お引越し準備 10
Oyajiさまより素敵なレビューをいただきました。
ありがとうございました!
<組紐>に関する私の権利を守る為にミネルヴァ家の子供たちが立ててくれた<沈黙の誓い>。
ベニアミーナちゃんを始め年長さんたちは、護衛組のみんなにも<誓い>を立ててもらうのが当然だと思っているらしい。
早くから護衛をしてもらうことが決まっていたルシアンさんやイザック達にはそんなことを言わなかったのに、どうしたんだろう?
どうして今になってそんなことを言い出したのかと聞いてみると、ルシアンさんは元々ネフ村の住人で村の主要メンバーの家族でいつかは村に戻ると公言していること。イザックやマッシモはネフ村に移住することが決まっているから、不要だと思っていたと話してくれる。誓いには多額の費用が掛かることも考慮してくれたみたいだ。
でも、今回限りのお付き合いになる他の護衛組は話が別だと。
旅の間も組紐の制作を行うことと、今回の護衛が子供たちの世話役を兼ねていることを理解していて、子供たちの側で組紐の制作過程を目にする機会が多いのだから、依頼終了後にポロっと口外しないように手を打つのが<秘匿登録者>の義務だとベニアミーナちゃんは言う。けれど……。
「<冒険者>たちには❝守秘義務❞があるのだから、わざわざ<誓い>を立ててもらう必要はないんじゃないかな?」
駆け出しの下位冒険者ならまだしも、アルバロやマルタたちには上位ランク冒険者としての誇りもあるしね。不要だろうと笑ってみせると、
「「アリスさんは甘いんです!」」
声を揃えたべニアミーナちゃんとクリスピーノ君に叱られる羽目になってしまった。その上、
「もしも家族が人質に取られでもして、秘密を話すように強要されたらどうするんだ!」
「普段なら絶対にしゃべったりしないけど、もしもお酒の勢いで❝つい、うっかり❞なんてことになったらどうすんの!?」
「俺が悪酔いしてアリスちゃんに絡んだことを忘れちまったのか!? 俺は酒癖が悪いんだぞ!?」
アルバロとマルタにまで叱られてしまった。バルさんまで変な自己申告をして私に❝俺を信じるな!❞とアピールしている。
……パーティーのメンバーみんなに頷かれているのがバルさんクオリティってやつかな? と苦笑を漏らすと、
「知っているだろうが俺たちはリーダー以外あまり酒癖が良くないんだ。なんていうか、悪ノリしたり調子に乗っちまう所があったりしてだな……」
バルさんと同じパーティーメンバーの自己申告パート2が始まった。確かに、初対面の時のことを思い出すと否定できないのが辛い所だね。リーダーさんには申し訳なさそうな困り顔で頷かれて、
「<誓い>には高額の費用が掛かるから俺たちから言える事じゃないが……。今後のことを考えるなら、護衛たちにも沈黙の誓いを立てさせた方が双方にとって安全だと思う。……依頼料の値下げには応じるつもりだ」
とまで言われたら、大人しく頷くしかないよね?
……全員分の費用が問題だけどね。
馬車にハンモック用のフックを取り付ける為に留守にしていたルシアンさんたちが戻って来て年長さんたちから話を聞くと、
「それなら俺たちにも<誓い>を受けさせてくれ!」
イザックとマッシモが声を揃えて、年長さんたちの意見に賛成した。ついでにマッシモの家族とリベラトーレさんにも受けさせるべきだと言い出し、
「俺にも必要だと思う。 父さんや姉さんとは違って、俺は村の外で冒険者ランクを上げなきゃならないからな」
ルシアンさんまで自分にも必要だと言い出した。
そこまで私の権利のことを大切に考えてくれることが嬉しいし、ハクにも、自分の権利を守ることが、子供たちの生活やネフ村を守ることにつながるのだということをきっちり理解するようにとお説教を受けてしまったので、諦めて護衛のみんなにも(もちろん移住組にも)誓いを立ててもらうことにしたんだけど。
掛かる費用のことを考えると正直頭が痛くなり………。
そのことに気づいたルシアンさんから「誓いの費用を村で出すように連絡しようか?」と言われて、とっさに「大丈夫! 何とかなるから!」と言ってしまった手前、早急に何とかする必要ができてしまい……。
頭痛がひどくなった気がするよ。
だって、私の収入につながることでマルゴさん達に負担をお願いするのはおかしいし、早く工面しないと「モレーノに言えば、喜んでお金を送ってくるのにゃ!」なんて唆してくるうちの可愛い保護者が何をしでかすかわからない。
この世界に来てから、日本にいた頃には考えられないほどの大金を手にしているはずなのに、結構な頻度で金策に追われている気がするのは……。
きっと、気のせいだよね?
ありがとうございました!




