お引越し準備 13
やっぱりと言うかなんと言うか……、最終的には1本100,000メレを越えてしまった<造血薬>。
でも、購入希望数は5本で良いとのことだったので、金欠冒険者さんに売ってもらうつもりだった50本の内45本が売れ残ってしまうことになる。
それはあまり嬉しくないな、と眉間にしわを寄せていると、金欠冒険者さんはハリセンを思い切りテーブルに打ち付けて大きな音を立て、
「おっしゃっ! 今回はこれで打ち止めだ! 預かっているのが50本、最高落札者が5本だから、1人5本を限度として……。1、2、3…、4……、5、5番は確かあのねえちゃんだったな。希望価格は85,000だったか……?
なあ、アリスさん! 預かっている造血薬50本だが、1本83,000メレで売ってもいいか?」
みんなの注目が集まっていることを微塵も気にした様子もなく1人ぶつぶつと何かを呟いていたかと思ったら、なぜか落札価格よりも低く値段を抑えることの了承を私に求めた。
もともとそんな高額で売るつもりはなかったので、もちろん了承する。1本83,000メレなら5本で415,000メレ。今回は随分と高額商品になったもんだ。と考えていると。
「アリスさんの承認も取れたから、今回の造血薬は1本83,000で1人5本までの販売だ! まずは105,000の値を付けたあんちゃんから。ほい、5本で415,000メレな! で…、次は最後まで競り合ってたあんたは、4本? 332,000メレな! 次が……、89,000メレで降りた衛兵のにいさんは? 5本? 415,000メレな!」
金欠冒険者さんは高額を付けてくれた人から順に次々と指名しながら造血薬を売り捌いていく。そして、85,000メレで降りた女性冒険者さんへの販売を終わらせるとニヤリと笑って、
「残りの22本は早い者勝ちだ! 1本に83,000メレを出す覚悟が決まったヤツからテーブルの前に並んでくれ!」
83,000メレ以下の時にオークションを降りた人たちに、購入の意思確認をする。
当然、誰も並ばないだろうと思っていたんだけど……。
「どけよ、俺が先だ! 1本だ!」
「あたしの方があんたよりも高額を付けてたわ! あたしが先よ! あたしも1本ね!」
「❝早い者勝ち❞ってんだから、次は俺だろ? 後ろから蹴るんじゃねぇよ! 俺には2本くれ!」
一瞬でテーブル前に列ができた。
………なんで?
金欠冒険者さんのお陰で50本の造血薬は全て完売。4,150,000メレの儲けだ。お礼として約束していた3本の造血薬を進呈すると、
「へへっ! 短時間で249,000メレ分の造血薬が手に入る最高の仕事だったぜ! 本当にありがとうなっ! これで不足なく、安心して森へ稼ぎに行ける!」
金欠冒険者さん改め意欲に燃える冒険者さんは、走ってギルドを出て行った。
単独で森へ行くのかな? いってらっしゃい! 頑張ってね~っ!!
……造血薬。ジャスパーで私が決めた販売価格は1本15,000メレ。今はまだ手に入りにくい状況とはいえ、ぼったくりにも程があると思うんだけど。まあ、金欠中の私にはありがたい話だったということで。金欠仲間の冒険者さんの無事を祈っておこう。いっぱい稼いで元気に戻ってきますように!
「【ウインドカッター】! 【アースシェイク】! ライム、後はお願いね♪」
「ぷきゃ~♪(まかせて~♪)」
ウインドカッターで地面の上に出ている部分をカットして、アースシェイクで根っこを掘り出す。そうしたら後はライムが頑張って【消化吸収】してくれるのを見ているだけの簡単なお仕事、❝庭の草むしり❞はお終い。後は建物全体に【クリーン】を掛けて回ったら依頼は終了。
たったこれだけで350,000メレになるのだから、不動産関係の仕事はオイシイ♪ この仕事を紹介してくれた商業ギルドとラファエルさんには感謝だね!
ジャスパー(まえのまち)でやったことを食品部門幹部が知っていたことにはびっくりだったけどね。管轄外なのにさすがはデキる幹部さんだ。
それから次は、
「【ドライ】、【アースウォール】、【クリーン】、【インベントリ(アイテムボックス)】! よし、終わり!」
現場付近の複数の商会が共同依頼主になっている❝ドブさらい❞。
こんな仕事まで<冒険者ギルド>に依頼されるんだから、冒険者ギルドが受け付けている依頼の幅には驚かされる。こういう仕事は本来Gランクの子たち向けなんだけど、今回は範囲が広くて子供たちだと時間がかかりすぎるということで、ディアーナが私に紹介してくれた。「アリスだったら簡単な依頼でしょ?」って軽~く言ってね。
うん、簡単だったね! 後は街の外に出た時に、綺麗になった元ヘドロを捨てるだけ。
その為っていう訳ではないんだけど、街の外での討伐&採取依頼もしっかり受けている。スレイとニールを迎えに行ったら早速外へ!
今日中に終わらせて戻って来たいから、大急ぎだよ!
ありがとうございました!




