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48 秘事は睫 25

 半刻後に査問会の続きが始まる。

 自分も含めた代言士達は法を取り扱い罪人を裁くためにいる。多少の派閥はあろうと『真実』を追求する事はどの代言士も徽章を貰ってから国へそれを返すまでは心に刻み事案に臨む。

 指名があればあまり断る事はない。

 自分の依頼人が罪人となろうと真実の下であれば仕方のない事であった。

 査問会が終わった後、敗訴した側の代言士に対し勝訴した側が「依頼人に恵まれなかった」と言うのがこの業界のお決まりとなっていた。


「まさか、既に養子になっていたとは」


「これではわたくし達には勝利はありません」


「どうしましょう……」


 起訴したアンダーソン親子が控え室で勝負の話をしている。


 もはや君らの勝負の話ではない。

 モーセウスがその様子を見て呆れてため息をついていた。


「貴方がもっと頑張ってくれないから!」


 ハムレットの母親がモーセウスに掴みかかろうとするとハムレットの父親がそれを止めた。


「マクレーン殿、どういう事ですか? 結果が出ているのに帰させてくれないとは」


「あちら側から事件と関わり合いがあるため退会は認められないという事らしい」


「そこをどうにかするのが貴方方の仕事でしょう?」


 何を言っているのか。

 モーセウスは「それならきちんと真実を話す事だ」と言い、恨みがましい目で見られつつ控え室を後にした。


(愚かな……)


 罪を犯していながらそれにも気づかず自分の主張ばかりする。

 気づかないと言うのは罪である。


(確か、食べない方がいいと言っていたな)


