった。他のことに思考を巡らすこともなく、ただただ意識が消えゆく中、後悔するのは神のこと。まさに、「忠義」。―――その美徳が、その願いが世界に認められたのか、彼女は奇跡―――否、必然を乗り越え、別の“運命”を手繰り寄せた。
「主よ! たった一度でも良いです。ただ、ただただ―――この悪魔を打ち倒す力を、私に、お与えください―――!」
瞬間、純白の天使の羽が紅く、炎のように染まっていく。肌も焼けたように浅黒く、目には煌めく一等星―――太陽がサンサンと輝いている。手にはさらに火力を増した“聖典剣”忠義の女教皇が。その姿は、まるで―――「破壊の天使」。
「これは……」
「―――聞け! そこにいる原罪の堕天使よ! 我は神より使わされた天使―――ウリエル! 今、貴様を罰するものである!」