表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

693/763

ラリマー出発の朝 3

 見送りに来てくれたそれぞれに立場の違う皆さんが、口を揃えて言ったこと。それは、


 ❝使える権力があるなら、遠慮なく使え❞


 だった。


 借り物の権力を多用して、トラブルを生むのも巻き込まれるのも嫌だと答えたら、


 ❝アリスは最初から権力を使って行動した方がトラブルが減る❞


 と言われて、膝を地に付きそうになる。人をトラブルメーカーみたいに言うのはやめて欲しい。ハクとライムが❝我が意を得たり!❞とばかりに頷いているけど、意味がワカリマセン。


 でも、まあ、とりあえず。この場は頷いておこうと思ったのが表情に出ていたのか、


「<信認証>をアイテムボックスの中で腐らせるんじゃないぞ」


 冒険者ギルドマスター(オズヴァルド)から釘を刺されてしまった。それを聞いたネストレさんは機嫌が良さそうに、


「<信認証>? 冒険者ギルドもなかなかやるではないか!」


 オズヴァルドの背中をバンバンと叩きながら「見直したぞ」なんて言っているし、総支配人さんもライモンドさんもなにやら満足そうに頷いている。


 いらなかったんだけどな……。なんて内心を隠しながら苦笑いしていると、


「はははっ! アリスさんは重荷に感じているようだが、なに、別に使わなければならないものではないから気楽に貰っておけばいい。アイテムボックスの隅にでも放り込んでおけば、邪魔にはならないだろう?」


 衛兵部隊長さんがおかしそうに笑いながら、私の肩を柔らかく叩き、


「困りごとが起こった時に使える切り(カード)の1枚として、頭の片隅に入れておけばいいんだ。その様子だと無理やりに押し付けられたのだろう? 何の責任も義務も感じなくていいからな! 気楽~に貰っておけばいい」


 力強く断言してくれる。


 そう、<信認証>を受け入れると同時に発生する❝責任❞と❝義務❞。


 冒険者ギルドマスターたちの信頼の証である<信認証>を手にするなら、それに見合うだけの振る舞いをしなければならない。私を信頼すると公言してくれた保証人(ギルドマスター)たちに恥をかかせるわけにはいかないからね。


 それからサブマスに言われていた、居丈高な振る舞いをするギルド職員に遭遇したら❝説教❞して欲しいとの言葉。


 この2点がネックになっていたんだけど、隊長さんが重ねて言ってくれた、

「押し付けられたものに、責任も義務も感じる必要はないさ。 それを用意したヤツの思いを気持ちよく受け取って、ガンガン利用し尽くしてやれ! 用意した側からすればそれが本望ってものだ」

 の発言に頷く皆さんを見て、肩の力が抜けた気がする。

 信認証から責任と義務を引いたら残るのは、保証人になってくれた人たちからの優しい思いやりだけ。困った時には遠慮なく頼らせてもらおう♪


 みなさんとの別れを惜しんでいる間にも、街を出る為の列は順調に進んでいた。


 賢いスレイとニールは私や筆頭従魔(ハク)がいなくてもきちんと前に進んでくれているけど、依頼人夫妻と距離が離れるのはあまり良くないかも?と思い、私たちも少し前の方へ移動をすると、


「依頼人の何倍も豪華な馬車で来る冒険者ってなんだよ~。まだ駆け出しなんだろう? 金持ちの道楽冒険者ってヤツなのか?」


「駆け出しでも腕利きってギルドでは評判だったわよ?」

「金持ちの道楽でも腕がいいなら、まあ……」

 なんて会話が聞こえてくる。……タイミングが悪かったらしい。

 まあ、依頼人夫妻のお友達からすれば、護衛が私と従魔たちだけっていうのは不安だろうし、幸いにも依頼人夫妻はお友達の発言で不安になる様子もないから良いけどね。


 と思っていると、ディアーナがスタスタと彼らに近づいて行き、


「お話し中に失礼します。冒険者ギルドのディアーナと申しますが、少しだけよろしいかしら?」


 とてもイイ笑顔で彼らに話しかけた。

ありがとうございました!


なかなか街から出られません……。

が、次話では街から出ているはず!(自分を追い込んでみる……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