オスカーさんの解体講座
「何をしているんだ?」
「朝食や昼食を手軽に食べられるように、ごはんの作り置きを作ってるんです」
肉団子を丸めながら答えた。ハクには目に見えないように防塵結界を張ってもらっている。
「…もしかして、本当に俺達に分けてくれるだけの余裕があるのか?」
「ありますよ~。 でも、調理の必要があるので、仕度を手伝ってもらえると助かります」
「ああ、もちろんだ! 何をすればいい?」
オスカーさんが請け負い、周りで皆も頷いている。
「お米を炊ける人はいますか?」
「俺ができる」
オースティンさんが名乗りを上げてくれたので、大鍋2個と米と水の入った鍋を渡した。
お金持ちのオスカー&マルゴ家のオースティンさんにご飯が炊けるなら、人の食料としても、それなりには普及しているのかな?
「お米はもう洗ってありますので、あとは水を入れて炊くだけです」
「わかったよ。任せてくれ」
「よろしくです^^ あとは、バカ鳥…、ハーピーを解体できる人はいますか?」
「それなら俺だ」
今度はオスカーさんが名乗り出てくれた。 ハクの狙いどおり!
「素材と、魔石、肉に分けてください。鳥の部分の骨も必要です。 廃棄する部分はライムに任せてください」
「(まかせて!)ぷっきゅう!」
お願いをしながら解体台を出して、ハーピーを2羽置く。
「解体ナイフはお持ちですか? よければマルゴさんから貰ったものをお貸ししますが?」
「いや、大丈夫だ。 使い慣れたナイフを持っている。それにしても、嬢ちゃんのアイテムボックスは、こんなもんまで入っていたのか…。」
オスカーさんは解体台を撫でながら呟くように言った。
無いと不便だし、あれば調理台にも使えるしね♪
「入手したてですので、張り切ってどうぞ! 勉強の為に、見ててもいいですか?」
「なんだ、嬢ちゃんはハーピーの解体は初めてか?」
「はい。マルゴさんの指南書で予習はしたんですが、お金になる部位とかを教えてもらえると嬉しいです♪」
あまりグロくなければ、自分で解体したい。
「よし、見てろよ?」
オスカーさんは、『見て覚えろ』のタイプらしく、無言でサクサクと解体を始める。
まず、上半身と下半身の鳥の肉体に変化する境で分断する。下半身の血抜きをしている間に、両方の翼を根元から切り落とし、左胸にナイフを突き立てて魔石を取り出したら、上半身を広がって待機しているライムの上に優しく置いた。
ナイフを置いて、羽を丁寧にむしり始めたので、バスケットを出して置くと、その中に羽根を入れてくれる。
羽根をむしり終わったら、手羽先(?)と手羽元(?)に分けて置き、下半身の鳥の部分に着手した。足を切り離してから骨と肉に分ける。
「ハーピーの羽根は値がつくから、綺麗に毟れよ? 魔石は【風の壁】が出ることがある。右足は討伐証明に使うが左足は必要ない。従魔が食ってる上半身は毒こそないが、くそ不味いからギルドではまず買い取らねぇ。下半身の肉は美味いのが、ハーピーの不思議ってヤツだ」
上半身が人型の魔物だったので、自分で解体を覚えるのは難しいかと思っていたが、人型部分は魔石さえ取れればそっくり廃棄なので、私にもできそうだ。
「ありがとうございます! 羽根は毟るのが大変そうですけど、使い勝手が良さそうで、溜まるのが楽しみです♪」
「何にするんだ?」
興味ありげに聞いてくるけど、鳥の羽根と言えば、
「寝具に」
一択だ。
「風切羽もか?」
風切羽は大きくて硬そうだから寝具には向かない。
「どうしようかな?」
「だったら<ギルド>で売ってやれ。弓使いが喜ぶ」
「そうします。となると、寝具に使える羽根が減るなぁ。いま持ってるのが合計8羽。先は長いですね」
先に生地を縫って、少しずつ詰めていくのもいいかな?
「何だ、まだあるのか? 全部解体してやるぞ?」
「お願いします!」
いつものように、一番大きい個体を残して、残り全てを取り出した。
「1羽少ないか?」
「非常用にキープです」
「慎重だな。 長生きできるぞ」
褒められた! ご機嫌で肉団子作りを再開すると、
「あの~、俺達は何を?」
他の男性陣も、仕事が無いかを聞いてくれる。 今のところは特にないけど、
「ハクと遊んであげてもらえますか?」
ライムがお仕事中で暇そうにしているハクの相手をお願いしてみる。
「よし! おじちゃん達と遊ぼう!」
…『おじちゃん』達は子供や動物に甘いタイプの人と見た! ハクと上手に遊んでくれそうだ♪
ありがとうございました!




