護衛旅 集落 18 でも野営 ……はトラブルを招くらしい 8
依頼人夫妻の宿泊している宿まで駆け足!
だって、例のパーティーに追いかけて来られたら嫌だから。
走り続けた甲斐があって、彼らを振り切って宿の前までたどり着いたんだけど、
「やあ、おはよう。早起きなのだな」
「‥‥‥‥おはよう。あなたこそ」
なぜか、この町の冒険者ギルドのギルドマスターが宿の前で待っていた。
どうしてこの宿だとわかったのかはあえて聞かない。一応は<ギルドマスター>だからね!
でも、依頼人の宿泊している宿に泊まっていない護衛の私たちを、ギルドのマスターとしてどう思うのか。もしかしてさっきの❝早起き❞というのは皮肉だったのかも? なんて勘ぐっていたのだけど、
「ポーションと造血薬のことで相談がしたい。時間を貰えないだろうか?」
というギルマスに他意はなさそうだ。
後で聞いた話なんだけど、旅の護衛は依頼主と同じ宿に泊まらないことは珍しくないらしい。一応、町の中の宿は安全という認識だから。
❝一応❞というのは、宿だから100%安全という訳ではないから。盗人が出ることもあるし、宿泊人同士のいざこざで怪我人が出ることもあるし、それこそ何かの拍子に死人が出ることもある。
でも、それはイレギュラー。命が狙われている自覚があるならともかく、普通は宿は安全な場所だ。だから護衛が別の宿に泊まることは珍しくない。宿代の問題もあるからね。旅の護衛なら、依頼主が宿代を払う契約が一般的だから、依頼主が護衛たちの宿代をケチって自分が泊まる宿より格下の宿を用意することはよくある話らしい。
まあ、私たちのように、町の外で野宿をするのは珍しいらしいけど。
とりあえず、依頼人夫妻に朝の挨拶をする時間をもらい、今日の予定を確認。
オデッタの、
「時間は有限なのだからさっさと次の集落に移動したいわ! 今日1日もう少し町の様子を見て、特に何もなければ門が閉まる前に出発でどう?」
の意見が採用された。
普通、旅の出発は朝方が多い。少しでも安全に距離を稼ぐ為には当然だよね?
なぜ、明日の朝ではなく今夜なのかと聞くと、
「アリスと従魔たちの護衛なら夜営でもちっとも怖くないんだもん。だったら余計な宿代を、アリスが作ったごはんを買うお金に回したいと思うのは普通でしょ?」
と真顔で返って来た。
(オデッタ、わかってる~!)
(うん、生きたお金の使い方なのにゃ!)
うちのハクとライムもオデッタの意見に賛成だったので、出発は今夜に決定。それまでは各自自由時間となったので、早速宿の玄関で待っているギルマスさんの所へ戻ると、
「アリスさま、おはようございます!」
なぜか頭数が増えていた。
裁判所の職員さんらしいけど……。
ねえ、お二方? 私の依頼人の宿泊場所をどうやって調べているのか、聞いても良いかな!?
もしかして昨日、私たちの後を付けてきてた?
ありがとうございました!
なかなか執筆の時間が思うように取れません……。
ごめんなさい><




