護衛旅 ハクの異変 4
下界には不干渉のはずの、創造神直々のお仕置き。
これは大事なのではないかと焦りを見せた私に、ビジューは、
「直接創造した個体にお仕置きをするくらいなら、大した影響は出ないから大丈夫よ?」
ゆったりと微笑みながら言ってくれるけど、影響が❝全く出ない❞とは言わないんだよね。
女神が愛するビジューにダメージを与える危険を冒してまで行った、ハクへのお仕置き。
どうして? と聞いたら、首を傾げながら、
「アリスは怒っていないの?」
不思議そうに問い返された。
怒っていないのかと聞かれたら、そりゃあ、怒っていたよ?
ライムの生死に係わることを隠されていたんだから。しかも私にだけ。それで怒らないほど優しくはないし、とても悲しかったことは否定できない。
でも、ハクが私に隠し事をするのはこれが初めてじゃないのに、女神が愛する世界に悪影響を与える危険を冒してまでハクにお仕置きする理由としては弱い気がする。
そう伝えると、
「初めてではないことが問題なのよ? それに今回、あの仔は被守護者を傷つけてしまったのだもの」
ビジューが少しだけ困ったように続けた。
確かに、私はハクの声も聞こえないほどの恐慌状態に陥るくらいに傷ついたけど、それはハクにとっても同じじゃないかな? 私に自分の声が届かなかった時、ハク悲しかったんじゃないかな?
と思ったけど、どうやらそれだけではなかったようで。
あの時ハクが私に掛けた【強制睡眠】魔法。あれがいけなかったらしい。本来は攻撃用の魔法で、込める魔力の量によってはそのまま目覚めないこともあるらしいから。
でもあの時は、ハクは私を落ち着かせる為に眠らせただけだ。それならこれまでの、自分たちがお腹が空いたからと❝私の口と鼻を覆って呼吸を止めての強制起床❞とか、諸々の理由での❝頬っぺたかぷっ!❞とか、私が不要だと判断していたギルドカードを作らせるための❝指先かぷっ!(流血あり)❞はどうなるんだろうね?
どっちかというと、これまでの行動の方が問題ありなのでは?
疑問の視線を投げかけてみると、ビジューは深くため息を吐き、
「あの仔に<守護獣>としての教育を十分に出来なかったことが悔やまれるわ」
なんて言ってるけど。ため息を吐く姿さえも絵になるほど美しくてとても眼福だけど。ごまかされないよ?
わざわざビジュー自身がお仕置きをする程のことだとは思えないからね。それこそ今のように夢の中で❝お説教❞するだけでもハクには大きなダメージになったと思うもん。
他にも理由があるなら教えて欲しい。と、じっとビジューを見つめる。
何も言ってくれないビジューをじ~っと、じ~~っと、じ~~~っと見つめ続けていると、根負けしてくれたビジューが諦めたように深~いため息を吐いてから口を開いた。
「あの仔ったら、アリスを守る為に私が与えた寿命を、勝手に使ってしまったのよ」
ありがとうございました!




