護衛旅 集落11 でも野営 ……はトラブルを招くらしい 1
「………5、6、7、8! やっぱり8本ある!! スレイプニルよ!!」
「2頭ともスレイプニルなのか!? すげぇ!」
「っ!? ちょっ! おい、よせよっ!」
「大丈夫だって! へへっ……、ギャアアアッ!!」
(…………愚かな)
………晩ごはんを何にするかを真剣に考えていたのに、男の悲鳴で邪魔をされた。
何が起こったのかと見てみると、ニールとスレイの側で焦げた手を抱えて転がっている男と心配そうに駆け寄る男女の姿があった。
一瞬だけ、ニールとスレイが何かをしたのかと思ったんだけど(もちろん防御的な意味で!)、そういうことではないらしい。
手を焦がした男に駆け寄った女性が、不思議そうにこちら側の空中をペタペタ触っているようなしぐさをするので聞いてみる。
(ハクの防御結界? 今回のは攻撃型なの?)
攻撃する結界ってなんだろうと、自分で行った言葉に首を傾げながら聞いてみると、
(偶然触るだけなら、こっちに近づけないだけのただの結界にゃ。でも悪意があるなら攻撃するのにゃ!)
(悪意があったの?)
(悪意ではなかったけど、無礼はあったのにゃ!)
ハクが冷たい視線で男を眺めながら答えてくれた。
どうやらあの男が勝手にニールとスレイに触ろうとしていたらしい。
……弟妹を可愛がっているハクからしたら、あれくらいの攻撃は仕方がないな。ポーションを使えば十分に治る程度の火傷だし、過剰な攻撃ではなかったと判断してハクを褒める為に小さな頭をなでなでしていると、
「おい、おまえ! なにしやがるんだ!!」
ポーションで治った手で結界をバンバン叩きながら、男が私に向かって怒鳴り出した。
男のパーティーメンバーが慌てて男を止めようとしているので少し様子を見てみることにして、私はハクの頭をなでなでしながらニールとスレイを呼び寄せた。
ライム? ライムもわたしと一緒にハクの背中にすりすりしているよ。ニールとスレイはライムにとっても可愛い弟妹になるからね。2頭を守ったハクに感謝のすりすり中です♪
激昂したまま結界を叩き続ける男の行動に業を煮やしたのか、仲間の男性が男を無理やり振り向かせるといきなりお腹を殴りつける。
苦しそうにお腹を抱えながら今度は仲間の男性に対して憎々し気な視線を投げているけど、それを見た周りのメンバーが次々に男に向かって怒鳴り出す。
「今のはおまえが悪い! 誇り高きスレイプニルの許可を得ずに勝手に触ろうとしたんだから、攻撃されても仕方がないだろう!? まずはスレイプニルとその主に謝れ!!」
「主が側にいるのに許可を求めず、勝手に従魔に触ろうとしたんだから、その主に八つ裂きにされても文句を言える立場じゃないわよ! スレイプニルが火傷で納めてくれたことに感謝しないと!」
「スレイプニルを2頭も従魔にするような主だぞ!? 俺たち全員が処罰の対象になってもおかしくないんだ! まずは謝れ!! 非礼を詫びるんだ!」
……男以外のパーティーメンバーはとりあえず常識的な人たちの様で一安心だ。❝八つ裂き❞とか❝処罰❞とか物騒な単語も聞こえてきたけど、男を諭す為にあえて大袈裟に言っている可能性が高いので、私としてはスルーする。
けど……、なんだか故意に彼を攻撃したと思われているのも後々のことを考えると面倒になりそうなので、
「私の防御結界に引っかかるなんてどれだけの悪意を持っていたの? これ以上絡んでくるつもりなら、朝一番に衛兵に突き出すわよ!」
私たちが故意に攻撃をしたのではなく、元々張っていた結界に引っかかっただけなので、男の怪我はそっちの責任だぞ!と告げておく。
これで大人しくなってくれたらいいんだけどね?
ありがとうございました!




