ビジューとおしゃべり 1
インベントリの中で、きちんと分けられている盗賊たちの装備品。
インベントリに放り込んだら、まとめて❝盗賊たちの装備品❞になるかと思っていたんだけどね? リストを見ると❝盗賊たちの戦利品(アルフォンソ夫妻の取り分2割)❞❝盗賊たちの戦利品(アルフォンソ夫妻の取り分3割)❞となっていて、インベントリ機能の便利さに改めて感心する。
こんな便利な機能を付けてくれたビジューに感謝しないとね!とハクに心話で話しかけると、
(だったら、感謝の祈りを捧げるのにゃ!)
嬉しそうに提案された。
従魔部屋から出てきたライムも嬉しそうに賛成するのでさっそく空に向かって感謝を捧げようとすると、ハクがゆっくりと首を横に振る。
(空じゃないのにゃ!)
(ビジューさまのゾウをだしてほしいの!)
以前ヴァレンテ君に彫ってもらったビジュー像に向かって祈りを捧げたいらしい。
なぜか、私の中で❝ビジュー像は部屋の中に安置するもの。祈り(お礼や報告)は眠りに就く前❞という意識があったんだけど、せっかく手軽な大きさのビジュー像を彫ってもらったんだから、祈りの場所や時間に拘る必要なんてないんだよ。
なので、即席でビジュー像の為の場所を作る。ちょっと悩んだんだけど、テーブルセットを取り出してテーブルの真ん中に綺麗な布を敷いてからビジュー像を置き、私たちはそれぞれの椅子に席に座ってビジューを囲む形になった。
(主。小童から献上された主や我らの像も一緒に置いてくだされ)
ニールの希望により、街を出る時にヴァレンテくんがプレゼントしてくれた私たちの像も、ビジューを囲むように配置する。
(う~ん……?)
配置が気に入らなかったらしいライムがビジュー像と対面するように私の像を置き、2体を囲むようにハク、ライム、ニール、スレイの像の4体を置き直した。
ハク達も満足そうに頷いているので、これで準備は完了だ。
依頼人夫妻に少しだけ祈りの時間を取ることを告げて席に座ると、
「あの……、よろしければ、私たちも一緒に祈らせていただけませんか?」
「教会で見たのとは違うけど、ビジュー神さまの像よね? なんか神々しいもの……。私もお祈りしたいわ」
2人も一緒に祈りたいとのことだった。
もちろん断る理由なんてない。
2人の分の椅子を取り出して並べると、嬉しそうに席について手を組み合わせるので、私たちもそれぞれがそれぞれの思う形でビジューに対して祈りを捧げる。
ビジューのくれた能力のお陰で無事に生きていること、今回は特に、インベントリの便利機能についての感謝を伝えたくて祈りを捧げていると、一足早く祈りを終えた依頼人夫妻がテーブルから少し離れてひそひそと話をしているのに気が付いた。私たちの祈りを邪魔しないように配慮してくれているようなので、気にせずそのまま祈り続ける。
だから、2人がテーブルの上の像を見ながら、
「こちらのビジュー神さまのお姿って、アリスと似てるわよね?」
「ああ。よく似ている。だがちゃんと別人だとわかるあたり、彫師の腕がいいんだろうな」
「ねえ? 私の目には❝女神と聖女と聖獣たち❞にしか見えないんだけど……」
「ああ。私の目にも❝女神と聖女と聖獣たち❞の像にしか見えないよ。大丈夫だ」
なんて話をしているのは聞こえなかった。
聞こえていたらちゃんと、女神と祈りを捧げる一般人とその従魔(神獣を含んでいることは内緒)だって強調して言ったんだけどね? ああ、何が❝大丈夫❞なのかも聞いてみたかったかも?
ありがとうございました!




