護衛旅 集落 16 でも野営 ……はトラブルを招くらしい 6
ハクに「少しお話しようか?」と声を掛けた途端、
「ぼく、ハクはわるくないとおもうの!」
ハクを庇うようにライムが前に飛び出して来て、
「主さま! ハク兄さまは主さまとわたくし達の評判を守ろうとしてくださったのです! どうぞご寛恕を!」
スレイがハクとライムを庇うように2匹の前に身を横たえ、
「我らは主の従魔であり誇り高きスレイプニル! こやつらごときに軽んじられる謂れはございませぬ! 本来なら我が蹴り殺してやるところですが、主が殺生を好まれぬ故、ハク兄上が穏便に軽い仕置きを与えたまでのこと! 平に、平に……っ」
ニールがスレイの前に立ち、切々と事情と心情を訴える。
………昨夜のニールとスレイに対する彼の行動を、私は軽く受け止め過ぎていたらしい。実害はなかったのだから、あのくらい抗議しておけば十分だろう、と。
ライムからの心話、
(ハクとぼくがハーピーにねらわれたときは、アリスがすっごくおこってくれてうれしかったの)
が届いて、とっさに2頭の顔を見る。
2頭はハクを庇う為に必死な表情を浮かべているので気のせいかもしれないけど、なんだか寂し気な、悲し気な感情を押し殺しているようにも見える………。
……昨夜の彼は人族でハーピーは魔物だから、彼は虚栄心に負けただけでハーピーは実際にハクとライムを獲物認定していたから、彼には彼のパーティーのメンバーがしっかりとお説教してくれていたから、なんて言い訳はできそうにない。
彼の非礼に対して言葉だけの抗議しかしなかった私は、ニールとスレイから愛情を疑われても仕方がないだろうから。
だからもう、ハクの彼に対する行動を咎めることはしない。代わりに、
「ハクはしっかり者のお兄ちゃんで頼もしいね! いつも弟妹のことを考えてくれてありがとう!」
みんなを安心させるように微笑みながらハクにはお礼を。でも、ね?
「でも、一言くらい相談があっても良いんじゃないかな? 私に内緒で行動する必要がどこにあったの?」
ハクの行動に対して責任を取ることになる私としては、一言言っておかないとね? 相談してくれていたら、私も協力するなりもっと違う提案をしたりできたと思うから。
これは彼らも心に疚しさを感じていたらしく、バツの悪い表情になる。
さて、筆頭従魔ちゃん? 少しお話しましょうか!
ハクにももちろん言い分はあった。私にも反省材料は多分にあった。でも、
「ハクのことはこの世界での私の保護者だと思っていつも頼りにしているよ。でも、いくら<神獣>といってもまだ生まれて間もない赤ちゃんでもあるから、私がお母さん(ほごしゃ)のつもりでもいるの。
変則的だけど、私たちは基本は対等なパートナーだと思ってる。でも、今回みたいな行動を取られると、ハクに対する信頼が揺らいじゃうよ?」
報・連・相の大切さをしっかりとお話させてもらう。最近ちょっと、独断での行動が目立つからね?
<従魔>だからとハクのことを頭から押さえつけるつもりはない。でも、ずっと仲良く一緒にいる為に必要な、最低限の報告・連絡・相談の意味を考えてもらいたい。
もちろん、これは私とハクの内緒の話。
ハクの結界の中にもう一つ、こちらからの音を遮断する結界を張ってもらった中での話し合い。
こちらを心配そうに見ているライム、ニール、スレイには悪いけど、お互いに納得がいく話にしたいから時間をかけてゆっくりと話をしている。
………どこからか聞こえる3つのお腹の音は、きっと気のせいだと思ってスルー中。
目の前から聞こえるお腹の音は、真剣な表情で聞こえないフリ!
私のお腹は……、幸い空気を読んで静かなものだ。
さぁて。今日はお互いが納得できるまでお話しようね!
ごはん? ごはんは逃げないから大丈夫だよ!
きっと、多分……。ね?
ありがとうございました!




