1人目の転生者
2015年 11月3日
「はあ…はあ…。」
空に火球が舞い、物理法則に従っている大気はその魔法を事象として扱い周囲にその影響を伝えていた。
壊れた建物の残骸の中には冷えた身体がいつまでも落ちていた。
その周囲では、黒い法衣を纏った魔法使いの男が何か呪文のような言葉を唱え死体から魂を取り出そうしていた。
空中から落ちてくる薬莢、剣撃の風、叩きつけられる鉄の塊、傷ついた少女、結晶に引き裂かれた人、埋め込まれた銀色の銃弾、空に残された光の帯、ビルを張り巡らしている蜘蛛の糸、意図的に破壊された学び舎、砂を被った一万円札、空に舞う妖精、戦い続ける魔法少女…。
電線には、焼け焦げた死体が釣り下がっており、ご丁寧に首元には送電ケーブルが死体の首を絞めていた。
カラスはその死体をただ見つめ、地面に落ちるのを待っていた。
ただ地獄のような光景が広がっていた。
俺は、その匂いに耐え切れなくなり…異世界へと逃げ出した。
けれど、俺はいつまでもその世界に入れなかった。
世界は再び俺のような魔法使いを引き戻した。
魔法を失った俺は、その後世界同士の戦いに巻き込まれ銃を手に取り、戦場へと向かった。
俺の居た世界の人類は、もう一つの世界の人類に接収され、彼らの侵略戦争のために彼らの国の国籍…人権を得るために自分の世界の人類と殺し合いをした。
そして、俺が魔法によって築き上げた世界は今も存在している。
俺は、再びその世界に行くことができないままこの二つの重なりあった世界で死んでいくのでは無いかと思った。
事実、その通りだった。
俺が魔法で手に入れたのは理想的な自分の姿と世界を作る魔法だった。
しかし、俺がその魔法を使ったせいなのか時空のひずみを発生させてしまい、この世界と侵略してきたもう一つの世界を結合させてしまったといえる。
けれど、俺と同じように世界を作った人達もいた。
彼らも俺と共犯だろう。
そして、築き上げた世界から引き戻された俺と彼らは再び自分の居た世界を見つめなおしている。
ただ自分の存在を証明することに必死になって…また、あの頃の世界と同じような生活を送るために殺し合いをしている。
子供なら戦場から離れられる訳でもなく…俺たち人類は他の人類の為にただ戦い続けていた。
それが、例え銃後であってもそこには俺と同じ世界の人類ではなく彼らが生活している。
別に憎いとは思わなくなって来た…それほどひどく俺は疲れていたが俺の体はいつどのような場合でも理想的なパフォーマンスを続けられた。
自分がその身体が欲しくて魔法で変えたからだ。
今となっては、呪いのように感じている。
そして、また運ばれる俺達は…戦場を歩く。
ただ…生き延びる為に…。