表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/763

リッチスライムの貯蔵量

「このくらい乾燥できたら、清潔なビンなどに入れて保存してください」


 乾かしていたカモミールを【ドライ】を使って乾燥させる。


「このくらい、か…」


 皆は真剣な顔でカモミールの乾燥具合を確認している。


「日光に当てないように、カビが生えないように、気をつけてくださいね? カビは病のもとですから」


「カビが生えてもそこだけ取り除いて食べれば、腹が下ることもないが…」


 マルゴさんの疑問はもっともだけど、


「生きていくことが優先なので、カビを取り除いて食べることを否定はできません。でも、カビは水溶性なので、目に見えるカビを取り除いても、その食品そのものが汚染されてるんです…。 カビを生やさない! これを第一に考えてくださいね?」


 食べ物が貴重な世界のようだから、ちょっとカビが生えたくらいで食品を捨てることはないだろう。でも、“カビは体に良くない”という認識だけは持っていて損はない。


「わかったよ。カビが生えないように注意する。息子に何か考えさせよう」


「頼りになる息子さんですね! お会いできないのが残念です。 お部屋をお借りしたことのお礼を、伝えてもらえますか?」


 ベッドでゆっくりと休ませてもらった。部屋は【クリーン】で綺麗にして来たが、お礼を直接言えないのは残念だ。


「ああ、伝えておくよ。生姜焼きとオークカツを作ってやったら亭主も息子も喜ぶだろうねぇ」


 息子さんへのお礼は、レシピでいい様だ。良かった^^





「ライムの栄養……、肥料を出す場所は決まりましたか?」


「ああ、ルシアンに聞いた。ウチの納屋に入れてくれ」


「納屋、って倉庫のことですよね? 肥料なんて入れていいんですか? 袋とかに入ってるわけじゃなくて、わさ~っ!ってそのまま出ますけど…」


 確認したら、


「肥料を必要な畑に配布し終わったら、アタシがクリーンをかけるから大丈夫さ」


「必要なものは全て移動した。大したものは残っていないから大丈夫だ」


 とのことだった。ちゃんと打ち合わせていたらしい。


 安心して、皆でぞろぞろとルベンさんの納屋に移動した。



 ルベンさんの納屋はそこそこの広さなのに、物がほとんど置かれていなかった。短時間でよく片付いたものだ。


「じゃあ、出します」


 納屋の中に出すのなら、ライムに直接出してもらえばよかったな~、と思いながらインベントリを開くと、インベントリからこぼれる落ちるように肥料が出てきた。


 しばらくすると、肥料の山が高くなったので、少しずつ出口に向かいながら山をいくつか築く。インベントリから全て出し終わった後に、ライムが跳ね出し、直接栄養を吐き出し始めた。室内で私たちだけだから問題はないんだけど…。


「その小さい体のどこに、こんなに溜め込んでいたの?」


 思わず口を衝くと、ハク以外の全員が何度も頷いた。


(ごはんの栄養は別だから、ライムが弱ることはないにゃ)


 ハクだけは、余裕の態度だ。


 ライムが栄養を出し終わる頃には、納屋にはライムとハクと私しかいなかった。足の踏み場がなくなって、1人、また1人と納屋の外へ出て行ったのだ。


「こんなに大量に出してくれて良かったのか?」


 マルゴさんから<リッチスライム>について詳しく聞いていたルベンさんが、戸口から心配そうに聞いたが、ライムは見た目に何の変化もなく、機嫌良さそうに跳ねている。


「ごはんからの栄養は別に蓄えているから大丈夫だそうです」


 ハクの言ったことを伝えると、戸口で衝立代わりに立っていた皆が安心したように笑った。


「さて……。そろそろ行きますね!」


 自分達の畑の肥料より、ライムの心配をしてくれた皆の気持ちが嬉しくて、気分良く弾みがついたので、「出発しよう!」という気になった。


「行くの?」


 ルシィさんは少しだけ寂しそうな顔をしたけど、


「お金が無くなったら、戻ってくるんでしょう? 待ってるわ!」


 と言って笑う。


「お金が無くなったら大変なので、待たないでくださいよ~!」


「じゃあ、何もなくてもまた来てくれる?」


 そう言っていたずらに笑うルシィさんに、


「村長がマルゴさんだったら、永住も考えちゃいますね!」


 私も笑って冗談で返した。


「そうかい? だったら、村長になってみようかねぇ」


「そりゃあ、いい!」


「面白そうだ!」


「じゃあ、その日を楽しみに、行って来ます!」


(その時は、僕も皆の前で声を出して話そうかにゃ~♪)


(いいね! ライムにもお願いして、農業で村おこししちゃう?)


 村の入り口に着くまで、皆でずっと笑ってた。


ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