Episode13:Chapter3 霊の戦い・第三節―――黙示録の戦《アポカリプス》①
遅れました。テストだったもんで。
フィジカルバトルでの敗北。それは、ホリセブを応援していた側には大きな希望と活力を与え、キュグデを応援していた側には深い絶望と目標が生まれた。しかし、悔しさを噛みしめる暇もなく一日が経ち、次の勝負が始まろうとしてた。
『はいは〜い!皆さん、よく眠れましたか?では、今日の勝負内容を発表したいと思います!それは―――アイドル同士の伝説の一戦!七対七の大勝負!『公認決闘―――黙示録の戦』だあああああああああ!』
うおおおおおおおおおおおおおおお!大喝采が響き渡る。次の勝負は区民想像力総合管理署の元締めである想像省が公認した“想像力”を使用した戦い―――「決闘」である。この「決闘」は通常ならば、“想像力”を使用した暴行―――というか戦いは罰せられるが、公認されているので、罰せられないというものである。そもそもアイドルにそんな事をさせても良いのだろうか?
しかし、私達に拒否権はなく、参加することになった……のだが。雰囲気がいつもより暗い。特に、あの二人が。それも無理はない。あの鮮明なほどの力の差を見せつけられたならば、心の一つや二つ、折れても仕方がないと思う。だが、それでもあの「傲慢」なゆうかりんが落ち込むとは、異常事態というほかないだろう。
「……大丈夫なの?あんたたち」
いつもは心配をほとんどしない白香ですら気を使う始末。これはまあ、天地開闢以来の異常事態の一つと言ってもいい。そして、ゆうかりんの方を見てみると、なんと、涙を流していた。頬を、濡らしていたのだ。
「……なあ、お前たち。私は、今、人生で初めて屈しかけている。これは、由々しき事態であり―――まあ、何と言うか。要するに、私は、諦めかけているのだ。この勝負を」
……何を言い出すかと思えば、彼女らしくない。彼女はいつも、傲慢で、強気で、すべてを我が物としているような態度で、天上天下唯我独尊。それが彼女を表すにふさわしい言葉だったのに。今の彼女は、ただの、人間である。傲慢も威厳も何もない。
「君らしくないね。もうちょっと自信を持ちなよ」
おっと、私が考えていたことを先に言った者が居たようだ。その方向を向いてみると、今回の指揮官―――智香が居た。彼女は、そのまま言葉を続ける。
「私は拠点から指示を出していただけだったけどね、君の行動は、何も間違っていない。相手の力が予想以上に強かっただけだ。……それを言うならば、責任は私にもある。けど、君も勝ちたいだろう?」
その言葉が響いたのだろうか、ゆうかりんが口を開く。それは、先程までの負の感情的な言葉ではなく、決意の言葉であった。
「……そうだな。私も、勝ちたいさ。―――決心、か。そうだな、私も意を決する時が来たようだ。ここに意思を表明しよう。私は、勝ちたい。相手を、大差で。そうだ、私は―――『傲慢』、だから」
そして、しばしの沈黙が流れた後、響くは祝福の拍手。それは、観客席の方から聞こえてくる。振り返れば、大勢のファンが、私達の様子を見て拍手していた。実はこっそり撮影されていたらしい。あのプロデューサーめ。
「観客も見てくれているな。ならば―――ここに、もう一度宣言しよう!私達―――キュグデは、ファンの皆に、勝利をもたらそうではないか!」
うおおおおおおおおおお!大喝采!それは、大いなる喝采(二度言った)。それに共鳴して、私達も同意の居を示し、六人で叫んだ。
「……姫様、いつ復活したの?」
「ついさっきだけど。忘れられてたし」
……すみません。
アポカリプス……ちょっとダサいかもしれない。いや、かなりダサい。