 モーセウスは少し空腹感を感じていたが律儀にその事を守る事にした。

 制裁=死

 何を見せられるのかはまだわからない。だが、1stであるという事を考えると無視もできなかった。


 何処かで茶でも飲みながら待つか。

 踵を返して人気のない所を探していると曲がり角で人とぶつかった。


「失礼」


「あ……」


 あまり強くぶつかった訳ではないのに相手がぶつかった弾みでぽてんと尻餅をついていた。

 もこもこした白金色の癖毛、かけている眼鏡の奥には瑠璃の瞳が大きく見開かれている。

 彼女はさっきの査問会の途中気分を悪くして退場した。未だに血色の悪い白い顔がショックの度合いを示し気の毒に思えた。


「大丈夫か?」


「すみません……」


 静かに謝る彼女の声が浸透するように体に響く。

 とてもじゃないが人に暴行を働くようには思えなかった。


「どうした」


 起き上がるのを手伝ってやると、立ち上がってお礼をしてくる。彼女が居るはずの被告人控え室はここの反対側にあたる。

 ここでふらついている事をモーセウスは不思議に思った。


「トイレに行くのに迷ってしまって……」


「は?」


 この建物は王城などと比べて割と簡単な配置になっている。迷うほうが難しい。


「…………」


 モーセウスが腕を組んでサファを見下ろすと、察したのかそのまま歩いて行こうとした。

 魔術が発射される気配がして振り向く。

 霞がかかり風の刃が飛んで来る。


 モーセウスが障壁を出して耐えようとしたが、背後から勢いよく服を引っ張られて尻餅をつくとサファが前に出て小さな体で盾になった。

 障壁などは何も出していない。

 刃物を弾く音がする。


「おいっ!」


「大丈夫です」


 前に立ち塞がりそう言った彼女の前にはペンダントから発動された魔法陣が身を守っていた。

 攻撃はそれ一度きりだった。


 魔術が飛んできた方には人の気配を感じたが『誰か』と言うのは特定できなかった。そんなに苦労しなくても簡単に弾く事の出来る魔術。

 こっち側は彼女にとって危険となる人物もいる。何故一人で彷徨いているのかモーセウスは怪訝な目でサファを見た。


「君の保護者は何をしている?」


「途中で知り合いに会ったとかで先に行ってくる様に言われて……」


 とにかくここは危険だと思いモーセウスは彼女を被告人側のトイレまで連れて行くことにした。

 自分の後ろをとてとてと歩く彼女はどこからどう見ても子供に見える。人定質問でも彼女が孤児でまだ貴族の邸にも移り住んでいない状態だと言っていた。

 それにしても随分と色々整っている。

 見た目もそうだが、言葉遣いや所作が今まで孤児だったと言うのが不思議なほどだ。


 目的の場所近くになると動物が鳴く声と彼女の養父である人物が足早に寄ってきて、連れてきた自分の姿に驚いていた。


「マクレーン殿……」


 足下を黒いものが通り過ぎ目で追うと、後ろにいるサファに飛びついて肩に登る。さっきの査問会中彼女の肩に乗っていた黒いカーバンクルだった。


「バウスフィールド卿、被害者側まで来ていた。あまり方向感覚が良くないようだから気をつけた方がいい」


 疑う表情をしているエリュシオンを軽くあしらうようにモーセウスが後ろにいたサファを前に押し出す。


「別に口止めはしない。行け」


 サファは後ろを振り向いてから首を傾げたがモーセウスはそれを見もせずもう後ろを向いていた。


「あの、ありがとうございました」


「ちょっと、何かあったの??」


「エリュシオン様! 私は漏れてしまいそうです」


「ちょっ」


 呼び止めようとしているエリュシオンにサファが割り込んで妨害する。親切にしてもらったのに疑われたら失礼だ。

 モーセウスは顔だけ横を向かせると一度だけ頷いて去って行った。

 少しだけ笑っているような口許だった。


「もう! 色んな所に振りまいて」


「振りまいてなんていません! エリュシオン様こそ親切にしてもらったのにあの様な目で見ては失礼です」


 エリュシオンが腰に手を当てて説教じみた事を言うのでつい眉を釣り上がらせてサファも言葉を荒げてしまった。


「…………」


 エリュシオンも自分に何かされたのだろうと心配してくれたのだろうが、捻くれている。

 どう思ったのかエリュシオンは無言になった。


「…………」


「遅いから何してるのかと思ったら、どうしたの?」


 ジュディと一緒に来たフェルデンが目を丸くして二人の様子を見ていた。


「別に……ジュディ。この子トイレに連れてって」


 明らかに不満そうな表情をしてエリュシオンが控え室の方に歩いていく為、フェルデンが落ち着きなくエリュシオンに話しかけながら控室の方に歩いて行った。

 トイレから戻ればそろそろ査問会の後半のため移動だ。


「大人気ない」


 ジュディはそう言うとサファを抱き上げる。彼女は私情を挟まず余計な事も聞かずただ自分の話を聞いてくれた。それでも魔術を使った人物についてサファは思った事を口にするのはやめた。




 査問会後半


「静粛に! 査問会の続きを開会致します!」


 騒めく会場の中、拡声器を使った査問長の声が響き渡った。


「被告側準備完了しています」


「被害者側、完了」


 二人の代言士の準備が整っている事を確認すると査問長は頷いて冒頭陳述を開始する。


「休憩前、被告人は既にバウスフィールド卿の養子になっていた事が分かりました。その事により前半の起訴状朗読で述べた亡状殺未遂、傷害罪は罪に問うことができません。ですが被告人側が審理する必要性を主張しています。その事についてファーディナンド代言士お願いします」


 フェルデンは前半と比べ驚くほど緊張していなかった。

 あぁ、早く終わらないか?

 真実を暴くと言う事に悦びを感じていた。

 査問長に言われぱらぱらと資料を持ち直すと堂々とした口調で説明を開始した。


「確かに起訴内容は取り消されます。しかし、私は被告人が何故暴走になる程の怒りを覚え、何故自分が命を落とすかもしれないこの状況に身を置いたのかが疑問であり審理すべきであると主張します。よって、被告人の尋問を要請します」


