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猫だって病院は怖いにゃ

寅之介に続いて仔猫たちにもまずワクチン接種から始める事になった。


猫カフェとして店に出す以上、猫の健康には細心の注意を払わなければならない。


寅之介も付き添いで同行するので一匹ずつという訳にもいかず、雄雌で2回に分けて病院に行く。


「狭いよ~、出してよ~。」


車内ではキャリーの中に入れられるが、元気な雄猫たちは我慢出来ない。


「ごめんね。すぐ着くから我慢してね。」


「なんでママだけ外なんだよ~!」


「ママの身体は大きいから入れないの。」


[ママ]こと寅之介だけ特別待遇なので子どもたちは余計文句を言っている。


『猫の言葉は分からないけど、だいぶ怒っているみたいね。』


『うるさくてごめんにゃ。』


ハンドルを握る里沙も、猫の気持ちは少しは分かる。


病院に着くと、一匹ずつキャリーから出され、診察台の上に乗せられる。


ハチはうつ伏せに抑えつけられると大暴れだ。


「ママ、助けて~!」


ハチは元気なくせに臆病なところがある。


ワクチン注射が射たれると、痛い痛いと泣き出したが、大丈夫と分かっていても寅之介は心配そうにハチを見ていた。


『はい、お疲れ様。』


『注射でこれじゃ、手術の時が思いやられるにゃ。』


『みんな同じですよ。手術の時は麻酔をしますし。』


寅之介自身は避妊手術を回避したが、子どもたちに対しては不憫に思っている。


続いてタロもワクチン接種を受けたが、キャリーの中でハチを見ていたからか、もともとの性格なのか、騒がずにじっとしていたが、寅之介の目には強がっている様に思えた。


日を改めて、雌の2匹が接種を受けたが、2匹とも寅之介の言う事を聞いて、おとなしかった。



いよいよ化けねこカフェのオープンが近づき、避妊・去勢の手術もオープン前に終えなければならないので手術日の調整に入る。


ワクチン同様、雄を先に済ませる事になり、臆病なハチが先陣を切った。


今回は手術する日はそのまま1日入院するので、里沙は手続きをしたらそのまま猫を預けるだけだ。


なので、寅之介は付き添いはしないで一緒に居残る3匹に手術の話をする。


「手術をするとね、病気になりにくくなるというメリットもあるんだけど、子どもを産めない身体になるの。」


「ママ、俺も子どもを産めないの?」


雄のタロが頓珍漢な質問をするが、そもそも雄猫は雌猫が発情期を迎えると、本能で発情をするのだ。


「私たちも……。」


コトラとシロも、不安気に質問した。


「そうね。みんなの本当のママ、トラさんはね、これからもずっと血筋を残して欲しいって願っているの。だから、あなたたちのどちらかは手術を受けないで子どもを産める身体でいて欲しいって。」


コトラとシロは目を合わせた。


「私、手術を受けなくても良いかな?」


コトラが先に聞いた。


「たぶん私、一番ママの血が濃いと思うの。だから、ママの意思を継いでいつか子どもを産んでみたい。」


仔猫のくせにしっかりした考えだ。


「私は手術受けようかな?手術しないと、お店に出られないんでしょ?私、みんなのアイドルになりたいから。」


シロはコトラと真逆の答えを出した。


シロはきれい好きで、暇さえあればいつも身体を舐めて白い毛を強調しているが、それを自慢したい様だ。


「2人ともそれで良いの?コトラはお店に出られないから一日中部屋でお留守番なのよ。」


2匹は同時に頷く。


勿論、発情期に交尾をしなければ子どもを作る事は出来ないし、寅之介としてみれば、どんな相手でも構わない訳ではない。


まして自分も手術をしていないので、発情期になればどうなるか分からないのだ。


寅之介の脳裏に深雪の顔が浮かぶ。


(自分の子どもは欲しいけど、妊娠したら元に戻れないかもしれないし、大丈夫かなあ?)


程なくして、里沙が帰ってきた。


『おかえりにゃ。』


『ただいま。最近、この子たちに似た柄の猫が店の前を彷徨いているみたいだけど、あれって父親じゃないかな?』


寅之介はトラから事故の時も父親の猫たちを追い払った後だったと聞いている。


少なくとも、この近所に父猫の縄張りがあるのだろう。


『それって[ハチ]と[シロ]かにゃ?』


『そう、ハチワレと白猫!』


ハチは今手術を受けているが、白黒柄で、その分け目が八の字になっているところからハチワレ柄と呼ばれている。


シロは名前のまま、白猫だ。


『たぶんあの子たちのお父さんだと思うにゃ。』


寅之介はもし発情期を迎えたらこの父猫だけでなく近所の野良猫を呼び寄せて、交尾してしまうかもと想像した。


『この近所、野良が多いけど、大丈夫かにゃ~?』


『篠原先生が言ってたけど、発情を抑える薬、ある事はあるんだって。』


『そんにゃ薬、あるのきゃ?』


寅之介は最初、自分も妊娠して自分の子どもを産んでみたいと思っていたが、もしかしたら人間に戻れなくなると聞いて諦めていた。


しかし、心の奥では人間に戻れなくなっても良いからという思いが残っているため、発情期になって感情を抑える事が出来るか不安なのだ。


『でもその薬って犬用で、日本では猫に使うのは基本的に認められてないみたい。』


『それにゃダメにゃん!』


取り敢えず、翌日ハチを迎えに行く時に篠原医師に抑制薬の話を聞いてみる事になった。

仔猫たちが少し大きくなり、寅之介とお話しが出来る様になりました。


今まで、人の会話は二重鉤括弧『』を使用してきましたが、猫同士の会話の時は鉤括弧「」として分けました。


寅之介も猫同士の会話では『~にゃ』とは言わず、普通にお話ししています。


分かり難いかにゃ?

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