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刀霊奇譚  作者: まみ
悪霊左府編
7/8

悪霊左府編第6話

4ヶ月ぶりの投稿、、、。ご無沙汰してしまい、ごめんなさい。

お待たせしてしまい、ごめんなさい。


春休みの間、少しすつ、出していくので、読んでくださったら嬉しいです。

悪霊左府編6話

蒼空を突くように、彼の持つ刀身が深蒼に染まっていく――。


それ認めると、ひかるは茫然自失に堕ち、案山子のように突っ立っていた。


なぜ、彼の持つ刀身が深蒼に染まったのか……?

ひかるは、茫然自失に墜ちたまま深く、思案する。


刀身は、所有者の一族がつかさどる属性によって、色が変わるのだ。


焔属性をつかさどる者は、紅蓮の花のような赤。

水属性をつかさどる者は、深蒼のように――。


だが、彼の一族は十二神将『朱雀』の名を冠する、一族のため、ひかるたちと同じような紅蓮の花のような真紅に染まるはずであった――。


それなのに、彼の持つ刀身は蒼空を突くような、深蒼に染まっている――。

だが()()()は彼ではない。

ひかるは酷く困惑する……。


『ひかる……。どうしたのだ……?』

ミチカが問うてくる。

『だって、ミチカ……。あれ……。あの刀……。』

その刹那、ミチカが息を飲む気配を感じる。


『く……。またか……。』

『ミチカ知ってるの……?』

『あっ、いや、その……。』

ミチカはしどろもどろになりながら、閉口し、思い詰めたような表情になる。


そして、そうこうしているうちに、彼に()()詠まれていた――。


彼に問うよりもはやく、彼が開口する。


『ああ……。これね。なんで蒼く染まっているのか知りたいのか……?そうだなぁ……。

我の『器』となれば、分かることよ。さっきもヒントを出したのになぁ。覚えていないなんて、君に酷く、愕然としたことよ――。』


フフフと鼻で笑いながら、彼はまたその重い口を閉ざした。


ひかるは記憶をたどり、思い当たる節があったのか。

唇を噛んだ。

ひかるは、やるせない表情のまま、瞠目し、地団駄を踏んだ。


✄------キリトリ------✄

『ああ、ひかるが、動揺しているぞ。フフフ面白くなりそうだ。』

彼は、心中楽しそうになりながら、引き攣るような笑みを浮かべ、口角を不自然に持ち上げる。

『さあて……。宴の始まりだああああ!』


✄------キリトリ------✄

うずたかく積み上がる数々の書物の山。

表紙を見ると、「万葉集」、「論語」。

あまたの、貴族にとって必須となる数々の書物の名。

「……様。……光様。顕光様起きてくださいよ。」


自分付きの牛飼い童の光丸に起こされ、

現世に引き戻される――。

東の空が、少しずつ燃え、陽光が文机を照らしていく――。

光丸に起こされ、気づいたら(あした)となっていた。

昨夜は、宿直だったはずだ。昨晩、うずたかく積み上がった書物の山を坐卓に置き、座って書物を広げた頃からなんにも覚えていない。


文机を見ると、1巻目の書物をでかでかとひろげ、墨がすられたままとなっている。

おそらく、船を漕いだまま、寝てしまったらしい。

大事な書物を、墨で汚さなくて良かった……。

内心安堵しながら、光丸に問いかける。

「ん…?光丸どうした?」

「顕光様!終業の時間となり、帰宅の時間となって牛の光之助としばらくまっていても、表に出てこないので、頭に許可を得、探しに参ったのです。」

そういった途端、遠くの方から光之助の嘶きが聞こえてくる。

「光丸、すまん……。」

「顕光様。大丈夫ですから。顕光様、邸に帰りましょう。皆、心配しながら待っておられますよ。」

そう、光丸が言い、微笑みかけてくれる。

彼の笑顔に幾度となく救われたことか。

あと少しで、殿上に上がれる。あと少し。あと少しがんばらなければ。

この、のどかで、飲み食いに困らない、ささやかな幸せの日々がずっと、ずっと、ずっと続いていくはずだったのに――。

続くはずだったのに――。

それなのに、あの時、破滅への歯車が周りだし、狂いだした。


✄------キリトリ------✄

彼女の、左腕に刻まれた、梵字をくずしたような、()()が、脈を打つように、キリキリと痛み、そして、ひどく疼く。


これは、縁殺(えんさつ)を犯したもののための、償いのための証――。

これを持つものは、ひれ伏され、神のように崇められ奉られ、敬まれるか――。

もしくは……。

疎まれ、侮蔑な瞳をぶつけられ、蔑むようなあまたの眼差しを向けられるか――。

脈を打ったように、規則正しく、酷く疼く左腕を軽くおさえながら、ふと、顔を上げ、1冊のノートを視界に認める。

光莉の目は険しくなり、緊張めいた面持ちになり、少し、思い詰めたような表情となる。


未だに脈を打つように規則正しく、酷く疼く左腕から、手を離し、光莉は意を決して、そのノートに手を伸ばした。

✄------キリトリ------✄

深い深い。絶望の中のような漆黒の闇の中。

恨むような、羨むような、一対の瞳が光っている――。

その瞳が望むものは、乙茂内家の率いる、十二神将の

破滅か、はたまた絶望か……?

ゆっくりと、闇の帳が降りてきて、どんどん、漆黒に染まっていく――。




4月の頭に、番外編、『縁殺』編がスタートする予定です。轟原光莉にフォーカスを当てた作品となっております。

縁殺の称号が与えられた、とある事件を鮮明に描いていきます。


縁殺編も、刀霊奇譚もよろしくお願いします。

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