お引越し準備 22
「俺らはいいぞ」
その場の勢い交じりで言ってしまった❝お引越しは明後日出発でどう?❞発言は意外なことに、護衛組にあっさりと受け入れられた。
まあ、急な発言だったから、驚き、呆れられた後に、だけどね。苦笑交じりの「大所帯での移動だってわかってるか?」は、バルさんのパーティーのリーダーさんの言だ。
……うん。もっと早くに日程を告知しておくべきだったよね。特に、ミネルヴァさんや子供たちには、お別れの挨拶をする相手もいるだろうし。
反省しながら、いつ頃の出発が妥当かと考え始めると、アルバロがあっさりと❝自分たちはそれでいい❞と言ったので驚いた。
アルバロたちのような上位ランクの冒険者(イザックやリベラトーレさんを含む)は緊急依頼を受けるケースも多いので急な出発には慣れているし、バルさんのパーティーは全員独身でパーティーハウスに住んでいるので身軽だと。ルシアンさんも今はミネルヴァ家の子守&護衛が仕事(依頼主は私)なので問題はないとのこと。
なので、あとはミネルヴァ家のみんなと、他の孤児院から一緒に移住してくれる子供たちの都合なんだけど……。
バルさん達が子供たち用に買ってくれたお菓子を持ってミネルヴァに相談に行くと、
「ここを引き払う準備はほとんどできているのですが……。お別れのご挨拶に伺いたい所もありますし、各院に連絡をして子供たちを集めるのにも時間が必要かと思いますので、明々後日の出発ではいかがでしょう?」
頬に手を当てて1日日延べすることを提案してくれた。
もちろん私に異論はなく、護衛組からお菓子を貰って喜んでいる子供たちも特に不満はないようだ。
クリスピーノ君とベニアミーナちゃんは「ギルドに連絡して、よく依頼をくれてたおじさん・おばさんたちに挨拶に行って……。他所からくる子供たちの部屋は用意できてる?」慌ただしく年長さん達と打ち合わせを始めたけど、私と視線が合うとニカッと笑ってサムズアップをしてくれたので問題はないらしい。
と、いうことで。
お引越しは明々後日の朝の出発で決定!
私も急いで準備しないとね!
お引越しに使う馬車はレンタルじゃなくて買い取りにした。初めはリベラトーレさんが戻ってくるときに返すつもりだったんだけどね。その為にだけに御者を何人も雇うのもバカにならない出費だし、ネフ村で使うこともあるだろうから、買い取ることにしたんだ。
……馬車と馬車を牽くロバさんの費用はなかなかな額になったけどね。馬車8台ロバ16頭の代金が、私が作ってもらった馬車2台分よりも安かったからかハクも文句は言わなかった。
元々荷物の多くないミネルヴァ家だったから、荷造りは護衛組に手伝ってもらうとアッという間に終わる。荷物積んだ馬車を庭に置いておくのも不用心なので私のインベントリに預かると、恒例の❝パーティーの勧誘❞が始まったけど気にしない。
それなりにお付き合いのあるアルバロたちは、私がソロ活動希望だって理解してくれているからね。楽しいノリだと判断して受け流しても、残念そうに笑いながら許してくれる。
お別れの挨拶を済ませて戻ってきた子供たちは、家の中がガランとしていることを寂しがるかと思っていたら、荷物がなくなって広々としている部屋の中を護衛組を巻き込んで走り回っていた。まだこの家を出て行く実感がないんだと思うけど、寂しがって泣かれなかったことにほっとした。
子供たちを寂しがらせないように、全力で相手をしてくれている護衛組には感謝だね!
旅の間の食料は、イザックのリクエストで即席麺を大量に用意した。❝贅沢過ぎず、楽しく美味しい、理想の旅ごはん❞だそうだ。お引越しの旅に過度の贅沢は不要!と力説されたから、ドライアップルなんかも贅沢品かな?と聞いたら「「「「「必要な贅沢だ!」」」」」と力説されたので、ドライフルーツなども大量に用意した。
基準がイマイチわからないんだけど、まあ、旅慣れたみんなの意見を元に色々と用意したから大丈夫だろう。
各孤児院からの子供たちが到着した今夜は、みんながこの街で過ごす最後の夜になる。
ミネルヴァさんや年長さん達と相談して、今夜だけはちょっと贅沢なごはんを食べることにした。
旅立ちの前だからね。楽しく英気を養わないと♪
ありがとうございました!




