Episode13:Chapter3 霊の戦い・第三節―――黙示録の戦《アポカリプス》②
一日間が空きました。
「―――さて、作戦を立てようと思う……が、今回は作戦を立てない」
「何を言っているんだ」
先程のことよりはや数分。完全に復活したゆうかりんが作戦を立てないと宣言したことに、横から姫様が刃物のように鋭く尖ったツッコミを入れる。先程まで死んでいたも同然だった彼女らのはつらつとした様子を見ると、少し和んでしまう。しかし、ゆうかりんは真剣な顔で、言い放った。
「今回は、あえて作戦を立てない。何故なら、恐らく戦闘面なら個々人の能力をフルで活用できる環境―――要するに一人ひとりバラバラの行動をしたほうが我々の場合は、勝率が高いと見たからだ」
「でも―――」
「ああ、分かっている。皆まで言うな。簡単な作戦―――というか全体的で抽象的な作戦は立てておいたほうが良いだろう。それが、今回の戦いの指針となる」
そうして話し合った結果、方向性としては決した。まあ、ザックリとした、本当に全体的で抽象的だが。そして、その作戦曰く―――「ただ全力を尽くせ。相手を殺す覚悟でやれ。死ぬと思っても突撃せよ」という、なんともふざけた作戦と言えないようなものであった。
しかし、その時は訪れる。
『では、全員揃いましたので、初めたいと思います!あ、観客の皆さんには被害が及ばないように我が社の職員が総動員で結界を張っておりますので、ご安心を。では、改めて―――第二戦『黙示録の戦』、開戦!』
本当の終末の戦い―――悪魔と天使の頂上決戦の始まりを告げるラッパに似たサイレンの音が響き渡る。各自、バラバラに散らばり、相手の出を見る方向で待機する。
すると、後ろから猛烈な気配を感じる。それは、長い戦いの因縁のような、捕り損ねた獲物を今度こそ狩ろうとするような……そんな、気配を感じた。とっさに振り向き、『暴食』を前方に展開させると、急にその気配は動きを止めた。そして、その正体は、
「やっぱり君か。灯さん」
「その呼び方はやめなさい。私は、ハニエル。七大天使の一柱にして、『自制』の美徳を司る者。神の代行者にして、悪、異端を滅する者」
何度聞いても、イタい。トキさんの話によると、彼女らは洗脳されているようだけれど、誰に洗脳されてるんだ?誰がこんなイタいセリフを……。そう思い、灯の方を見た時、斬撃。避けられたのが実に奇跡だった。私の反応が0.1秒でも遅れていたら、私の下半身と胴体は泣き別れ―――とまでは行かずとも、確実にHPが減り、不利な状況に立たされるのは間違いなかっただろう。やはり、“人の認知限界”を喰らうって行為は、最強なんだな。うん。
「……今は、天使の姿じゃないんだね」
「ええ。この姿ではないと、アレが使えませんから」
……アレ?
「すぐに分かります」
そう言いつつ、羽根を使った斬撃のラッシュを私に浴びせる。それを喰っては吐き、喰っては吐きを繰り返し、なんとか耐え忍ぶ。恐らく『永食』の容量は残りわずか。この残っている容量を無駄なく使わなければならない。いきなり膨大なエネルギーをこっちに投げられても、対処に困る。それは、例えるならば、掃除機にとても大きな砂岩を突っ込もうとしているようなものである。徐々に徐々に吸い取っていかなければ、故障する。
「もう良いでしょう……。解放します」
恐らく、例のアレがお披露目されるのだろう。少し楽しみになっている自分がいる。
「想像上武具“聖水弓“聖杯の射手!」
そうして、虚空よりは現れるは、弓。何の変哲も無いただの弓のように見える。だがしかし、これは想像上武具。しかも恐らく『獄門・アザー』。殺しに特化した武器系統の想像上武具と見た。
ならば、こちらも出さねば、と思い想像上武具を取り出す。
「想像上武具“呪啜剃刀”妖魔封印刀・蠅!」
そして、武器を構えた射手と小刀使いは、互いに神経を尖らせ、この戦いに集中するのであった。
多分、一週間に2話ぐらいかな。投稿ペース。