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護衛旅 野営 2

ありがとうございました!



 

 私のテントを見学するのは、夫妻が自分たちのテントの設営を終えてから! という条件を出したら夫妻は大急ぎでテントを組み立て始めた。


 旅慣れていない夫妻のことだから手間取るだろうと思っていたのに、案外スムーズに組み立てているから感心する。商家で生まれ育ったアルフォンソさんは経験があってもおかしくないけど、お家がトラットリアのオデッタまでもが野営経験者だとは思えないんだけどな?


 私の視線に気が付いたオデッタは、


「練習したのよ~!」


 ピカピカの笑顔で、自分たちの結婚を認める条件を聞かされてから、旅で必要そうな御者、野営に必要なテントの組み立てなどを必死で覚えたと教えてくれた。


 そんな準備の良い2人に感心しながら、私はテントから少し離れた所に穴を掘る。❝魔法はイメージ!❞と言い切るハクを信じて【アースウォール】を利用しての穴掘り。その際に注意するのは壁の硬さと壁に使う土を使用する場所。


 土壁は一瞬形作るだけですぐに崩れてしまうような脆さを、使う土(=掘る場所)は壁から少し離れた所から。


 イメージ通りの穴の深さとすぐに崩れてしまう脆い土壁を作ることに成功した私は、ハクとライムに褒められてとてもいい気分になりながら壁が崩れて小山になっている土の上に小さなスコップを突き刺すと、インベントリから高さ2メートル、縦横は3メートルほどの木枠を取り出す。掘った穴と山になっている土を囲うように。


 この木枠は商業ギルドの工芸品幹部のカルミネさんにお願いして作ってもらったモノ。簡単な手順で枠の幅を広げたり狭めたりすることができるんだ。工芸品ではないのに快く作ってくれたカルミネさんには感謝だね!


 今回は高さはそのままで縦を1m20㎝、横を1m50㎝ほどに狭めてから、木枠の上と横の3面を帆布で囲う。1面だけは明るいオレンジ色の布を掛けて出来上がり!


「これは何?」


「トイレ」


「トイレっ!?」

 テントを組み終わったオデッタに聞かれて簡潔に応えると、想定外に嬉しそうな大声で聞き返される。野営には必要だよね? トイレ。


「私、今回の旅の間はその辺の繁みがトイレになるって聞いていたから、本当に、本当に、本当にっ! 嬉しいわっ!」


 オデッタが言うように、その辺の繁みで周りを気にしながらするのはもう嫌だもん。


 ついでだから、2人にもトイレの使い方を説明しておく。


 入り口はオレンジ色の布が掛かっている面のみ。用を足し終わったら横に積んでいる土をスコップで掬い、なんとなく形跡が隠れるくらいに埋める。外に出たら……、


「あ、まだ準備してなかったね」


 インベントリから大きい樽を取り出して、その前の土を軽く掘る。水をなみなみと注いで柄杓を置いてから説明の続き。


 樽に入っている水を柄杓で掬ってから手を洗う。その際には今掘った穴の上で水を流すように注意。手を拭く布は用意していないので各自の物を使って欲しい。


 これくらいかな?


 説明を終えると、感極まったような表情のオデッタと少し呆れたような表情のアルフォンソさん。……なんで!?


 通常の旅人たち(商人や冒険者を含む)はトイレ問題には目を瞑る。自然が豊かな世界だからね。その気で探せば至るところにトイレに使えそうな繁みや人目から隠れられる場所はある。


 それでもやっぱり女性として羞恥心を捨てきれない。だから人目を気にしないでできるトイレを用意したことはオデッタを心から喜ばせた。これは理解できる。


 では、どうしてアルフォンソさんが呆れたような表情でこちらを見ていたのか。それは、


「軍や大規模なキャラバンでない限り、トイレを持ち運んだり、即席で用意したりはしないものですよ。こんな少人数でそんな手間をかけていたら、割に合いませんからね。それをアリスさんは何とも容易く……」


 魔法とインベントリを活用してトイレを短時間で作ったことに対する、とっても遠回りな称賛の表現の仕方だった。……違う感情も混ざっていたようだけど、もう面倒だから気にしないことにしたんだ。


 ちなみに、軍や大規模なキャラバンはトイレを持ち運んだり即席で用意する(穴を掘る)ことがあるらしい。陶器で作った壺の中や掘った穴の中にスライムを入れて使うらしいんだけど……。


 私にはちょっと無理かな? 今後も地道にトイレ設置を頑張るつもり♪


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