護衛旅 集落 23 依頼 4
何だかとっても面倒くさくなってしまった<キラービーの蜂蜜採取>依頼。
ハクやオデッタの提案通りに「やっぱ、や~めた」って言いたい気もするんだけど、
「この依頼は私から提案したものだからね。もう、止めたい気持ちはいっぱいあるんだけど、仕方がないから行って来るよ」
一度やるって言ってしまったことだから、今更気が変わった!なんて言えないよね?
ハクとライムの大好物を採取しに行くついでに、依頼を1つ片付けるくらいのつもりで行くことにする。
私の返事を聞いて不服そうなハクとライム、ふくれっ面を隠そうともしないオデッタは、
「明日の朝は、おいしい蜂蜜を使っておいしいごはんを作るからね!」
の一言で満面の笑顔を浮かべてくれるから、可愛いよね! アルフォンソさんは奥さん(オデッタ)の態度を見て笑いを堪えているから大丈夫。これで話は付いた。
そうと決まれば早速出発!
と思ったのに、
「今夜までに褒賞金を用意するのは難しいかと……」
「じゃあ、後から振り込みで」
「受け取りの際にはサインが必要なのでそれも……」
裁判所の職員さんが難色を示した。
ラリマーの裁判所ではそんなに時間がかからなかったと思うんだけどな? ああ、もしかしたら、掴まっている犯罪者が他にもいて、職員さんたちが忙しいのかな? 受け取りにはサインが必要なのか。確かにラリマーでもその都度サインをした記憶があるな。振込だと金額に不服がある時などに問題が起こったりするのかな?
と推測しながら困っていると、
(モレーノからの手紙を見せるのにゃ!)
ハクがぽあぽあの白い胸毛を逸らしながら提案してくれる。今は後見人のお手紙が必要なほどの大変なケースじゃないよ?と言おうとしたら、その前にハクからの心話が続き、
(モレーノの手紙を見せて、後からごねないと言えばいいのにゃ! モレーノの名前があれば職員たちも手を抜けないから、話が早いのにゃ~!)
と言われて納得した。あまり後見人の威を借るのもなぁ……、と思う気持ちより、今の依頼人の時間とお金を無駄には出来ない!との思いの方が強かったから。彼らは1日でも早くお金を貯めないといけないのに、こんな所で無駄な時間と宿泊費用を使わせるわけにはいかないからね。
……結果は「最速で処理します」とのこと。
……お役所仕事、それでいいのか?
あとは、依頼人夫妻にきちんと事情を話したら、すぐに出発だ!
と思ったら、ここでも躓いてしまう。
元々夜までは自由行動の予定だったのだから、ギルドからの護衛はいらないのでは?とオデッタが言い出したからだ。ギルドマスターを嫌そうに見ながらね……。
それを聞いたギルドマスターも私を不審そうに見る。こっちは「ギルドの弱みに付け込んでいらない仕事をさせようとしやがって!」って感じかな?
でも、ね?
「この程度の規模の町の中なら、依頼人に何かあっても即死でない限りはすぐにどうとでも対処できるけど、町を離れてしまうとそうもいかないからね。護衛は必要なの。私の依頼人をきっちりと守れないっていうのなら、この話はナシよ」
護衛は必要だと念を押す。
お互いがこの町の中にいるなら【マップ】で安全確認ができるからね。もしも怪我をしてもすぐにニールやスレイと一緒に駆けつけることができるから安心なんだ。
もちろんこんな詳しい事情は話さない。でもギルドマスターにはそれで充分だったらしく、
「……わかった。君の依頼人の安全は冒険者ギルドが保証する。だから採取に行ってくれ」
オデッタとアルフォンソさんに向かって、護衛を付けるけど少し離れた所から守るようにするから、2人の行動の邪魔はしないと約束してくれた。
2人もそれを聞いて渋々とだけど納得してくれたので、安心だ。
やっと出発できる!
オデッタとアルフォンソさんに手を振って、スレイの背に乗って町を出た私は、
「ギルドマスター相手に、あんなに強気で交渉するCランク冒険者なんて初めて見ました……」
「ああ、私もだ。この町の規模なら依頼人と離れていてもどうとでもなると言い切るCランク冒険者なんて、初めて見た」
なんて会話があったことなんてもちろん知らない。
もしも知ったとしても、反省はしなかっただろうけど!
さぁて! おいしい蜂蜜、たくさん採取しに行くぞーっ!
ありがとうございました!




