歩く速さで…
「さて、それではこの近くの街に向かいましょう。」
「街があるの?この先に?」
「はい、ありますよ。」
とはいえ、だいぶ距離があるように思える。
そして、もう一つ疑問がある。
「ところで、フレイアさんも一緒に来る?」
「当たり前じゃないですか!」
間髪入れずにすぐさま答えられてしまった。
「…それは、心強いんですけど。あなたの仕事はどうするんですか?」
そういう言い回しでフレイアに返した。
なんというか、正直なところ神様というだけであらぬ扱いを受けてしまうと思ったからだ。
別に、いてくれてもいいのだが…正直なところ邪魔である。
そして、そんなことをストレートに言えない俺は、そんな言い方をした。
ちなみに、この問いに対する彼女からの返答はというと…。
「大丈夫ですよ、何かあればまた時間を止めちゃえばいいんですから!」
そうピースサインともに笑顔で彼女は答えた。
彼女が時間を止めることができるのは知っていたが…なんというか拍子抜けしてしまった。
けれど、なぜか彼女との旅を楽しみにしている自分がいるのは事実だ。
とはいえ、夏希姉と秋葉他…幼馴染の春香など…死んでいる人を生き返らせる…って、ことかな?…っまあ、たぶん、そんなところなので一刻も早く魔王を倒さなければならない。
そして、俺はフレイアに導かれるようにして草原を歩いた。
日照りもよく、快適だった。
フレイアと歩いていると、何故か周りの物がゆっくり流れていくようだった。
事実、その通りだったのだが…。
(…バッタかな?)
「…ん?」
なぜかそのバッタは、脚を曲げるのに10秒くらいかかり地面につくのに8秒ほどかかっていた。
俺は、それをただ眺めていた。
けれど、一番明確な変化があった。
「…。」
風だった。
ただ妙に長い間背中が押される感触があった。
しかし、後ろには誰もおらずまたそんなに強く感じるほどでも無かった。
「どうされましたか?」
俺の行動に気がついたフレイアが声をかけてきた。
「いや…何というか奇妙な感覚がして…。」
「そうですか…まあ、私たちが速いので遅く感じるだけですよ。」
「えっ、あ~…うん?」
「はい?どうかされたんですか?」
「いや…その…速い?」
「はい、世界の時間を遅くしてますので相対的に私達は速くなっていません。」
「…ようするに、フレイアのせい?」
「はい、そうですよ。」
「相対?」
「相対性理論ですか?あんなの無視できますけど?」
「…やっぱり、何でもないや。」
「?…ならいいのですけど…。」
…とりあえず速く動いているらしい。
「…街かな?」
「はい、そうです。この国の大きな街の一つ、Tuxe-ruです。」
「ツェール…言いづらいな…。」
「街の名前は私が決めたものではないので何とも言えませんね。」
「そうなの?」
「はい。」
ここが、俺が初めてこの世界で人にあった街だった。