1番嫌いな魔物、お気に入りへ昇格
「にゃおん♪(オークにゃ♪)」
「オークだな」
「ぷ!(おーく!)」
「オークですねぇ」
オーク対ボアの干し肉勝負は、審査員満場一致でオーク肉の勝利だった。
オーク肉で作る干し肉は、ボア肉の干し肉より1段上の旨みがあった。飲み込むのが少しだけ惜しく感じたほどだ。
このままだと、私を含めた肉好きに食べ尽くされるかも!?と危惧して、残りの干し肉をインベントリに放り込んだ。
「嬢ちゃん、もう一枚!」
「にゃにゃ~ん!!(おかわりにゃ!)」
「きゅう~♪(おかわり~♪)」
目の前から無くなっても、諦めずにおねだりをしているが、ここで負けたら明日の分が無くなる! 聞こえない振り、見えない振りを続けた。
ハク、ライム、オスカーさんのおねだりの声で起きてしまった男性陣の視線なんて、私は何も感じていないんだ…!!
ボアバラ大根にも味が染みたので、お鍋を始め、出していたものを全てインベントリに収納して振り返る。
何かを訴えているような視線は全てスルーして、
「では、私たちはそろそろ休もうと思います。 皆さん、後はよろしくお願いしますね! おやすみなさい♪」
「あ、ああ。おやすみ…」
「おやすみ、嬢ちゃん」
にっこり笑って、少し離れた所に寝床を用意する。 拗ねている2匹もちゃんと付いて来たので、
(偉いね~! また明日、美味しく食べよう?)
力いっぱいモフりながら説得したらしぶしぶ納得してくれ、それぞれに【クリーン】とおやすみのキスをしたら、やっと機嫌を直してくれた。
やれやれ。おやすみ…^^
「避けてみなっ!」
「ギャッ…!!」
騒がしさに目を開けると、ハーピーが倒されたところだった。
(おはよう、起きたのにゃ?)
(うん、おはよ…)
(ありす、おはよ)
うん、2匹とも無事だな。 よかった。
「嬢ちゃん、起こしちまったか? すまんな!」
オスカーさんが、ハーピーを仕留めた所から大声で謝ってくれたけど、焚き火の周りではまだ寝ている人もいるから、大きく手を振って挨拶にしておく。
「アリスさん、ごめんな。まだ夜明けまで少し時間はあるけど…」
「大丈夫です。もう十分に眠れたので」
焚き火の側にいたオースティンさんも謝ってくれたが、何の問題もない。 眠りすぎて、少し頭の働きが悪いくらいだ。
寝起きの【クリーン】を掛けながら、従魔2匹を抱っこしてくつろいでいると、徐々に空の色が明るくなってきた。
今日も綺麗だな~。
暢気に景色に見入っていると、
「朝だ! 野郎共起きやがれっ! 来るぞっ!!」
オスカーさんの怒鳴り声が辺りに響いた。
(アリス!)
(うん。【ウインドカッタ~】)
寝起きのせいか、軌道がずれて胴体を切断してしまったが、まあ、問題ないな。素材部分に傷はないはずだ。
マップの赤ポイントはあと6つ。その内5つがハーピーで残り1つがスライムだ。
「あ、やられた?」
スライムのポイントにハーピーが1羽近づいて行き、スライムのポイントが消えた。 どうやら狩られてしまったらしい。
(アリス! から揚げにゃ! から揚げをいっぱい狩るのにゃ!)
ハクの中ではハーピー=から揚げになったようだ。 照り焼きとかも美味しいよ?
「ハク、ライムを守ってて!」
のんびりしていてハーピーを逃がしたら、から揚げを気に入ったハクから叱られそうだ。本気で狩りに行こう。
<鴉>を抜きながら、1番近くのハーピーに【ウインドカッター】を飛ばす。後はハクが受け止めてくれることを確信しながら、次のハーピーに狙いを定める。
「っ!」
視線が合ったと思った瞬間に、風の刃が飛んで来るのを感じたので、とっさに<鴉>で断ち切った。
(魔法まで切れた!?)
<鴉>の性能に驚いたのは一瞬で、すぐさま私からも【ウインドカッター】をお返しする。 今度はきっちり首を刈り取った!
マップから一番遠くの赤ポイントが2つ消えたので、消えた方角を見てみると、オスカーさんが仕留めていた。
『おじちゃん』達はバラバラに散って警戒をしている。攻撃が目的じゃなくて、回避を意識しているらしい。
「【ウインドカッター】!」
魔力の膨らみを感じた方へウインドカッターを飛ばしたが、発動準備の整っていたハーピーの魔法と相殺されてしまった。最後に残ったハーピーは、空中で動きを止めるのは不利だと悟ったのか無軌道に飛んで私に向かって来たが、ただそれだけだ。<鴉>の一振りで胴体が斜めにずれた。
【マップ】にはもう魔物のポイントはない。ライムとハクの無事を確認してから、ハーピーの回収に向かった。
ありがとうございました!




