私のついた、嘘・・・?
「そろそろ治療に行きましょうか」
今日も患者さんが待っている。 話を続けていたい誘惑をはねつけて、重たい腰を上げた。
「ああ、今日も頼むな」
「はい。“肥料”は夜になるまで待ってくださいね。暗い方がライムを出しやすいので…」
“肥料”が予想以上の効果だったので、ライムの貴重性が上がってしまった。 誘拐防止の為に、栄養を出すところは人に見られない方が良さそうだ。
「ああ、それでいい。 ルシアン、村の畑の側に、肥料を出してもらう場所を空けておけ」
「わかった」
ルシアンさんが、1人で畑に行くらしい。
「…ルシアンさん、大丈夫ですか?」
「ああ。足が動くようになって、これ以上に嬉しいことはないんだ。今なら誰に何を言われても、殴らずにすませられる。 それに、多少の不満くらいは笑って受けるさ。親父の役得だってな!」
ニヤッっと笑って言うルシアンさんの顔を見ると、心配することもなさそうだ。
人に会いたくないっていうのも動かない足を見られたくないからかと思っていたら、どうやら違っていたらしい。
平和主義(?)所以のようだ。
「大丈夫よ、アリスさん。ウチの弟は、なかなか良い性格をしているの♪」
ルシィさんも心配の欠片も見せずに笑っているから、大丈夫なんだろう。
「ルシィ、店を頼んだよ」
「ええ、任せておいて!」
「ルシアン、白菜を忘れるなよ」
「ああ、わかってる」
「じゃあ、また夜に」
それぞれに必要なことを伝えて、さあ、行こう!と思ったら、思い出したようにルシアンさんが言った。
「マルゴおばさん! アリスさんの吐いた“嘘”って何なんだ?」
「夜にでも話してやるよ」
「気になって、夜まで待てねぇよ。今教えてくれ!」
「何だい、せっかちなやつだねぇ」
私が付いた“嘘”? 何がバレたのか気になって、私も耳をそばだてた。
(なんだろうにゃ?)
(ハクが神獣だってバレたのかも?)
(僕の隠蔽は完璧にゃ!)
考えてみても心当たりはなく、マルゴさんが口を開くのをおとなしく待った。
「アリスさんはねぇ……、『ただの平民』なんだとよ!」
……本当のことだ。嘘じゃない。 緊張して聞いていた私は、拍子抜けした。
それなのに、
「くっ…! あははははははっ!! そんな、すぐにバレることをっ…!?」
「ふふふっ! そうよね~! 」
ルシアンさんは笑い崩れ、ルシィさんも一緒になって笑っている。
ルシィさん、私が平民だって納得してくれたんじゃなかったの…?
「嘘じゃ、ないんだけど……」
訂正をしても2人は変わらず笑い続けているので、もう、放っておく。
「……行きましょうか」
笑いを噛み殺しているマルゴさんとルベンさんに声を掛けて歩き始めると、
「アリスさん、本当にありがとうな。足も、牙も…」
笑い過ぎて出たらしい涙をぬぐいながら、ルシアンさんが改めてお礼を言ってくれた。
治って、良かったですね♪ 本当に!
ありがとうございました!




