Episode13:Chapter2 霊の戦い・第二節―――視点/角度④
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彼女―――フェン・ミゼーアは東南アジアのある農村で生まれた。
父が現地人、母が日本人であった。しかし、その村は排他的な側面が強く、よそ者であった母と、それを連れてきた父を迫害していた。
そんな中、父母はミゼーアの安全のため、別の村に引っ越すことにした。
しかし、引っ越して穏やかな生活が始まると思った、そのときに、ミゼーアの将来に関わる大きな出来事が起こってしまう。
父と母が殺害されてしまった。このような事件が起こってしまった原因は、その後に判明した。前に住んでいた村には、あるカルト集団が本拠地を作っていた。そのカルト集団は、悪魔を召喚しようとその村全員を洗脳した。しかし、その時偶然日本に行っていたミゼーアの父のみが洗脳にかからず、なおかつその村自体が前から排他的であったため、村を離れてしまった。
カルト集団は、その村での集団自殺を命じ、それで死んだ数を数えていたが、教団の教え的に二人足りないということで村から逃げた父と母が殺害されてしまったのだ。
ミゼーアは怒った。いや、怒りでは表せない感情であった。それは悲しみであり、どこか愛のようなものでもあった。その感情がトリガーとなったのだろう。ミゼーアの体に秘められた力が、突如覚醒した。
―――それこそが、“想像力”『邪神・角度獣王』であった。
『邪神・角度獣王』は、ミゼーアの怒りでは表せない感情―――憎悪のままにミゼーアの体を動かした。その結果が、全世界を震撼させた、犠牲者数億の史上最大の惨劇「東南アジア大量殺人事件」―――通称『|血の降る夜に、獣は踊る《ブラッディ・ナイトメア》』である。そして、この惨劇は、僅か数時間の間に行われ、その犯人であるミゼーアは犯人として特定されていない。
……その一夜の事件がミゼーアの精神を不安定にしたのだろう。ミゼーアの中にはその少女本来の人格と、狡猾な猟犬の人格が備わっており、十年ほど前から、その人格と人格は混ざり合ってきている。
その日に、奇しくも父母の仇であるカルト集団の願い―――悪魔召喚は、叶ってしまったのである。
―――「ああああああああああああ!」彼女は叫ぶ。
―――「あぁ……あぁ……」彼女は悲しむ。
その叫びと悲しみが、人知れず野生を象徴する呪文となっているのに気付かず。そして、その時、人格が完全に混ざりあった。
「……」
「どうした、ミゼーア。いつもの飄々とした態度はどうした?」
「……フフ」
「……本当に、気が触れたのか?」
「……フハハハ!ア―――ッハッハッハ!愉快だなぁ、この世界は」
そして、久瑠が異変に気づく。しかし、そのときにはもう、まともな人としての人格など持っていなかったである。
「―――お前は……」
「ん〜〜?アァ、そうか……私は今、負けてたのか。……そうだったなぁ、忘れてたなぁ」
すると、ミゼーアは自分の指を食いちぎり、こう言った。
「最終手段と行こうか」
ミゼーアは、自分の指から出た血で、五芒星のみを描き、『邪神・角度獣皇太子』を召喚したときとは違う雰囲気を纏う。
「『邪神・角度獣王』……『邪神・角度獣皇太子』を喰らえ。呪文詠唱―――冷徹・冷酷・冷心・凝固。ひふみよ、いむなや、こと、ふるべ、ゆらゆらと、ふるべ。角度に潜むものよ、それは無駄である。ただその身を女王に捧げ、我が血肉となれ―――」
すると、『邪神・角度獣皇太子』が非ユークリッド幾何学的多面体となり、ミゼーアの手の中に収まった。
そして、その立体を投げると、手を手のひらを見せるように合わせた。
「『邪神・角度獣王』最終形態―――狂乱異常角度都市之主!」
立体が弾ける。と思うと、その立体が弾け飛んだかけらが、ゆっくりと液体となり、ミゼーアの体に纏わりつく。そうして、ミゼーアの身長ほどある多角形ができたと思えば、それが割れた。
その中からは、人狼、ワーウルフ、獣人と言うべき人型の生物が出てきた。それは、こう名乗った。
「はじめまして、久瑠君。私の名は、異次元の果てにある都市『ティンダロス』の主―――
―――『邪神・角度獣王』である」
まだ、狂気は終わらない。