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和解&依頼人夫妻のアルバイト 1

「ぐすっ…、ぐすん‥‥」

 ❝トン、トン、トン、トン❞


「ズズ…、ズーッ」

 ❝ショリショリ……、ショリショリショリショリ‥‥❞


 鼻と口を布で縛り、涙を溢しながらもひたすら手を動かし続ける依頼人夫妻。


「……アルフォンソ? 目は開けていないと危ないわよ」


「ああ、わかってはいるが……」


 オデッタに注意されて無理やり目を開いたけどすぐにまた閉じてしまったアルフォンソさんは、置いてあった桶の水で手を洗い、近くの木の陰に隠れてはなをかんでいる。


「アリスさん、すみません」

「はい、【クリーン】」


「アリス、私にも…」

「はい、どうぞ。【クリーン】」


 ただいま依頼人夫妻は調理補助のアルバイト中。詳しく言うと、オデッタは玉ねぎのみじん切りを、アルフォンソさんは玉ねぎをすりおろしている所だ。


 2人とも玉ねぎが目に沁みる体質のようでとても辛そうなので、他の仕事を回すから玉ねぎはもうやめても良いと言ったんだけど、


「いいえ。無意識とはいえ商売……、物の売買で稼ぐことに拘わりアリスさんに無理を言ったのが間違いだったんです。こうやってアルバイトをさせていただけると、前もって言っていただいていたのに……」


 涙を流しながらも手を休めることはない。手元の玉ねぎを処理し終わると次を求めて山のように積まれた玉ねぎに手を伸ばす。


 ……正直に言う。


 別に玉ねぎ以外の食材でも良かったんだ。すりおろした生姜も大量に欲しいし、挽肉も大量に欲しい。なんなら玉ねぎ以外の野菜を調理の方法に合わせてカットしてもらうだけでも私は大助かりなんだけど……、魔が差した。俗に言う❝仕返し❞の気持ちがあったことを否定できない自分がいる。


 だから反省して未処理の玉ねぎをインベントリに仕舞おうとしたんだけど、


(だめにゃにょにゃ……)


 目をショボショボさせたハクに止められる。……私が玉ねぎを調理するときにはいつも風上に避難しているハクが、なぜか依頼人夫妻の風下に陣取ったまま私が玉ねぎの手を伸ばそうとするたびに止めるんだ。


 これって、やっぱりアレだよね? 自ら罰を受けに行ってるよね? 


 ボロボロと涙を溢している2人と1匹の姿は見ている方が申し訳なくなるんだけど……。


「そっか…。アルフォンソさん。今手にしている玉ねぎをすりおろし終わったら、次からはスライスをお願いしますね」

 今回のこと(心を削った蜘蛛退治)を水に流す為に必要なことだと思い、出した玉ねぎ全て処理してもらうことにした。


 ライム? ライムは玉ねぎが沁みないみたいで元気に皮や根の部分を消化してくれている。


 ぼくだけ平気でごめんね?なんてことをこっそりとハクに言っていたみたいだから、これが終わったら、ちゃんと反省の気持ちは伝わっていることを言ってあげないとね。


 涙でボロボロの依頼人夫妻には、アルバイト代にほんの少しだけ色を付けることで、気持ちが伝わるといいな。


 ハク? ハクは……、どうしよう? あとで思う存分にもふり倒すことで和解にしようかな?


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