表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さんにんよらば  作者: ぢんぎすかん
1/2

もう遅いよ

はじめまして


素人です。不定期更新です。


最初はちょっと暗いかも


ーー彼は優れた魔法使いだったーー


ーー高い戦闘力を持ち、生き延びる術にも長けていたーー


ーー長年にわたる修練を重ね、積み上げられてきたその力は間違いなく、その世界において最上級と呼ぶに値するものであったーー


ーーしかし、いかな強者といえどーー


ーーいずれ"終わり"はやってくるーー











「このままでは、この村に住むもの皆滅ぼされてしまいます。偉大なる魔法使い様、どうか我々をお救いください」


 村人たちが一斉に頭を下げる。

 私はうなずく。


 私に彼らを救うことが出来るのかは分からないが、出来るだけの事はやってみよう。












 ここはアイデンと呼ばれる世界。

 数多くの魔物や怪物が跋扈し、そこに住まう人々にとって常に死と隣り合わせの、殺伐とした世界。


 高速で空を飛び回り、強固な鱗を持ち、小さな町一つならば軽々と更地にしてしまう程の強力な炎のブレスを吐くドラゴン。

 歩くだけで、周辺に大きな地震を起こす岩の巨人。

 何百、何千単位で群れをなし、獲物を襲う獣。

 暗闇に身を潜め、生物を罠にかけ捕食する巨大な蜘蛛。


 挙げたしたらキリがない程、この世界には危険が多い。中には魔法や超能力を使う怪物もいる。そしてそれらの脅威は、日夜生存競争を繰り広げている。

 それに対し、大多数の人間は無力であり、生存競争から生き延びる力は無い。「狩られる側」である。


 しかし少数ではあるが、「狩る側」の人間も存在する。

 「超人」と呼ばれる彼らは、人智を超えた身体能力を持っていたり、魔法を使ったり、超能力を身に宿していたりする。私もこの中の一人であり、魔法使いだ。杖も使う。

 人間はこの超人の力を借りて脅威から身を守り、長い年月にわたって幾つもの国を作りだした。世界の脅威に耐えきれず滅んだ国もあった。中にはイカれた超人に滅ぼされた国もあったようだが……

 それでも紙一重のところで、人間という種はこの世界で繁栄することが出来た。


 出来ていたのだ。

 

 数年前、均衡は崩れ出した。所詮人間が滅びていないのは、たまたま運が良かっただけだった。

 いかに超人であろうとも限界はある。対抗できない脅威などアイデンには幾らでも存在する。

 世界のほんの気まぐれで、人間は淘汰される。


 それを証明するように、瞬く間に人間は数を減らしていった。


 今ではもう、人間は絶滅寸前であった。


 私は超人の中でまだこの世界に生き残っている唯一の人間だ。

 もしかしたら隠れて生き延びている者もいるかもしれないが、私の知る限りでは私一人だ。

 かつては数多くいた私の友人たちも、最早一人も残ってはいない。

 あるものは愛する人を守るために戦い、あるものは精神を病み自殺した。

 皆、この世界の脅威の前に、なすすべなく死んでいった。


 幸か不幸か、私にはこの過酷な世界を生き延びる程の力があった。他の超人達よりも頭ひとつ抜けて強かった。

 それ故にまだ生きている。

 



 それが限界だった。

 私には、友や他の人間を護れるだけの力は無かったんだ。


 










 私は旅人となった。

 この崩壊してしまった世界を、あてもなく渡り歩く。

 目的もないまま、何のために生きているのかすらわからないまま、ただ歩いた。


 ある日、森の中に小さな村を見つけた。


 魔物や怪物が少ない地域に小さな集落を作り、かろうじて生き延びている人々がいる事は知っていたが、超人もいないのによく生き延びれたものだと感心する。


 だが、かなりまずい状況のようだ。


 村長の男曰く、最近近くにドラゴンが住処を作ったらしく、いつ襲われてもおかしくないのだと言う。

 小さな村だ。目をつけられたら終わりだろう。

 とはいえ、魔物や怪物がごろごろしてる中を、遠くまで逃げるわけにもいかない。


 村長は私が超人と知るや、ドラゴンを退治して欲しいと懇願してきた。


 「ドラゴンがいなくなったところで、こんな世界だ、滅びの運命は変わらないかもしれません。それでも僅かでも長く生き延びる為に」


 「私たちには何のお礼も出来ませんが、どうか」

 

 脅威はドラゴンだけでは無い。今は運良く生き延びていても、いつ他の怪物に目をつけられて滅ぼされてもおかしくない。いや、むしろ時間の問題だろう。


 それでも生きたいと言うのなら。

 断る理由は、無い。










 瞬間移動(テレポート)

 

 魔法使いである私は、大体の場所の情報さえわかればどこにでも魔法で飛ぶことが出来る。ドラゴンは森の近くの山の頂上に住んでいる。私は今、村長から聞いたドラゴンの住処の近くまで来ていた。




 生体反応感知(センサー)、発動


 なるほど、近くに強力な生体反応がある。おそらくドラゴンのものだろう。今は……眠っている?


 ありがたい。すぐに終わりそうだ。


 瞬間移動(テレポート)


 眠るドラゴンの真上に飛ぶ。

 

 空中浮遊(フライ)を使い、そのままドラゴンの真上で落下する事なく止まる。


 確実に仕留める。

 杖の先端に魔力を集中する。


 魔力に反応してか、ドラゴンが目を覚ます。私と目が合う。

 もう遅いよ。


 蒼い惑星(ブループラネット)


 巨大な魔力の球を創り出す。それはまるで青い太陽のように輝き、触れたものを消滅させる魔法だ。私のお気に入りの魔法のひとつである。


 まだ体勢が整っていないドラゴンに叩き落とす。ドラゴンは硬い鱗を持ち、半端な攻撃は届かないが、蒼い惑星(ブループラネット)はそれを意に返さずドラゴンを飲み込む。


 青い輝きが消えた時、そこにドラゴンの姿は無かった。念のため生体反応感知(センサー)を使ったが反応無し。ドラゴンがテレポートを使うとは聞いたこともないし、しっかり消滅したのだろう。

 

 蒼い惑星(ブループラネット)は少し創り出すのに時間がかかる。ドラゴンがのんきに寝ていなければ避けられただろうに。ここら辺は他の魔物や怪物が少ないから油断したな?


 仕方ないね。寝ているのが悪い。

 もう少し苦戦するかと思ったが、ともかくこれでしばらくはあの村も安全だろう。

 いつまで安全かは、わからないが……

 テレポートで村へ戻ろうとした、その時、

 




 ん?

 

 目の端で、緑色のひかりを捉える。

 確認すると、ドラゴンがいた場所からだ。何かが緑色に光っている。


 やがて光は大きくなり、私の体を包み込む。


 警戒して、テレポートで逃げようとした、その時。




















 私は、見知らぬ土地にいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