のんびり過ごそう!
「う~ん、膝下くらいかなぁ?」
「うん、膝下くらいにゃ!」
木の陰を求めて移動しながら、マントの長さを検討する。
膝上の方が可愛いが、実利を考えると膝下の方がよさそうだ。長すぎたら、縫い直せばすむことだしね!
「マントがあれば、ライムの出入りを隠せるね~?」
「うん、便利にゃ! ライムは他人のいる所で危険を感じたら、アリスのマントの中に隠れるにゃ!」
「ぷきゅっっ!」
ルシアンさんのマントは従魔たちにも好評だ。
「思ったよりも大きい木だったね」
木の陰で日光を遮りながら、複製したマントの裾上げをする。 ルシィさんの裁縫セットには色々なサイズの針と糸が揃っていた。糸の色は少ないが、マントには十分に色を合わせられる。貰った早々に大活躍だ。
「実がなってないのが残念にゃ」
「そうだね~。りんごと木苺以外の果物も欲しいなぁ」
私たちも贅沢になってしまった。転移したばかりの頃は食べ物があるだけで嬉しかったのに。
鑑定してみると<クスノキ>だった。 美味しい実はならないみたい。
「そういえば、昨夜は魔物の襲撃はなかったんだね」
「そうにゃ~。今も魔物の気配もないし、平和にゃ~」
シーダの森から魔物が遠征するのは、ネフ村までなのかな?
マップを見ても、特に採取できるものは無い。
「本当に平和だね~。ここでもう1泊しちゃう?」
大きな木陰が出来るから、陰を移動しながら過ごすのも、面倒だけど面白い。
「アリスがそうしたいならいいにゃ~」
「ぷきゅ~」
2匹も賛成してくれたので、今日は1日をのんびりと過ごすことにした。
「凄い! 真っ白! ふわふわ~♪」
裾上げの済んだホーンラビットのマントにクリーンを掛けたら、毛皮が真っ白になって、毛の1本1本がふわふわになった! もちろん表地の生地も、クスミが取れて綺麗な紫黒色に。
パラサイトツリーのマントも生壁色だった表地が胡桃色になった。 ……汚れって、こんなに色が変わるんだ?
あまり知りたくなかった新発見だ。
「アリス、毎日僕にクリーンをかけて欲しいにゃ…」
「ぷぅぅぅぅ…」
従魔2匹も思うところがあったようだ。
「うん、綺麗にしていようね」
お風呂用の石鹸も探さないとな…。
“トントントトトトトトト”
“トトトトトトトトントントトトトト”
「何をしてるにゃ?」
「ハンバーグ用の肉を挽いてるの」
“トトトトトトトトッ”
「いっぱい作るのにゃ?」
ハクの目が期待に輝いている。
「挽肉にしておくだけだよ。複製で増やしておけば、いつでも簡単にごはんが作れるからね。今日、全部食べる分じゃないよ?」
期待を裏切る説明をしたとたんに、周りを覆っていた防塵の結界が壊れた。
【遮音魔法】が使えるなら【防塵魔法】も使えるかも?と思い、ハクにリクエストをしたら、あっさりと【防塵結界】を張ってくれたのだ。
「きゃあ! ハク、お肉がダメになっちゃうよっ!!」
“お肉がダメに”と聞いて、即効結界を修復したハクに、挽肉を大量に作るのがどれだけ大変かを懇々と説明したが、すっかり拗ねたハクは、後ろを向いてしっぽをぱたぱた振っている。ご機嫌斜めらしい。
ハクのご機嫌斜めは、私が中鍋に山盛りの挽肉を作り終わるまで続いた。
「何をしているのにゃ?」
「ぷ?」
「りんごのおやつ作り」
・りんごの皮を剥いて、12等分にカットしたものを“軽くドライ”で干しりんご3個分。お皿が少ないので小鍋に入れてできあがり。
・皮を剥いて一口大にカットしたドライアップル用のりんご。これも3個分。中鍋に入れて水と砂糖を入れてるから、あとは夜にかまどの火で仕上げるだけ。
・単に皮を剥いてカットしたデザート用のりんごを3個分。お皿に載せて、できあがり。
ここまでで一旦休憩にする。 昨夜複製したりんごを1つのバスケットにまとめてもう一度複製した時は、りんごがいっぱい!!と喜んでいたのに、また一気に減った。 こまめに複製をしておかないと、あっと言う間になくなりそうだ。
「食べないのにゃ?」
全部インベントリにしまったら、とっても残念そうな顔で聞かれた。
「食べる?」
挽肉でもがっかりさせてしまったので、りんごくらいは、と思って聞いてみる。
「しわしわのりんごはおいしいのにゃ?」
不思議顔のハクに聞かれたので、1個分だけお皿に出してやった。
「ふにゃんとしてるにゃ! おいしいにゃ!」
「ぷきゅきゅ~!」
「ライムと半分こね」
そう声を掛ける前に、2匹で仲良く食べ始めてた。 仲良しはちゃんと分け分けできるんだなぁ^^
感心していると、2匹が食べるのを途中でやめて私を見ている。
「どうしたの?」
「アリスは食べないにゃ? 美味しいにゃ~」
…私にも分けてくれるらしい。 思いっきり2匹をもふり倒した。
気が済むまでもふった後に食べた干しりんごは、甘みが“ぎゅっ”と凝縮されて、一段と美味しかった♪
「「いただきます」にゃ!」
「ぷっきゅ!」
干しりんごだけでは足りなかったので、おやつの様な昼ごはんを食べた。
マルゴさんのパンにレタスとチーズと木苺を挟んだものを1個ずつと、レタスと焼きオークを挟んだものを1個ずつ。それにりんご水で軽めのお昼ごはんだ。
「美味しいけど少ないにゃ。もっと食べたいにゃ!」
ハクが苦情を言い、ライムもぷるぷる震えて賛同している。
「夜にはちゃんと作るからね? 足りないなら何か出そうか?」
インベントリ内のおかずを思い出し、2匹をもふりながら提案してみた。
「じゃあ、夜まで我慢するにゃ~。 楽しみにゃ♪」
「ぷっきゅ~♪」
「うん、美味しく作るからね!
……それにしても、気持ちのいい風が吹いてるね~。夕方までお昼寝する?」
ゆっくり過ごすと言えば、お昼寝だ。 気持ちの良い風に吹かれながら、木陰で従魔たちとのんびりお昼寝なんて、最高に贅沢だ♪
「昼寝? 賛成にゃ!」
「ぷきゅきゅ~!」
満場一致でお昼寝を可決♪
ワイルドボアの敷物の上に、ホーンラビットの敷物を敷いて、両側にかわいい従魔を抱えてからホーンラビットのマントを被る。
「ぷきゅ~~?」
「ライムがクッションにならなくていいの?って聞いてるにゃ」
「うん。今日は“抱っこ”の気分なの♪ おやすみ♪」
お昼寝でもおやすみのキスをするべきか…? 少し考えていたら、ハクとライムから頬にキスをされた。
お昼寝でも挨拶はいるらしい。
2匹の額にキスを落として、眠りに落ちた。
ありがとうございました!




