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出発前の下準備 7

「きっと役に立つ」


「……ありがとう」


 ギルマス(オズヴァルド)が満足そうに差し出した<信認証>。役に立つような場面がないことを願いながら受け取り、インベントリにしまい込む。


 もう、受け取らないという選択肢がなかったのだから仕方がない。オスカーさんに経費分を返すのも諦めた。オスカーさんの功績に泥を塗るわけにはいかないからね。


 だから、推薦人たちの気持ちはありがたく受け取って、今後信認証の出番が来ないように自分の行動に気を付けるだけだ。 態度の悪いギルド職員? そんなの、私に被害がないなら放置するに決まってる。


「じゃあね。……お世話になりました」

「にゃん!」

「ぷきゅ!」


 一応、別れの挨拶をしてギルマス室を後にする。


 出会いは最悪だったオズヴァルドだけど、実際は悪い人じゃあなかったね。今後も第一印象だけで人を判断しないように気を付けよう。












 依頼人夫妻の家のドアを叩こうとするのと同時にドアが開き、中から泣きはらした目の男の子が出て来た。


 私もびっくりしたけど彼も随分と驚いたようで、しばらく見つめ合ってしまう。それは、


「どうしたんだ?」

「あら、アリスさん!」


 玄関で固まっている男の子を不審に思った依頼人夫妻が、様子を見に来るまで続いた。


 男の子は依頼人の年の離れた弟くんで、まだ9歳とのことだった。アルフォンソさんが期限内に約束のお金を稼げなかった時には、彼が跡取りになるらしいけど……、


「にいさま! ねえさま! 絶対に、絶対に戻って来てくださいね! 家を継ぐのは兄さまですからね! 兄さまとねえさまにビジュー神の加護がありますように!」


 お付きの人に抱えられるようにしながら帰っていく様子を見ると兄弟仲はすこぶる良い上に、今のところ彼には跡を継ぐ意思はないようだ。


 苦笑しながら、


「ああ! おまえの自由を奪ったりしないから、安心して勉強してろ!」


 と返すアルフォンソさんの視線は、弟が可愛くて仕方がないと語っていた。


 ……年の離れた弟が可愛いのはどこの家庭でも同じようで、とっても親しみを感じてしまったよ。











「日持ちのする食料?」


「ええ。噂でアリスさんが開発された携帯食がたいそう美味な上に、日持ちが良いと聞きましたので、譲っていただけたら、と」


 旅の準備の為に訪れた、依頼人宅。


 荷物を預かりに来たつもりだったのに、一番最初に言われたのは、携帯食を売って欲しいとのことだった。


 旅の間の食事は私が用意することになっているはずだけど?と小首を傾げて見ると、


「アリスさん達の実力を疑う訳ではありませんが、何らかの事情ではぐれてしまった時の為の用心に」


 と苦笑されてしまって、自分の認識の甘さを再確認してしまう。


 そうだよね。旅の間は魔物や盗賊などに襲われたりする可能性が高いんだから、❝万が一❞を想定しておくのが当然なんだ。


 従魔(ハク)たちがいれば大丈夫。という思いから、はぐれた時に対する備えが全くできていなかった。


 今回の旅は、この夫妻から教わることが本当に多そうだ。


 気を引き締めながらインベントリを開くと、


「一食いくらなの? さっそく食べてみたいから、少し多めに欲しいんだけど!」


 オデッタがワクワクしたような表情を隠さずに聞いてくる。


「旅の間ならおかわり込みで無料だけど、今譲るなら、少しお高くなるよ? それに、あくまでも携帯食だから、街にいる今食べてもおいしくないかも?」


 と言ってもその表情は変わらず、


「食べたことのある人たちが、とっても美味しかったって嬉しそうに話していたの!」


 家の中から深皿とフォークを持ってくる。


 これはアレだね。旅の準備にかこつけて、食いしん坊さんの血が騒いじゃってるよね?


 なんだかうちの従魔たちに通じるものを感じてしまい、さっきの反省で少しだけ張っていた肩の力が抜けていくのを感じる。


 今回の護衛依頼の旅は、思った以上に楽しい旅になりそうだ!


ありがとうございました!


短くて、ごめんなさい……。

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