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護衛旅 集落 3 冒険者ギルドでのテンプレ、なのかな? 2

 顔色を悪くし、自分のやらかしを悔やむ男性職員。


 自分たちの同僚がやらかしたミスに心配そうに眉を寄せてこちらを見ている職員たち。


 そして、


「あ? おまえが冒険者じゃないなんてことあるわけないだろ! 盗賊を捕まえて来た上に魔物をテイムしている一般人がいてたまるかよ! っ! いてーじゃねーかっ!」


 仲間が掛けてくれたポーションのお陰で怪我から回復した冒険者。余計な口を挟んだせいでせっかく治った頬を仲間に抓られて彼は黙ったけど、


「そ、そうだ! 処分を逃れる為に言い逃れをするんじゃない! さっさとそのアイスボールを片付けろっ! 本当に除名するぞ!」


 男性職員は鬼の首を取ったような得意顔で私に詰め寄る。


 でも、男の得意顔は、


「傭兵、とか?」

「いやいや、傭兵特有の荒んだ雰囲気がないから騎士見習いじゃないか? まだ幼い…若そうだしな!」

「あんたたちどこに目を付けてんの? あの子の履いているロングブーツ、きっと高ランクの魔物素材よ。それに消耗品のブーツにあんなに繊細な花の模様を入れている騎士見習いなんて見たことある? きっと武門の名家のお転婆お嬢さまが、興味本位で護衛の真似事でもしてたのよ! 立ち居振る舞いに品があるし顔も綺麗だし」

「顔は関係ないだろ?」

「いや、あるだろ? 金持ちとか貴族の娘は美人が多いって言うしな」

「……もしかして、すっごい高位の貴族さまのお嬢さまって可能性もあるんじゃないか?」


 ギャラリーと化していたギルド職員や冒険者たちの声を聞いて、再び蒼白になった。


 そうだよね? バイオレンスが得意な職業は冒険者だけじゃないし、もしかすると❝元❞冒険者の可能性やこれから冒険者登録をする❝素人❞って可能性もある。


 見覚えのない人間を❝荒事に慣れていそうで冒険者ギルドに入ってくる人間はみんな冒険者❞なんて決めつけるのは良くないよね! 運良く(?)私は冒険者だけど。


 男性職員も❝決めつけ&思い込み❞の怖さを実感したみたいだし、これでオズヴァルド(ラリマーの冒険者ギルドマスター)から言われていた、❝他のギルドでも態度の悪い職員がいたら教育して欲しい❞という希望は果たせた。 


 あまり盛り上がりすぎると本当のことを言い出しにくくなるので、そろそろこの辺で名乗りを入れようと冒険者証を取り出そうとすると、


「今すぐ彼女に詫びを入れて反省するなら向こう半年分の給料減額20%で許すが、そうでないならもうここにはいなくていい。今すぐに家に帰って二度と顔を見せるな」


 冷たい男性の声が割り込んできた。


 振り返るとヒョロリと背の高い30~40代の神経質そうな男性。両隣にはギルドの職員らしい女性と絡んできた冒険者パーティーのメンバーの1人が控えている。


「ギルマス……、そんな……。だって、こいつは冒険者に違いなく……」


 男性職員が愕然とした声で男性を呼ぶので、彼の正体がわかった。彼がこのギルドのマスターのようだ。どちらかと言うと商業ギルドのマスターと言われたほうがしっくりくる感じだけどね。周りのギルド職員たちの態度から見ても間違いはないだろう。


 お偉いさんも来たことだし、言い出し難くなる前に身元を明かそうと再度冒険者証を取り出そうとすると、


「彼女はアイツに一方的に絡まれた被害者だとの証言がある。アイツのパーティーメンバーからの証言だから信憑性は高いだろう。それに、彼女は今日初めてここに顔を見せたそうだな? 他の職員たちも彼女が冒険者であるとは確認できていないと聞く。なのになぜおまえは事情を確認もせずに彼女が❝問題行動を起こした冒険者❞だと決めつけ、❝除名処分❞まで口にした?」


 またもやギルドマスターの冷たい声が割りこんできた。


 タイミングって難しいな……、と思いながら、ここまで説明されたら男性職員もさすがに反省を見せるだろうと安心していると、


「ギルマスにはあの【アイスボール】が見えませんか!? テイムされている魔物が見えませんか!? あいつは絶対に冒険者なんだ! 罪を逃れようとしている犯罪者をマスターは庇うのですか!?」


 男性職員がギルドマスターに噛みつくように大声を上げた。


 ……確かに冒険者だけどね? しかも冒険者であることを黙っている身だけどね? いきなり❝犯罪者❞扱いはどうなんだろう? と不快に眉を寄せてしまう。


 それはギャラリーしていた冒険者達も同じだったようで、男性職員に冷たい視線を向ける人や「大きな被害もなかったのに、いきなり除名とかってひどくね?」とか「あれくらいのことで犯罪者扱いかよ……。アイツはいつも居丈高な態度が鼻につくヤツだったがいったい何様のつもりなんだ?」なんてひそひそと彼のことを噂する声が聞こえた。


 さすがに自分の分が悪い事に気が付いたらしい男性職員が嫌そうな表情を隠すことなく私に向き直り、多分、詫びの言葉を紡ごうとしたのだろうその瞬間、


「【攻撃魔法】が使える者は全て冒険者なのか? テイムされている魔物を連れている者は全て冒険者なのか? そうではないことは自分でもよくわかっているだろう? それに今問題なのは、彼女が<冒険者>であるか否かではない。

 ……もういい、おまえは以前から問題行動が目に付いていたからな。今日を持って解雇する。キミ、彼の解雇手続きを速やかに行ってくれ」


 ギルドマスターの冷たい声がギルドに響いた。


 え、このタイミングで解雇通達なの? さっき、詫びを入れて反省したら減給20%って言っていなかったっけ?


ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] >……もしかして、すっごい高位の貴族さまのお嬢さまって可能性もあるんじゃないか?  憶測で一番近いのは、これでしょうねぇ(悪い顔)  王族の後ろ盾を持った平民。  ………………平民? うん…
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