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3. 雪と贈り物と喧嘩

 朝目を覚ますと、突き刺さる様な寒さを感じて2度寝をすべくいっぱいの毛布に包まる。


 冬が来た。


────


「はいはいリーン起きなさい! 今日は雪かきよ!」

「んー……」

「起きない気ね、それならこうするわよ!」


 バタン、という音とともに、一段と寒い風が部屋に吹き込んできた。


「ぎゃああああ!! 起きる! 起きますから!」


 僕は飛び降りると急いで窓を閉めた。

 横でくすくすと笑っている母さんのお腹はもうとても大きい。赤ちゃんが生まれてくるのは後2ヶ月くらいだ。


 窓を閉めても部屋が寒いものは寒いので、急いで着替える。上にコートを来て、手袋とマフラーを着けて出来上がりだ。

 玄関に立てかけてあったスコップを持って家を出た。


「ちゃんと暖かい格好したわね? 行ってらっしゃい」

「行ってきます! 母さんも暖かくしててね!」


 僕は白銀の世界に飛び出した。


 ここ王都周辺は割と雪が多く降る地域で、冬になるとたくさん雪が積もる。大通り何かの広い道だと道が魔術具になっていて、雪が積もらないように常に暖かいところがあったりするけど他の道は近所の人達と力を合わせて雪かきをすることになっている。今日はだいたい僕の膝くらいまで雪が積もっていた。


