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鷺宮の因縁。

「何が起きても、不思議では、ないの。全ては、あなたのため・・。」

悠・燕樹が呟いた。

「今のあなたが、紗妃様を受け継ぎ、断ち切ってください。もう、始まってしまった・・。」

「この時代まで、来たという事は、私に何があったの?」

「あなた様は、自分を封印してしまった。」

「封印?」

紗妃の顔つきになっていた真理は、不思議そうな顔をした。

「自分で、自分を?」

「遠い世界へ、逃げようとしたのですね。」

「まだ・・。わからない。」

「そうですよ・・。私でさえ、自分がわからなかった。あなた様を覚醒させることで、私の記憶の封印が解かれる。」

「それは、誰が?」

燕樹は、悲しそうな顔をした。

「やはり、お忘れですか?」

「ごめんなさい。」

まだ、紗妃と真理の力のバランスがとれてなかった。一つの体に、二つの魂が、代わる代わる入れ替わっていた。紗妃に、なれば、話が、うまくすすむのであろうが、時折、現在の意識・真理・が、出入りする。

「あなたの・・。紗妃様のお婆様ですよ。全て・・。主であるあなた様を失った私をあなた様に近い人の魂を借りる事で時代を超えさせたのは・・。」

「お婆様?」

「今、大変な事が起き始めています。あの時に解決しなかった事が・・。起きている。全ての社が、枯れ始めています。」

燕樹は、紗妃、否、真理の手をとった。真理に宿る紗妃の魂。その手に触れる燕樹は、何か深い思いを込めるようだった。

「紗妃様。お願いです。早く、目を覚ましてください。間に合わなくなる・・。」

ずっと、傍で仕えてきた紗妃の手。長い間、紗妃を見ていた。あの時、紗妃が、自らを封印した時、燕樹は、自ら、消えてしまいたかった。自分で自分を呪い、消滅しようとした。その時、紗妃の祖母が現れた。

「遅かったか・・。」

祖母は、両膝から、崩れ落ちた。

「紗妃は、もろすぎる・・。このままでは、奴等に利用されてしまう・・。燕樹。もう一度、お前に命を授ける。」

恐ろしい顔で、燕樹にむかって言った。

「あの時に、お前は、山中で、幼い紗妃に助けられた。それに、報いたいのなら、紗妃の魂を探すのだ。」

「紗妃様を探すのですか・・。お婆様は?」

「私は、もう。飛べぬ。やがて、本当に力つき、消えるだろう。お前に、紗妃を探しだしてほしい。私は、やっておかなければならない事がある。」

紗妃の祖母はそう告げた。

「燕樹。お前に私の力を分け与える。紗妃の転生先に向かい、覚醒させてほしい。」

両手を差し出し、燕樹に触れようとした。その時だった。一瞬の隙も与えず、背後から、爆風が、二人を襲った。

「そうは、させない。お前達、一族根こそぎ絶やしてやる。」

「鷺宮・・。」

燕樹をかばい、多少だが、負傷した白妃・紗妃の祖母が言った。煙幕の中から、現れたのは、龍神の妻となった鷺姫。その人であった。

「お前が憎くて仕方がない。怨むなら、お前を妻にした龍神の心変わりを憎むのだな。」

「燕樹。」

白妃は、燕樹の背を押した。

「早く、行くのだ。」

何やら、背に印を結んだ。

「待て。」

鷺宮が阻止しようとした。

「行け!」

白妃が、燕樹を飛ばすのと、恐らく、白妃が攻撃を受けたのが、同時だったと思う。燕樹は、上手く、その場から、離れる事が、できたが、上手く、紗妃・真理の時代に転生出来なかった。

亡くなりかけた悠の魂を借り、真理の前に悠の姿として、現れたのだった。

「あなたを命がけで、守りたい人が大勢いるんです。」

願いを込めて、真理の手を握った。幼かった紗妃の姿が浮かんでくる。まだ、シキガミとして、生を受ける前、死にかけている所を紗妃に助けられた。その時、自分は、紗妃に恋をしたのだろう。紗妃とずーっと、いたいと思っていた。だから、紗妃の身に何かある時は、いつでも、助けた。それが、紗妃の成長とともに、助けられる事が増えていった。次第に、祖母に似て、力をつけていく紗妃。眩しい存在になっていった。

「だから・・。何があっても、あなたを守りたいんです。」

「燕樹?」

真理の瞳の奥に、反応が走った。

「そう・・。来たわ。」

燕樹の問いかけに、答えるのとそれが、現れたのは、同時だった。

「探したわ・・。」

同じように、微笑んだ。

「あなた達の力があると、私は安心できないの。」

「思ったより・・。早かったか・・。」

燕樹は、まだ、目覚めない真理を背後に押しやった。

「鷺宮。」

「そう。残念そうな顔ね。」

細長い剣を差し出した。

「あなたのお婆様から、これは、頂いたわ。」

光のない空に、細長く光っている。

「私の手に入る筈だったもの。全て、自分で回収しているわ。」

燕樹の喉下に、突き出した。

「だって、約束を守ってくれないんですもの。」

「白妃様は・・。」

燕樹は、刃先から、滴りおちる血の雫を見つめていた。

「そうね・・。それが、そうかしら?」

空一面を白い妖鳥が埋め尽くしていた。

「ここで、決着をつけましょうか?男を追いかけて、逃げるなんて・・。何て、お嬢様なのかしら?」

燕樹と真理の足元に、突き出された刃先から、紅い血液が滴り落ちていった。




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