護衛旅 集落 6 冒険者ギルドにて 2
今の私の気分は何て言うか……。バーゲンセールの特設会場に破格のお得商品の追加を持ち込んだ販売員さん、かな?
お金を手に握った冒険者たちが私を囲み、
「いくら? 1本いくらなのっ!?」
「何本売ってくれるんだ? できたら3本…、いや、2本でも良い。売ってくれ!」
結構な勢いで迫ってくるからだ。
ハクがとっさに結界を張ってくれたから余裕をもって周りを見ることができるけど、もしもこの結界がなかったら私は混乱の中で立ちすくんでしまったかもしれない。
ポーションは確かにとても便利なものだけど、冒険者たちがここまで興奮するほど貴重な物ではないはずだ。
もしや大量の怪我人でも出ているのかと事情を聞こうとする前に、
「落ち着きなさいっ!! 彼女のポーションは一旦ギルドが買い取る!! その後で彼女から買い取った価格のままギルドが売りに出すことを約束しよう! だから彼女から離れるんだ! 彼女に危害を加える者として、彼女の従魔から攻撃されたいのか!?」
ギルマスが彼らを引き離してくれた。
これで興奮状態の冒険者たちが距離を取ってくれるあたり、なかなか頼りになるギルマスのようだね。
ギルマスから、何本売って貰えるのかと問われたけど、先に事情を聞きたいな。もしも切羽詰まっている状況ならポーションの代わりに【ヒール】の販売も可能だし、ポーションが大量に必要なら、手持ちのポーションを【複製】で増やすことだって可能なんだから。
なのでとりあえず、
「もしかして大量の怪我人がいるの? だったら【回復魔法】の販売もできるわよ?」
と言ってみる。
彼らが仲間の怪我を治したいと思っているのなら、この興奮状態も納得できるからね。でも、ポカンとした表情で、私を見つめた後、
「……回復魔法が使えるのか? しかも大量の怪我人を見れるくらいに魔力も豊富……?」
「!! パーティーに! 俺のパーティーに加入しないかっ!?」
「いや、俺たちの方に! 俺たちのパーティーに入ってくれよ!」
「うちのパーティーはみんなCランクだっ! ランクも釣り合いが取れるし女のメンバーもいるから安心だぞ!」
勧誘合戦が始まったことで、その可能性はほぼ消えた。
みんなが個々にポーションを欲しがっているだけのようだ。だけと言うにはみんなちょっと必死過ぎる感じがするけどね?
なので、
「パーティーには加入しない! ポーションは……、とりあえず100個分くらいの販売を考えていたけど、状況次第で数を増やしてもいいと思ってる! だからまずは事情を聞かせて欲しい!」
ギルマスに向かって大声で叫ぶ。
ギルマス。とりあえず、私を静かなところへ連れて行ってくれないかな?




