思いだせ。真理。
時々、こんな事は、よくあった。幻視が起きる。その時、霊に起きたことを、真理に伝えるためなのだろうが、その都度、真理は、ひどく、霊の感情に、共鳴し、疲労する。だが、今回は、悠の話す内容に、ひどく惑わされ、疲れ果てていた。悠にいう事は、本当なのだろうか?
「真理?」
様子に気付いた華が、悲鳴をあげた。
「どうしたの?顔色が、悪いんだけど・・・。」
「うん・・・」
とり合えず、返事をしてみたが、立ってる気力が、なかった。
「ちょっと、気分が、悪くて・・。」
応えると、その場に座り込んでしまった。
「真理」
本当に、気分が悪い。
「救急の受付にいく?」
「大丈夫だと思う。貧血だから」
いつも、そうやって、嘘をついてきた。馴れている。
「少し、人の気配のない所で、休んでくる・・。」
気分のおちつく所へ、行こう。その場所から、離れようとした。
「ついて行こうか?」
「一人で、行く」
真理は、友人達から、離れ、花火の会場から、少しだけ、離れて見る事にした。
「ちょっと、キツイよ。悠さん・・。」
真理は、そっと、話しかけた。
「あなたのいう話をどう受け入れたらいいの?」
ついこの間、別れた彼との運命も既に決まっているのか・・。そう思うと切ない。自分のこれからを変える為に、自分は、どうすればいいのか・・。能力を使えとは、どういう事なのか。
「樹に、逢えばいいの?」
そっと、別れた彼の名を呟いた。
「変えるのよ。」
・・・ここに、来たのが、その為だから・・・
どこからともなく、声が、聞えた。というより、響いてきた。
「悠?」
「今・・・。逢えるから」
真理が、歩いていくと、細い路地があった。手作りの、今回の花火大会の為に、作られた階段が、路地の、向こうにかけてあった。堤防添いから、続く道、その道を、家族連れが、降りてくるのが、見えた。
「あれが、そうなの」
悠が、真理に、微笑みかけた。
階段を、下りてくるのは、小さな子を、抱く若い父親と、その、妻だった。次第に、その輪郭は、街灯の明かりではっきりと見えてくる。
「樹さん?」
真理は、じっと、目を凝らしてみた。
「そうなの?」
次第に、近くなる影。
「そんな・・・。」
真理が、真っ直ぐ、見据えたその人影は、よく知っている人の顔になった。
「樹っていうのは・・。」
「そう。彼の家族よ。あなたが、亡くなった場合の。」
悠は、意地悪く、微笑んだ。
「新堂 海樹・・・。」
真理は、呟くと、ともに、苦い思いが、よみがえった来た。忘れもしない名前であった。
「あたたが、亡くなり、彼は、他に家族を持つ。」
「それが、正しい運命なんでしょ?私とは、結ばれないという。」
「叶わなくていのですか?」
悠に聞かれて、答えに詰まった。自分の恋が、叶わなくて平気なわけがある訳ない。
「私の能力とこれは、関係するのですか?」
「私も、どう答えていのか、わかりません。ただ、どうしても、あなたを探し出し、この呪われた運命を断ち切れと。」
樹の事は、誰よりも、思っていた。でも、どうしても、一緒には、なれず悩んだ末、別れる事にしたのだ。
「あなたのいう通りにしたら、私は、海樹と一緒になれるの?」
「たぶん。」
何代も、真理を探し出したという悠は、海樹と真理が幸せになると聞くと、少しだけ、寂しいそうな顔をした。
「そして・・。」
悠は、言った。
「私が何者なのか・・。探し出してください。」
「あなたが?」
悠自身も、また、自分が、何者であるか、よくわかっていなかった。ただ、何代も真理を探し出す一念で、現れたようだった。