 なんだなんだと会場内が騒がしくなった。

 どうも、何が始まるんだ?と期待を持つ人とそんな事をして何になるのか、早く無罪判決を出せと苛立つ人が半分。

 不思議だ。

 前の自分ならこう言う声が気になって弱気になってしまったがフェルデンはあまり気にならなかった。


「静粛に! 静粛に!! 静かにしない方には侮辱罪で退出を命じます!」


 騒ついている会場を静かにさせようと査問長が声を張り上げている。会場の騒めきすらフェルデンは少し快感に感じていた。


「ファーディナンド代言士どういう事ですか?」


「査問長。今回の事件の裏には別の事件が隠れています。それを被告人の証言を通して明らかにしてご覧に入れましょう」


 やっと静かになった会場がまた騒ぎ出して収拾がつかなくなると、今まで黙っていたアンセル国王陛下がよく通る声で話しかけた。


「会場を騒がす者は真実を隠すとみなしてもよいか? それともここに居るのは騒ぐことしか知らない子供であるか?」


 一文字ずつ体に重さがのっていく。

 国王陛下が述べた後はしんと静まり返り体に感じる魔力の圧に皆恐怖を感じていた。


 相手を畏怖させ黙らせる為に国王陛下が使う『威厳』と言われるもの。


「アンセル陛下が『メガレイオ』を使うなんて初めてですね」


 隣にいた黙っていたユリーフが髪をくるくると指に絡ませた後、指で顎を撫でる。


「あれが『メガレイオ』ですか?」


 何日か前にサファに食らった威圧の方がよっぽど食べられて殺される程の恐怖を感じた。

 手加減しているのだろうとフェルデンは思った。


「あなたは大丈夫そうですね」


 ユリーフいわく『メガレイオ』は悪意がある程圧を感じるらしい。証人席にいたアンダーソン親子が真っ青になり母親が失神していた。

 傍聴席にも数人気絶者がおり係官に運び出されている。


 コホン……


「陛下、その辺で……」


 査問長が恐る恐る声をかけるとアンセル国王陛下は黙って頷いた。

 『メガレイオ』が消失しても恐ろしくて話す者などいない。息をする音さえも皆気を使っているようだ。


「それで、何でしたっけ?」


「今回の裏にあるもう一つの事件を明らかにと」


 査問長のお茶目な言動にフェルデンが微笑む。

 答えたのはフェルデンではなくモーセウスの方だった。


「マクレーン代言士は宜しいのですか?」


「異論はありません。代言士は真実と追求を渇望する生き物なので」


 「ふふっ」とフェルデンの隣でユリーフが穏やかに小さく笑っていた。


「双方了承を得ましたので、被告人の尋問を再度行います。被告人は証言台に立ってください」


 証言台に足台が置かれるとルシオが手を取りその上に立つ事を手伝ってくれる。

 さっきは何も聞こえなかった。でも今は聞こえる。やっぱり、嫌な事でも聞こえていた方が安心する。

 サファは手を前で揃えると控えめに査問長を見上げた。


「先程は随分と具合が悪そうでしたが大丈夫ですか?」


「お騒がせして申し訳ありませんでした……」


 査問長が気遣うようにサファを見た後、視線をフェルデンに移す。


「まだ幼い少女です。手加減の程をお願いします」


 フェルデンが頷き、査問長の言葉にサファは少しだけ口許を緩めていた。


「何を証言して貰いますか?」


「では、被告人が暴走に至った理由について証言をお願いします」



〜被告人証言〜


 使用人達が居なくなって行くのです。私と同室だったミリィも数週間前いなくなってしまいました。

 私が普通では無い使用人の仕事をやるように言われ管理者の補佐官からユニもミリィもしていたのかと聞くと「そうだ」と答えました。

 補佐官に連れて行かれたのが修学院の寮という事は知りませんでした。

 連れて行かれた先でそちらの男性がミリィは殺したと言い、ユニは言いなりだったと言ったので私は怒りが込み上げました。



「なるほど……それは……」


 神妙に言う査問長の表情はサファに何と言えば良いのか迷っているようだった。

 聞きたそうにしているモーセウスを見てフェルデンが「先に質問をどうぞ」と言った。


「『普通ではない使用人の仕事とは』性的なものという事で宜しいか?」


「…………はい」


 本当なら騒めきが起きそうだったがさっきの威厳のお陰か静かなままサファ声だけが悲しそうに響いた。


「使用人達が何人もいなくなって行くのにあなたの他にはおかしいと思う人はいなかったのですか?」


 いたよ……

 でもそんな事を言ったら自分が殺されてしまう。そんなところだったとサファは声を大にして言いたかった。

 握るての爪が食い込んでいることにルシオが気づくとサファの手を開かせた。


「……皆、怖がっていました」


 何かを我慢して俯くサファを見て「質問は以上です」とモーセウスが言うと黙った。


「二人の名前が出て来ましたがここに一枚、国手の手で作成された報告書があります」


 フェルデンはユニと書かれた人物の報告書を読み上げる。



〜ユニ オルタンシア中毒についての報告書〜


 紅いオルタンシアを食しその毒で呼吸困難、眩暈、嘔吐しアルトプラス城薬室へ被告人サファによって運び込まれた。

 植物性中毒のほかに性的な暴行を受けていた形跡あり。

 エーヴリル=バックレーにより生体研究所に搬送され、解毒剤を投与し命を取り留めた。

 紅いオルタンシアの花を所持していたのが後日判明。聴取により紅いオルタンシアが使用人小屋の周囲に咲いていることが判明し、原因を特定。



「この紅いオルタンシアなのですが、皆さんもご存じの通り、ここアクティナでは紅いものは咲きません。ですが、過去このアクティナでも咲いたことがあるのです」


 フェルデンが魔道具を渡すと映像が映し出される。この会場にいる誰もが知っている。


「奴隷の報復……」


 そう。

 セドオアは先日の現場の掘り起こしの際、小さかった頃の記憶を思い出した。

 その時にも紅いオルタンシアの花が咲いていたと。

 今回も似たような状況だった。


「さて、空腹を感じている方も多いでしょうから早く終わらせましょう」


 フェルデンがサファに頷くとサファが書記官に資料を差し出した。


「これは!」


「どうしたのですか?」


 サファに渡された資料を見た書記官が声を上げたのを見て査問長が一緒になって資料を覗き込んでいた。


「これは……ミリィと書いてありますね。その他にも沢山名前が載せてありますが、姓がありません、全て平民ですか?」


「これは……」


 答えようとしたサファは顔を青くして目をつぶって目に涙を溜めていた。後ろにいるルシオが背中をさすっている。


「これは、使用人小屋の敷地に咲いている紅いオルタンシアを掘り起こして発見された遺体の数、538人の名前です」


 ルシオがサファの目を押さえフェルデンを見た。


「これを」


「まだあるのですか?!」


 魔道具に収められた映像が映し出されると青くなって口を押さえ、中には会場がら走り去る者もいた。


 酷かった。

 白骨化したものから原型を保っているものまでの遺体538体。

 騎士団員が吐き気や不眠と戦いながら発掘を行い、アシェルとエリュシオン達が管理者の所持する記録物や使用人達の証言をもとに睡眠時間を削って人物の特定に至ったものだ。

 勿論、それにはフェルデンも参加している。


「…………」


 査問長も誰も言葉をなくしていた。


「遺体の状態によりこの一人一人が被告人と同じような状況に置かれていたと考えられます。平民といえどこれは流石に。神への冒瀆です……」


 フェルデンは目をつぶり首を振った。

 まだ、全員の報告書は出来ていないとフェルデンは言ったが出来上がっている所までの報告書で充分だった。


「…………」


「同感だ。これに対してはまた別で審理しなければいけないだろうな」



 映像が消されてもしばらくは網膜に焼き付いて離れないだろう。

 フェルデンとモーセウスの言葉にアンセル国王陛下が目をつぶっている。手を強く握り眉間にシワを寄せていた。


「被告人が行動に至った経緯がよく分かった。確かにこれは神への冒瀆。被告人の罪は問えないだろう」


 サファは国王陛下に無罪を下される。

 その後、使用人管理者のエリックとその補佐官の査問会への召喚を命じた。

 二人は騎士によって投獄されている。

 調査の苦痛もあってか騎士の恨みも一入だった。



 サファが査問会に出席したのはここまでだ。

 この日はルシオと研究所に帰ってくるとサファは少し休ませてもらった。

