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刀霊奇譚  作者: まみ
悪霊左府編
6/8

悪霊左府編第5話

初めましての方も、いつも見てくださる方もありがとうございます(❁´ω`❁)

最近、学業が、忙しく更新が疎かになってしまい、申し訳ありません。

更新頻度はどれくらいか分かりませんが、

少しずつ投稿していこうと思います。

引き続きよろしくお願いします

悪霊左府編 5話

「……ま。……さま。と……さま。」

暗闇の中、か細い声が木霊する。

何言ってるんだろう。重要な所が聞き取れない。

どこかで聞き覚えがある声だ。

「とう……ま。……ま。」

声の主は、漆黒の綺麗な髪をしている。

あの子は誰なんだろう。

少女は、血を流し、息絶えた初老の男の骸に擦り寄っている。


そして、彼女の手は、返り血でも浴びたのか、()で濡れていた。

そして、彼女の傍らには血で汚れた短刀が無造作にころがっている。

その時、その少女は過去の()だと気づく。


その刹那、鈍い痛みが走り、現実に引き戻される……。


新しく、新調したばかりの、心地の良い青臭さが残る畳。押入れは開けっ放しのままで、乱雑しており、中にあった段ボールや、何かしらの包み、短刀が無造作に置かれ、押し入れから、飛び出していた。

いつの間にか眠っていたらしい。いつから寝てしまったのだろう。

最後の記憶は、家に入り、押し入れから段ボールを見つけ出した時の記憶。

日は傾き、西陽が幻想的に窓から差し込む。


最近、ずっと同じような夢を見る。どこまでも続くような漆黒の闇の中、手を血で濡らし、父の名を呼びながら、父の骸に縋り付く。

永遠に応えが帰ってこないとわかっていながらその名を呼び続ける。

そして、それは長らく忘れていた、忘れようとしていた、心の傷。


それは、思い出したくもない過去の罪の記憶。そして、私の一生消えることの無い心の傷と、一生賭けても償うことの出来ない過ちの記憶……。

あの過ちは正の過ちだったと周りの人達は口を揃えて言ってくれる。 だから、私は、今も轟原家の長女として、印鑰家に、仕えることができている。


しかし、私は思うのだ。


たとえ正の過ちだったしても、大切な人を殺めてしまったことは変わりはない。私は償っても償いきれぬことをしてしまった……。

祓い屋の夢には意味がある。どんなに霊力が低くても、祓い屋の夢には意味があるのだ。



窓を見ると、鴉が鳴きながら家路を急いでいた。西空はもう、茜がかり、逢魔が時と夕刻の狭間で、薄く藍色の空が迫っていた。


スマホの電源を付け、今の時刻を確認し、既に夕刻が迫っていることに気づき、光莉はため息をついた。


その刹那、左の二の腕が疼き、袖を捲った。

そこには、梵字を崩したような()()が刻まれている。


私は、あの時父様を()めた。大好きだった父様をこの手で……。

父はとても優しくて将来が期待されていた剣士だった。

だけどあの時は……。


あの時は皆、仕方の無いことだったと言ってくれたが、心の底では私を憎らしく思っているのだろう。

あの時できた心の傷は私の心からいつまでも消えることなく蠢いている。

罪は一生消えることはない。


あの時の私は、殺めてしまった父へのせめてもの償いで、死に行った父への手向けとして、長年伸ばしていた自慢の黒髪をバッサリ切った。仕方の無いことだったかもしれないが、せめてもの罪滅ぼしとして……。







そして、あの日、私は剣士を()()()


✄------キリトリ------✄

彼も、腰に差していた刀を抜き、上段に構える。刃渡り、およそ89cm。

その刀は、ひかるたちにとって、デジャブを感じる刀であった……。

刀の名を思い出そうと思い、思考を巡らす。

そして、ふと思い出した。

あの刀は……。印鑰家に代々伝わる、名刀『大包平』である。

『大包平』を、鍛えたとされてるのは、「包平」。

彼は、古備前と評される分類の刀工の1人であり、上品な作品の中に力強さが垣間見えると評された、刀工の作品である。

刃文の小乱が、鈍く煌めく。


お互い、愛刀を手に向かい合う形となった。

ひかるは、「思い募りて奉る。害気を攘払(ゆずりはらい)し、悪鬼を(はら)い、安鎮(あんちん)を得んことを、(つと)みて五陽霊神(ごようれいしん)に願い奉る。我の手に地獄の業火を与えたまえ。」

そう詠唱し、刹那――。

刀身が、紅蓮の華のように真紅に染め上がる。

そして、紅蓮の華を咲かせる。

乙茂内家は、十二神将・騰蛇の名を冠する一族である。

初代当主の、「乙茂内清孝」が安倍晴明からその名を賜った。

騰蛇の業火は生きとし生けるもの、そして万物を焼き付くし、罪を祓い、浄化する地獄の聖なる業火なのだ。


騰蛇は火将(かしょう)である。

そのため、乙茂内家は、焔を操る術を得意とするのだ。

✄------キリトリ------✄

目の前で、ひかるの刀身が、紅蓮の華を咲かせた。

それを見、しばし思考を巡らせていたが、自分に分がある戦闘になるのだと思い至り、心中歓喜する。


「思い募りて奉る。静寂を砕き、漆黒の闇に染まるが良い。篁に願い奉る。我に冥府の御水(おんみず)を与えたまえ。」

その刹那――。

刀身は、空の蒼より暗く、海の碧さよりも深く染めあげられていった。

✄------キリトリ------✄

ひかるは、彼の刀身が空の蒼より暗く、海の碧さよりも深い青に染ることを目撃した。

ひかるは、眼の錯覚なのかと思い、見返した。

しかし……。刀身は蒼いままであったのだ……。

ただいま、番外編である

縁殺~子~章を執筆中です!

楽しみにしてくださったらとても嬉しいです!

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