今、ある理由。
真理は、小さい時から、霊感が、強かった。雨の降る夜が怖かった。特に、雷のなる夜は、怖い。何処からとも無く、笹の葉の、匂いが、漂い、茂みに、隠れたくなる。夜は、暗闇で寝れない。あちこちの、空間で、電気が、ショートする音が、広がり、真理を、怖がらせた。よく、誰もいない空間に、話し掛け、両親を、怖がらせた。いつしか、傍らには、霊が、自然と現れ、会話するのが、当たり前になっていた。真理が、小さい時は、動物霊や、子供の霊が、多かったが、大人になると、現れるのも、大人の霊が増えていた。怖いというより、普通に、いる人達と会話するように、普通に、霊と会話していたが、ある時、それは、特別な事で、他の人には、受け入れられない事だという事が、判ってきた。その時、自分のこの力が、何かしら、深い縁に、基づくものではないかと思い始めていた。
「遠い記憶に・・・。」
思い出すように、真理は、呟いた。記憶がある。そこは、見晴らしのいい、水面がひろがる。どこまでも、続く、水平線。水面からは、いくつもの、幹が伸び、天に向かって、広がっている。所々、点在つる住宅は、床が高く、屋根は、広葉樹の葉にも見える。そして、間を、縫うように、進んでいく、舟達。舟漕ぎ達は、身慣れぬ、服に身をつつみ、顔は、浅黒かった。自分の足首は、生暖かい水が、流れていた。自分の理解できない記憶と力は、関係しているのかもしれない。そんな事、一度も、考えた事なかった。だが、悠との、会話を、振り返り、今までの、幻視を、考えると、自分の知らない過去に、絡んでいるのでは、ないかと思った。自分の記憶に、残ってない過去に、全て、通じるのでは・・・。
「海樹・・。」
運命という言葉は、好きではない。全て、人任せの、責任逃れに聞えるから。どうしても、逆らえない事が、起きたとき、人は、運命といって、諦める。真理も、そうだった。どうしても、海樹と、うまくいかない時、これは、運命だったと、諦めた。時間的にも、遡れない事がある。どう、がんばってみても、自分は、海樹とは、うまく行かなかった。運命といって、諦めるしか、なかったのか・・・。
「違うよ・・。」
悠が、真理の、中に現れた。
「諦めるんじゃない。変えるの。」
笑った。
「自分の、望まない結果だったとしても、哀しむ必要は、ないの。それは、変える事は、できる。」
若すぎる恋だった。真理は、半年、海樹とともに、過ごしたが、どうしても、一緒になれず、別れた。忘れたい過去に、足を、踏み入れたくは無い。
「今、断ち切らないと、また、繰り返すだけ」
悠は、寂しそうな笑みを、浮かべると、真理の前から、消えていた。
「悠・・・。」
名前だけが、宙に、虚しく響いていた。自分の、声に、驚いて、はっとした起きた。
・・・まだ、2時・・・
そう、果てしない夢の中にいるようだった。