護衛旅 集落 9 でも野営 1
冒険者ギルドで大量のポーションや薬を買ってもらえたので、ほくほくとあたたかいお財布だけど、
(この宿に素泊まり5,500メレの価値はないのにゃ! 野宿の方が良いのにゃ!)
(ぼくもノジュクのほうがたのしいとおもうな~)
この町の宿にお金を使うのは無駄だと息巻くハクとライムの意見を採用し、今夜は町の外で野営をすることになった。
オデッタとアルフォンソさんの依頼人夫妻は当然町の宿に泊まるから、護衛としてはどうかと思うんだけど、
「アリスさんの【結界魔法】を信じているから大丈夫ですよ」
ハクが張ってくれた、夫妻の部屋に二人以外の侵入を阻む結界魔法があるから大丈夫だと言うアルフォンソさんの言葉に甘える形になった。
とりあえず、門が閉まる直前までは夫妻と一緒に過ごし、閉門する時間になったら外に出て私たちは野営。開門と同時に町に入り、夫妻と合流する流れだ。
夫妻に今日1日の町の印象を聞くと、
「悪くはないけど……、人の流れから見て短期で大金を稼ぐには向いていないと思うの」
「ここで商売をするのなら、ゆっくりと構える必要があるでしょうね。今回の条件には不向きです」
とのことだった。ただし、
「アリスから仕入れさせてもらった魔物素材はどれも結構な値で売れたし、私たちが元々仕入れていた物もちょっとは売れたのよ♪」
行商に寄るには悪くない町のようだ。残念なことに、夫妻が仕入れたいと思う商品はなかったみたいだけどね。
「食事はアリスが作った物の方が良かったなぁ。宿代に夕食と朝食が含まれていたからここで食べるけど!」
オデッタが心底残念そうに言ってくれるので、正直なところ、ちょっと嬉しい。
だけど、
「また、移動を始めたら、嫌でも私の作るごはんになるんだから、今日は宿の料理人の食事を楽しんでね♪」
だったら私のごはんを食べる?なんて間違っても言わないよ。これからの長旅の間、ず~っと私のごはんだと飽きちゃうかもしれないからね!
夫妻から余分な荷物を預かって町の外へ向かう。
夫妻が今日稼いだお金も大部分を商業ギルドの口座に入れたそうだし、どこから見ても身軽な夫妻を襲おうと考える間抜けな盗賊はいないだろうと半分安心、残る半分で夫妻の無事を祈りながら町の外へ出た。
門兵さん達が今から外に出ることを心配して声を掛けてくれたけど、
「この町の宿にはうちの仔を預けられるような馬房がなくて……。門のすぐ前で野営をさせてもらうけど、大丈夫かな?」
と言い訳すると、スレイとニールを見て「ああ、なるほどな」とあっさり納得してくれた。
もちろん、門の真ん前での野営も許可してくれる。急な伝令が来る可能性や、緊急で門を開ける可能性もあるから、少し距離を取っている方が安全だとのアドバイス付きで。
門が閉まってすぐに出て行った私たちは、開門を待つ列の一番初めになる位置にテントを置き、かまどを設置する。
早速調理の準備を始めた私たちの姿を、
「あ~っ! 間に合わなかったか、チクショウ!!」
「だから、採取はほどほどにして戻ろうって言ったのに!!」
閉門の時間に遅れて戻ってきた冒険者たちが、びっくりしたように見ていたけど気にしない。
「もう、食事の準備を始めているなんて、手際が良すぎない? 宿代を浮かす為にこんな所で野営をするほどどの貧乏には見えないんだけど?」
なんて言っていたのも気にしない。
下手な宿に泊まろうとすると、守銭奴のハクが怖いんだ。なんて言えないからね。
黙って、今日のごはんの支度を頑張るの。
さ~て、今夜は何を作ろうかな~?
ありがとうございました!




