二次試験発表の日
もちろん、郁子と一緒に発表を見に行った。
郁子とこうして、試験を受けたりすることもこれで終わりかと考えると多少寂しい気もした。
そして、合格者発表の掲示板をみた私は驚いた。
何度も何度も見直したのだが、私の番号があるのに、郁子の番号がない、そんな馬鹿な。
郁子の番号は私の前、それなのに、50位番号がとんで私の番号になっている。
おかしい。
でも、もしかしたら、あてずっぽうの択一問題が、うまく当たっていたのかもしれない。
神様、そんなイタズラしないでください。と、心から思った。
いつも明るい郁子がさびしそう。
なんと声をかければよいのか分からずにいると、
郁子は、
「折角受かったのだから三次試験頑張ってね。」と。
「だって、郁子がアナウンサーになりたくて受けたのに私が受かったって意味ないじゃない。私、三次試験受けるのよそうかな。」
私は本気でそう思った。
すると、郁子は
「私はもう帰るから、三次試験の申し込みをしていって」
と言って、踵を返した。
そして、振り向きながら
「じゃ、またね。三次試験がんばってね。」
というなり、速足で歩き去ってしまったのだった。
一人残された私はどうしたらよいのか、見当もつかなかった。
それでも、郁子に言われた通りに三次試験の申し込みをして帰宅した。
帰宅すると
私の帰りを待ちわびていた母が
「どうだった?」
「なんだか、受かってた」と答えると、
突然
「やぁ、おめでとう!よかったわね。さすがうちの子だわ。」
と、はしゃぎ始めてしまった。
「まだ、受かったわけじゃないわよ
三次試験もあるし、そのあとに面接もあるし・・・
身体検査だってあるし・・・」
「いいわよ、いいわよ、そんなの。音声も受かって、筆記試験も受かったんだから。
三次試験は何するの」
「また、音声テスト」
「音声テストを二度もやるの?」
「三次の音声テストはむずかしいのかもね」
「難しいと言ったって、音声のテストなんでしょ」
一生懸命、新聞とか読んで練習しておけば大丈夫よ」
そこまで言われると、
「あまり、アナウンサーにはなりたくない」とは言えなくなってしまった。
もう一つ気がりなことができた。
二次試験の発表以降、郁子が学校へ姿を見せなくなってしまったのだ。
(どうしたのだろう?)
(風邪でも引いたのかな?)
(それとも私だけ受かってしまったから気分害したのかな?)
考えれば考えるほど、いろいろと不安になってくる。
あの中学2年生の5月の日、自分が醜い女であることを発見した日から、人目を避けるようになり、孤独が好きになり、自分は孤独に強い人間だと思っていた。
しかし、郁子と付き合うようになると、
郁子と話していることが楽しかった、
一人では分からないことも郁子にいろいろと教えてもらえたし、明るく楽しい郁子はいつの間にか私にとってなくてはならない存在となっていたのだ。
その郁子ともう付き合えなくなってしまうかもしれないと思うと恐怖が私を襲った。
やはり、三次試験を受けるのはやめようかな?
しかし、自称ミーハーの母は大喜びで、親戚や知人に私が二次試験に合格したことを言いふらしているらしい。
まだ、受かったわけではないと言っているのに。
そして、三次試験の日がやってきた。