お引越し準備 16
全ての素材に<クリーン>を掛けた麻痺薬は、既存の麻痺薬の改良版として登録申請をすることになった。
だけでなく。
今まで登録申請をしていたポーションや解毒薬、造血薬なども全て改良版として登録が決まったらしい。
だけでなく。
(もう、今ある薬の素材全てに【クリーン】を掛けて作ってできるものは全て改良版として登録申請しておくのにゃ!)
とのハクからの助言をそのまま商業ギルドマスターに伝えると、
「やっと、やっと、言ってくださいましたな! その言葉をお待ちしておりました!!」
ネストレさんとラファエルさんがハイタッチをしながら喜びを表してくれた。
❝全ての素材を【クリーン】することで、既存の薬がランクアップする❞と彼らはとっくに気が付いていたけど、ギルド職員としての立場上、口にすることができなかったらしい(このまま一定期間放って置くと、<商業ギルド>としての登録になる所だったんだって! それなのにこんなに喜んでくれる2人は、人が良すぎる気がしない? ありがたいよね!)。
私が、実際に自分が作った薬以外を登録することに思い至らなかったせいで、2人(と一部の職員さんは)随分と気を揉んでいたようだ。……水やミルクをクリーンするとおいしくて日持ちするようになるってことは情報登録していたのにね? 自分でもどうして気が付かなかったのかわからないよ……。
余談だけど、全ての料理に使う水もクリーンを掛けた浄化水だと一段とおいしくなるんだけど、このことは情報としての価値はないらしい。まあ、当然だよね。料理は素材が変わればそのまま味に出るなんて、常識だもん。
とりあえずはこれで、今後【クリーン】を使って改良される薬の利益が私に入ってくることになった。気が付いてくれたハクに感謝しないとね! 本当に、よく気の付く頼もしい従魔だよ♪
これだけでも今日の成果としては十分な気がしたんだけど、
「劣化しにくいとは具体的にどれくらいの期間なのです!?」
「えっと、ある条件の下なら3年くらいは大丈夫だって」
「3年間も!! ある条件とは!?」
「雑菌を死滅させた清潔なビンなどに入れて密封状態にした上で、直射日光を防いだ状態。その上で温度と湿度が低い場所で保管すると5年は大丈夫みたい。今は透明だけど劣化すると濁るみたいだからわかりやすいね」
「素晴らしい! なんと素晴らしいんだ!! 5年間も日持ちするなら、極桃を使うことで跳ね上がる販売価格を少し抑えることができる!」
「あ、極桃1個分で50個の薬ができるよ」
「す、素晴らしい! アリスさまはやはり聖女!……は、お嫌でしたね? ああっ、何とお呼びすれば!!」
「普通にアリスで……」
作ったばかりの<痛み止め>は、私が思った以上の高い価値になるようだ。
ネストレさんの質問に、【鑑定】を駆使して答えた甲斐があったよ♪
今回の金策アイテムは<痛み止め>で決まりだね! さっそく量産しなくっちゃ♪
ありがとうございました!