 無罪になった事を研究所の面々が喜んでいたらしい。

 ようやく起きて少し何か食べようかなと思ったのは夜の5の刻を回ったところだった。

 エリュシオンよりも父親らしくルシオが世話を焼く。


「何なら食べれそうなんだ」


「飲み物なら……」


 食べたくないというのも仕方のない話。

 自分も今さっきになってようやく食べ物を少し口に出来たくらいだ。

 ルシオは部屋から出て行くと薄味のスープとポルトカリ味のロゼスクをサファの前に置いた。


「これは?」


「ロゼスクだが?」


「見れば分かりますよ」


 知りたいのは何故かという事。

 しかもエーヴリルの差し入れらしい。

 ニュクスは自分の餌かと思ったのか近寄って匂いを嗅いでいる。小さく千切って掌に乗せるとニュクスは数回齧ってお好みではなかったのか離れていった。


「この味のロゼスクに薄味のスープがこういう時にいいんだとエーヴリルが聞いたらしい」


 実はこの組み合わせ、今回の使用人小屋調査で食欲をなくした騎士と国手にとても役に立っていたらしい。

 始まりはラトヴィッジ先輩。

 売店ではいつもあまり売れないポルトカリ味のロゼスクが売り切れとなる事態にまでなったという。


 ロゼスクをひとかけら口に入れてスープを飲んでみる。


「これは……」


 ポルトカリの爽やかさで意外とスープが飲める。ラトヴィッジ先輩。確かトイレの時にエリュシオンと話をしていた人だ。

 今の自分のように食べられなくなる事がよくあるのだろうとサファは思った。


「凄い。これなら食べられそう」


 そう言ったサファにルシオが少し興味を持ったらしい。

 物欲しそうにロゼスクを見ているので半分取って後をルシオに渡した。


「ルシオ様も食べてみてください」


 すると彼もスープをもらって来てロゼスクを口に放り込みスープを啜る。


「なるほど。確かに」


 エリュシオンがラトヴィッジ先輩のことを褒めていた。目が細くて水浅葱色の髪の顔色が悪い人物だった。

 あの時話してみたかったな。サファは少し残念に思った。


 既にサファは無罪となっている為、明日からの審理には参加しない。

 2日目、エリックとスタンリーを査問会に召喚してそこから尋問を行うとある人物に辿り着いた。

 それが今回の黒幕として証人喚問された。

 3日目、行政館に所属する貴族が査問会の途中で告発され、審理の下有罪判決が下ると直ちに拘束された。寮を利用して使用人に手を出していた院生とその両親も処罰が下されることになり査問会は終了となった。

 勿論、そこにはアンダーソン親子も含まれており最後は諦めた顔で傍聴席に座っていたという。


 第二の「奴隷の報復」として後世に名を残す事案となった。


 こういうのはなんというのだろう?

 身から出た錆?

 サファは同情もしなかった。



 出来なかった事を。

 サファは3日前に着ていた黒の衣をまた身につけていた。肩にニュクスを乗せて、頭にはチュールで顔が隠れる帽子をかぶっていた。


「支度は済んだか?」


 呼びに来たルシオも今日は白ではなく黒の礼服を着ていて知らない人のように見えた。

 フェルデンが「魂送りをして欲しい」と言っていた。それが、今日行われる。


「大丈夫です」


「……君の大丈夫は信用が出来ないが、出来たのなら行こう」


「…………」


 前に誰かにも言われた事がある……

 自分はそんなに信用ならない人物なのだろうか?

 サファは顎に手を当てると首を傾げて考えていた。


「行くぞ」


「待ってください! 使用人小屋なら自分で行きます」


「おい!」


 しばらく過ごしたあの場所なら行けないわけがない。サファはルシオの腕を掴むと床にぽいっと転移用の魔法陣を出し彼の返答も聞かずにそのまま使用人小屋に転移していった。

ようやく魂送りの前までたどり着きました。


前話でエリュシオンとサファが話していた内容はミリィがいたよと言って遺体のリストを渡した。

という事です。


フェルデンがめちゃ頼もしくなったぁ!

人の成長を描くのは楽しですね。


今日も読んで頂きありがとうございました。

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