2つの条件
「そんなわけで、街に行きませんか?」
「…いや、いきなりそんなこと言われても…というか、目の前で家族失ったのにそんなことできるわけないだろ!もう少し、俺を落ち着かせてくれないか?」
「ああ…確かに混乱なされていますね。」
無理もないのかな…っと、そんな風に思っているのか彼女は腰に両手を当てた。
「すみませんね、私…実は少し舞い上がっているんですよ。」
「それは、知ってる。」
「あはは…そうですか。あの…陽斗さん…私には役目があるんですよ。」
「世界を維持すること…だろ。」
「はい、でも維持しなくてもいいんです。」
「…何なんだよ…この世界を犠牲にしろとか…もう何が言いたいのかはっきりしてくれないか?」
フレイアの今まで言ってきたことは覚えてはいるが、それでも不鮮明だった。
端的に言えばこの世界自体は藤原颯真の為に作られた自殺装置だ。
縄や、練炭、拳銃とほとんど変わらない。
瞬間的な死ではなく、充分に幸福感を得たあと死ねる…そんな幸せな装置だ。
悪くはないのかもしれないな…。
だけど、そんな一人の為に夏希姉や秋葉の命を奪われるのは嫌だ。
…なのに…なんで。
何で俺はそいつの出来なかったことを成し遂げて…夏希と秋葉を取り戻さなきゃいけないのだろう。
「私は確かにこの世界を維持しなければいけません。ですが、条件がいくつかあるんですよ。」
「条件?」
「はい、一つは定義時間1999年12月31日23時55分に大陸間弾道弾ミサイル及び核攻撃により全生命体の処分、その後この世界を私ごと崩壊させなければなりません。」
「1999年?」
「はい、この世界の時間表記です。あくまで私が決めた表記で世界が始まった時を0としてすでに100億年以上は経過しています。」
「…そうか、ところで何で1999年なの?」
「ノストラダムスの大予言に従い1999年に人類滅亡…ということにしておきたかったみたいです。」
「でも、それって7の月じゃないの?」
「…それもそうですね。でも、世紀末の方がそれっぽいですよね?」
「ああ…うん。」
「一つの条件はタイムリミットですね。二つ目の条件は魔王を倒すことです。」
「…魔王?」
「はい、魔王です。」
「フレイアは倒せないの?」
「…はい、でも魔王を倒せば…その…何と言いますか権限が付与されて魔王側の生命体も殺せるようになります。」
「でも、なんでそれが条件に?」
「神々の黄昏作戦という作戦が行われるんですよ。そして、藤原様はこの作戦に勝つことでその後の権力、名声をさらに手に入れるというシナリオになっていました。」
「…メタいなあ。」
確かに名声は集まりそうだけど…。
「私は、人類側の権限しか持っていません。これに負けてしまうと魔王側の一強になってしまい私は訳立たないまま1999年を向かえ…さらに、藤原様の目的を達成できなくなってしまいます。」
「ようするに、勝たなきゃダメってことだよね?」
「はい、そうです。」
「…先が長そうだよ。」
「人の一生は短くても長くても困ると藤原様は言っておられました。」
「身勝手な創造主だ…。」
「それで…なんで条件なんか俺に話したの?」
「私は役割から解放されたいんですよ。」
「…そうなの?」
「これまでの100億年も一人でこの世界を管理してきたんですよ…もう嫌なんです。」
「100億年か…。」
一年は短くとも、それを何回も繰り返しいくと長く感じるものだ。
彼女はそれを…人の人生何億回も繰り返してきたのだろう。
仕事をしながら…。
確かに気が狂いそうにな所業だ。
「長すぎたんですよ…でも、条件が達成できれば私はこの役割から解放されて…1999年から先の未来も開けて…私はたぶん、ふつうの女の子みたいに恋して笑って死んでいけるんです。」
そう彼女は苦しそうに声に出した。
だけど…俺にはわかっていた。
1999年から先の未来も…彼女の女の子としての人生も無いことを…。
「…フレイア、俺は。」
「いいんですよ、お願いします。」
だって…俺がそれを全部壊すのだから。
「…私を助けてください。」