全ての訳。
「頭が痛い・・・。」
真理は、頭を抱えながら、自宅のベッドにいた。
「ようやく、融合できましたか?」
笑いながら目の前にいるのは、燕樹の意識を持った悠である。
「まったく、ややこしい。」
「仕方ありません。敵も同じ目的で、ここに来ているのが判ったのですから。」
「もう、混乱するから、その姿は、よせ!第一、お前は、男の癖に、女の格好が似合いすぎて、余計紛らわしい」
真理は言った。もう、顔つきは、紗妃そのものだ。
「はい。その通りにします。」
悠は、燕樹に戻った。
「結局、私が原因か?」
真理は言った。
「いえ・・。あなた様が、原因ではなく、呼ばれるべきして、この時代に来たと思われます。」
燕樹は言った。
「鳥達が、噂してます。」
「鳥達?」
真理は、眉をひそめた。
「はい。何処からか、力が、漏れ出しております。封印が、解かれたようです。」
「葵剣が簡単に、手にわたっているという事は・・。他のものも・・。」
「おそらく・・。」
「もう、元の持ち主の所には、ないのだな。」
「全てを、集め、最初の場所に、戻すべきでしょう。」
「んん・・。」
真理は絶句した。
「どうしたのです?」
燕樹は、言葉を失う真理を覗き込んだ。
「結局、あの時の事を、この時代で解決しろという事なのか・・。」
「そうですね・・。あなた様は、自分を呪い封印してしまった。呪をかけられていた私は何代も、探し続け存在してきました。あの方の姿を見ていれば、あなた様に会えると信じて・・。」
「悪い事をした。長い間、一人にしていた。」
「どうして・・。樹朗汰様を、封印してしまったのですか?」
それを聞かれて、真理は哀しい顔をした。
「それを、私に聞くのか・・。」
「聞きたいのです。何時も、あなた様を待ち続けた私を憐れと思われるなら、答えてください。」
燕樹の目は、潤んでいた。
「あなた様の式だから、あなたの力で、時代を超える事も出来た。あなた様と私の気持ちが・・。」
「燕樹。」
燕樹の言葉を真理は、塞いだ。
「私は、確かに紗妃では、あるが、もう、前の紗妃とは、違う。お前の気持ちにこたえることは、できない。」
「わかってます・・。だからこそ、教えてください。」
「樹朗汰を、封印した理由は・・。」
真理は、哀しかった。
「わたしは、これで良かったのかと、思う事がある・・。」
全ての原因に結びつく・・。全て・・。自分が、樹朗汰の傍に行きたいとおもったがための出来事。
「彼を殺す事が出来なかった・・。」
「!」
燕樹は、驚いた。
「変化しただけでは、ないですか?あなた様の力なら、造作ない事なのに・・。」
「いや・・。」
真理は、首を振った。
「そんな容易い事ではなかった。」
哀しいそうな顔。
「うまく・・。ここまで、彼の追いつく事が出来たが・・。」
「どうしたのです?」
「彼が・・。元凶だ。」
真理の瞳に、燕樹の姿は、映らなかった。
「彼は、力を得・・。全てを得ようとした。」
「どういう事です。」
「四神の宝物を得、私を得、力を得ようとしていた・・。」
「樹朗汰様が?」
「気付かなかったのだ・・。この私でさえも・・。」
信じていたものに裏切られた哀しみに真理は、震えていた。もう、忘れてしまいたい事であっただろう・・。だが、話す時が、来たと覚悟し、燕樹に話す事にしていた。
「お母上が、樹朗汰を封印しろと、言うてきた。私は、反対したが、叶わなかった。自分を、封印したのは、母上への怨みもある。」
力を持ってしまったものだけの、深い哀しみ。
「信じたくなかった・・。おそらく、彼に力を貸した者が、近くにおるかもしれん・・。」
真理の両目からは、涙が、零れ落ちていた。幾筋も流れ落ち、その姿に、燕樹は、胸が痛くなっていた。
「信じたかった・・。」
「きっと、樹朗汰様は、だまされたんですよ・・。」
「だが・・。彼も、覚醒したらしい・・。崩壊が始まった・・。」
真理は、遠い空を見上げていた。この空のどこかに、彼はいる。この時代で、決着をつけなくてはならない。自分の気持ちとは、裏腹に、戦いが始まっていた。