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出発は心穏やかに

「どこへ行くんだ? あてはあるのか?」


「とりあえずは西へ。のんびり旅をしながら大きな街まで行ってみます」


「そうか。冒険者になるんだったな」


「ええ。稼ぎますよ~!」


「お風呂の為に?」


「ええ、お風呂と美味しいごはんの為に!」


「美味い飯か。何もなければ今夜は“なべ”だったな?」


 ルベンさんは“鍋”と言ってもぴんとこないみたいだ。皆で“鍋”を囲む文化は無いのかな?


「ええ、ルベンさんの美味しそうな白菜とマルゴさんのスライスしてくれたオークでお鍋のつもりでした。ルベンさんから貰ったチーズで、チーズハンバーグもいいなぁ…」


「なんだよ、それ! 食ってみたい!」

「んにゃぁ~!(今夜たべるにゃ?)」

「きっと、美味しいものよ! 食べたいわ!」

「ああ、食べてみたいねぇ」

「ぷきゅきゅ~♪」


「村長一家、どうしてくれよう…」


 ルベンさんが不穏なことを呟いていたけど、皆が笑顔の内に村の門前に着いた。


 ルシアンさんから貰ったパラサイト・ツリーのマントを羽織ってみると、裾が足首までを隠した。


「やっぱり大きすぎたな…」


「アリスさん、脱いで! すぐに裾を上げるわ」


 マントを羽織るのは始めてだから、こんなものかな?と思ったけど、長すぎるようだ。


 ルシアンさんのハーフが私にはロングになって丁度いいと思ったんだけどな。


「大丈夫ですよ。野営の時にでも、ルシィさんの裁縫セットで裾上げしますから」


 移動しているうちに程よい長さがわかるだろうし、このまま着て行こう。


「お世話になりました」


「世話になったのはこっちの方だね。 本当に、ありがとうよ。ハクちゃん、ライムちゃん、アリスさんのことを頼むよ」


「女性の一人旅に見えるんだから、十分に気をつけてね?」


「礼をいくら言っても足りないくらいの恩だ。忘れないが、忘れないうちに戻ってきてくれ」


「こうやって、自分の足で歩ける感謝を忘れない。何かあったら、頼ってくれ!」


「にゃん!」

「ぷきゅっ!」


 それぞれに挨拶を交わし、別れが湿っぽくならないうちに歩き始めた。振り返ると寂しくなると思って、振り返らず、西に向かってただ歩く。


「「アリスさんっ!!」」


 呼び止める男女の声がしたので振り返ると、エメさんと元気になった旦那さんが追って来ていた。


 もう、あんなに走れるなんて、回復魔法って、本当に凄い!


「主人を治してくれて、本当にありがとう!」


「治療費を聞いてびっくりしたんだ。塩と米だけで治してくれたこと、本当に、感謝しています」


「こんな形でのお別れになるなんて、思っていなくて…。治療の後も色々と気遣ってくれたアリスさんに、一目、元気になった主人を見てもらいたかったの」


「「本当に、ありがとう!!」」


 そう言いながら、2人は私の両手を握り締めた。


「その為にわざわざ…? 嬉しいです! 元気になって良かったですね!」


 エメさんは、私がポーリン達に絡まれている時にも声を挙げてくれた。ネフ村では嫌な思いをすることもあったけど、それでも治療をして良かったと、何か報われた気がした。


「なんのお礼もできないけど、せめてこれを…」


 そう言ってエメさんは布に包んだパンを渡してくれた。


「いいんですか?」


「これだけしかないけど、食べてください」


 突然の出立だったので、パンを準備する時間はなかったはずだ。これは夫妻の晩ごはんだろう。


「ありがとうございます! 今夜の糧にいただきます!」


「にゃん♪」


 お礼を言うと、ハクも順番に夫妻の肩に飛び乗り、頬をすり寄せてお礼をしていた。


「おお、可愛いなぁ!」


「ええ、可愛いわねぇ!」


「にゃっ♪」


 ハクは夫妻に褒められて、ご機嫌で私の肩に戻ってきた。


「では、行きます。 お元気で!」


「旅の無事を祈っています!」


「ありがとう! お元気で!」 


 村の門前でまだ手を振ってくれている、マルゴさんとルベンさん一家にも大きく手を振って、また歩き始めた。


「回復のスキルを貰って、本当に良かったなぁ~♪」


「ビジュー様に感謝して、しっかり稼ぐにゃ!」


「うん。 ビジュー! ありがとう!!」


 空に向かって大声でお礼を言って、足取りも軽く歩き続けた。






「今日はこの辺で野宿…、野営する?」


 村を出てから、魔物1匹出てくることもなく、平和な道行だった。


「安全そうにゃ」


 この辺りにも魔物の気配はなく、見通しも悪くない。 


「とりあえずカモミールティでも飲む?」


「ぷっきゅう~!」

「ごはんは後にゃ? ライムがお腹減ったにゃ!」


「ライムだけ?」


「僕もだけど、ライムが腹ペコにゃ!」


 そっか、村で栄養をいっぱい分けてくれたから、お腹が減ってるのかも…。


「何か食べたいものはある?」


 インベントリからかまどを出しながら聞いてみる。


「チーズ入りハンバーグが食べたいにゃ!」


 マルゴさん達との会話を覚えていたようだ。


「いいよ。でも、お肉を細かくひき肉にしなきゃいけないから、時間かかるよ。待てる?」


 確認すると、ハクは真剣な顔で考え込み、ライムを見てから、


「今日はラビットがいいにゃ!」


 意見を変えた。 ウサギ肉か…。 淡白な肉だったな。 う~ん、卵はないけど、作れそうな気がする。


「じゃあ、から揚げと照り焼きラビットにしようか?」


「楽しみにゃ♪」

「ぷっきゅ♪」


「先に複製しちゃうね」


 調味料が減る前に複製をしておいた方が良いだろう。今日は素直に食品の複製をしよう。


 残り少なくなっていたりんご(残りを全部バスケットに入れて)・醤油・みりん・酒・砂糖を複製をした。 複製したいものがいっぱいで、明日が待ち遠しい!


ありがとうございました!

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