「おっすリーンはよ!」

「おはようリーン、今日はちょっと遅かったんじゃない?」


 アルフとナタリアの二人は既に起きてもう雪かきを始めているようだった。既に細いけど、ある程度歩けるくらいの道が出来ている。


「おはよう二人とも! ごめん昨日寝るのが遅くってさ」


 僕は二人の元に駆け寄った。


「あっおい、そこ結構滑るから走らない方がいいぞ!」

「え?」


 言われた時にはすでに遅かった。ぎりぎり二人のところにたどり着く前に、足が滑って体制をくずした。前のめりに倒れていって、思わず目をぎゅっとつむった。


「危ねえ!!」


 アルフの声が聞こえたあとで、地面にぶつかった。ぶつかったはずだが、思っていたよりも衝撃はない。

 恐る恐る目を開けると、僕の目の前には尻もちをついアルフがいて、僕はアルフの上に乗っかっていて、彼がクッションになってくれたので衝撃が来なかったようだ。


「おーい大丈夫か? リーンは結構おっちょこちょいだよなー」


 アルフは立ち上がって、僕に手を差し出した。

 その手を握って僕も立ち上がる。


「あ、うん。ありがと大丈夫……」

「へへっ助けてやったんだから俺に感謝しろよー? リーンはただでさえ風邪引きやすいんだからな!」

「うん。アルフのおかげで平気だから、だから本当にありがとう」

「ん? どうしたんだよ、さっきから元気ないな。やっぱどっかぶつけた? それに顔赤いし! もしかして風邪ひいてるんじゃないか?」


 アルフは僕の額に手を当ててきた。僕と違って手袋をしてない彼の手は、こんな雪の中でもとても暖かかった。


「だ、大丈夫!! 大丈夫だから! ほら早く雪かきしよう!」


 僕は額にあったアルフの手をとってナタリアの方に行く。大丈夫、今日は寒いから顔の熱は直ぐに引くはずだ。


「ねえ二人とも、派手に転んでたけど大丈夫?」

「大丈夫だよ、アルフが助けてくれたし」

「おう、俺すっごいヒーローだっただろ!」

「あはは、それ自分言ったら意味無いんじゃないの? でも確かにかっこよかったよね、いきなり走り出すからびっくりしちゃった」

「そうなの?」

「そうよ。本当にヒーローみたいだったんだから」


 そう話をしながら雪かきを進める。今日降ったばかりの雪だから、雪は柔らかくて子どもでも雪かきはしやすかった。


 それでもこれだけたくさん積もっているとさすがに疲れてしまう。僕とナタリアは一旦離れたところに座って休憩をしていた。アルフはまだまだ元気で雪かきを続けている。


「そういえばさ、リーンが髪縛ってるリボン! 可愛いよね、どこで買ったの?」


 今日の僕のリボンは赤と青のチェック柄だ。花の刺繍なんかだと僕が付けるには可愛すぎるかと思って、考えた結果だった。


「これ僕が自分で刺繍したんだ」

「えっリーンが自分で?」

「雑貨屋のブレンダおばさんに教えて貰ったんだ。最近刺繍にはまってて、母さんの誕生日の時は花の刺繍したハンカチあげたんだ。すごい喜んでくれたんだよ!」

「すごい! リーンは偉いなぁ。私は誕生日でも近くで詰んできたお花をあげるくらいしかしたことないよ」

「プレゼントは気持ちが大事だからそれでもいいと思うよ。お母さん、喜んでたでしょ?」

「そっか、喜んでたし、じゃあ良かったのかな。でもいいなぁ……私も刺繍お母さんに習おうとしたけど難しくて全然出来なかったんだ。不器用なんだよ私ー。リーンみたいに可愛いの作りたいのに」


 ナタリアは深くため息をついた。


「そう? じゃあ、ナタリアにも何か作ってあげようか? もう少ししたらナタリアの誕生日だもんね」


 そういうと、ナタリアはぱっと顔を明るくした。

 ぎゅっと僕の手を握ってくる。


「本当に!? じゃあ約束ね!」

「うん約束。あそうだ、どんな模様がいいとかリクエストある?」

「そうだなー、じゃあ今リーンが着けてるリボンと同じやつがいいな! それすごく可愛いから!」

「これ? じゃあせっかくだし色違いにしようよ。ナタリアの髪は綺麗な赤毛だから、黄色とかの方が似合うよ」

「そう? リーンは灰色だもんね。ちょっと金色がかってるけど。じゃあ色違いね!」

「うん」


 ナタリアはえへへ、と小さく笑った。


 そう話をしていると、アルフも休憩に来たようだった。余程疲れたのか、ちょっと険しい顔をしている。


「二人で仲良く雪かきさぼって何の話してんだよ」

「あ、アルフお疲れ様。だって私たちアルフみたいに体力無いんだもん。それよりリーンのリボン見て! 自分で刺繍したんだって。私も誕生日にリボン作ってもらう約束したんだ」


 機嫌が悪いアルフにものともしないでナタリアは笑いかけた。アルフは僕の髪を結んでるリボンをまじまじと見ている。


「ふーん、それ、リーンが自分でやったんだ」

「うん。アルフも何か作ろうか? 誕生日はもう過ぎちゃったけどさ、次の分ってことで」

「んー……いや、いいや。俺そういうの着けないし。ていうか、やっぱリーンってすげえ器用だよな。料理も出来るし、その刺繍だって上手いし、女みてえ」

「なっ……!」


 そう言われて、僕は思わず立ち上がった。


「別に刺繍くらい、女の子じゃなくたってするだろ! 変なケチつけんなよ!」

「別にケチつけてねぇっつうの! 事実だろ! 男が刺繍してるとこなんて見たことねぇよ! それにお前だけ全然体力なくてすぐ女と一緒に休憩するし? やっぱ女の子みたいじゃんか!」

「ちょっと、体力無いのはリーンの体が弱いからでしょ! そういうこと言うの失礼でしょ!」


 僕とアルフが始めた喧嘩に、ナタリアまで参戦した。

 刺繍について言い合っていたはずなのに、だんだんと論点がそれてただの悪口になってしまった。


「アルフはこういう細い事が出来ないから頭悪いんじゃないの! これだから筋肉バカは話が通じないんだよ!」

「はぁ!? お前だって頭ばっかで運動全然出来ないくせに! そういうのを頭でっかちって言うんだぞ!」

「うるさいなバカ!!」

「お前がバカだ!!!」


 僕らは唸るように互いを睨みつける。


「「う〜〜〜……ふんっ!!」」


 そして最終的には互いに背を向けて歩き出した。

 後ろでナタリアの声が聞こえる。


「ちょっと二人とも、どこ行くのよ!!」


「「帰る!!!」」


 もちろん雪かきなんてもう知らない。

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