それは、きっかけ。
コノオモイがムクワレナケレバ・・。
悠は、真理の影になっていた。もう、一人に自分に伝えなければならないこの思い・・。どこかで、断ち切らなければ、また繰り返す運命のから糸。深く探り、時間を遡らなければ、原因は、わからない。他の人とは、異なった力が、読んだ不幸。それは、何代も、繰り返し、そして、ようやく、機は、熟し、原因の時代に、一番、近く、濃い力を持った、子孫に、たどりついた。何代も、経て、ようやく、解決の、糸口が、見えてきた。
「そう・・。時間がきたの」
真理の、後姿に何度、話しかけてきたか・・。今、何代も、前の紗妃の姿と真理の姿が、重なった。
今・・。そう、この時。悠の、両目には、佇む紗妃の姿が、見えていた。
「まだ・・。これからよ。」
悠は、呟いた。
「まだ。始まったばかりなの。私達の運命は・・。」
悠の、瞳は、満月を映し出し、蒼く光っていた。
「そう・・。これから。」
紗妃は、振り返った。燕樹が、得意げな顔をして立っていた。
「あなた様の愛おしい方が、来られる前に去りましょうか?」
「そうね。」
紗妃と、燕樹は、周りの目を気にし、立ち去ろうとしていた。間もなく、樹朗汰が、来る。顔を合わせると、不味い。式神を使い、立ち去ろうと、袖に、手を入れた瞬間だった。
「うぇ・・。」
また、うなり声が、後方であがった。油断していた。式を使う瞬間は、無防備になる。燕樹も同様だった。
「ちっ!」
紗妃は、顔に合わない舌打ちをした。
「こんな時に。」
「不味いです。」
燕樹は、あせった。間もなく、樹朗汰が、馬を駆ってやってくる。こんな場面を、見られるのも、不味いし、出くわした所で、樹朗汰に、勝ち目はない。
「はやく、やっておしまい!」
「姫様こそ。」
意外と、短気な姫さんだ。燕樹は、笑った。敵を前にすると、途端に、血気盛んになる。普段の、おっとりとした顔とは、全く、別人だ。
「早くと、言われましても・・。」
何かを、感じた。
「これは・・。」
ちょっと、待って。燕樹は、感じた。それは、紗妃も、同じだった。
「何かが、変だ・・。」
そう。何かが、おかしかた。それは、この、巨大化したネズミの化け物から、感じてくるものだった。
「姫様?」
最初、燕樹が、気付いた。
「もしや・・。」
「そう・・。」
紗妃も、ゆっくりと、見上げていた。
「もしかしたら・・。」
化け物の、首元に、ちらっと、みえるものが、全てを物語っていた。
「どうして?」
燕樹の、目も、そこに、くぎ付けになっていた。
「それは・・。」
紗妃は、その化け物の、両目を、食い入るように見ていた。銀色に、光る両目は、狂気に、満ち溢れており、知性のかけらこそなかったが、それは、紗妃の、よく知る人物のなれの果てだった。
「どうして・・。こんな事に。」
声が、震えていた。驚愕した紗妃の、両目が、その姿を、凝視していた。
「樹朗汰・・。」
なすすべもなく、紗妃と燕樹は、立ちすくすだけだった。




