お引越し準備。の準備 20
明けましておめでとうございます♪
本年もどうぞよろしくお願いいたします!
「みゅ~、みゅ~……」
「きゅぷ~、きゅぷ~……」
満足するまでかき氷をおかわりしたハクとライムは高いびき…というには可愛らしい寝息を立てながらおやすみ中だ。
この部屋の中でならどれだけ物音を立ててもぴくりともしない2匹だけど、
「……どこへ行くのにゃ?」
私が部屋のドアに手を掛けるだけで、ハクは起きてしまう。
こんな時、やっぱりハクは私の❝守護獣❞なんだなぁ、と頼もしく思う一方で、ハクに休息の時間はあるのかな?と不安になったりもする。
ビジューから与えられたお仕事とはいえ、私の護衛はハクから熟睡の権利すら奪ってしまうのかと申し訳なく思っていると、
「離れると寂しいから側にいるのにゃ~……」
寝ぼけた声で可愛らしい文句を言ってくれる。
本当はそんな可愛らしい理由じゃないと思うんだけど、
「うん。じゃあ、ここにいるね? 何か作業を始めるからうるさくなるかもしれないけど大丈夫?」
ハクのちっちゃくてまあるい頭をゆっくりと撫でながら、部屋から出ないことを約束すると、
「起きたらごはんなのにゃあ」
小さく呟くように言って目を閉じた。
……うん。いつも私を守ってくれているハクにいっぱいの感謝の気持ちを込めておいしいごはんを用意するから、今はライムと一緒に休んでいてね!
……ハクとライムに何か新作料理を!と意気込んでインベントリリストを開いたまではよかったんだけど、最近は新しい食材の仕入れをしていなかったので何を作るか悩んでしまう。
小麦粉が大量にあるからうどんでも打とうかな?
うどんを打つ時に部屋に粉が舞うといけないので、作業にはコネクティングルームの方が都合がいい。コネクティングルームなら移動しても大丈夫かな? 続き部屋はアウト?セーフ? 内心でヒヤヒヤしながらゆっくりこ~っそり移動してみる。
部屋の中の移動はOK。ドアノブに手を掛けても静止の声は聞こえない。ゆ~っくりとドアノブを回しても大丈夫。静か~にドアを開けながらハクの様子をうかがっても、……ハクの寝息は乱れない!
どうやら続き部屋はセーフらしい。一安心だ♪
突然うどんを打つんだ!なんて思っても、当然道具類は何もない。
なので、食塩水を作るのは小さいお鍋。小麦粉を食塩水と合わせたり、捏ねたり、ねかせるのは大きなお鍋の出番になる。
私が一度に打てるのは300gが限界だ。流威と私の2人分が300g。この分量でしか経験がないから無理はしない。ハクとライムにとってはおやつにもならない量だけどね。今回は味見ということで。2匹が気に入ってくれたなら、今度改めて作って大量に【複製】すればいい。
生地をねかせている間に、干しシイタケの戻し汁を使ってうどん出汁を作る。醤油とお酒(シルヴァーノさんのお陰で手に入れたお高い日本酒! もったいないけど仕方ない!)とみりん(持っていないと思っていたのに、インベントリを見直してみたらあったのでびっくり! 大学芋チップスも作り直した♪)と塩を使ってなかなかおいしくできたので、2匹に食べてもらうのが楽しみだ。
ハクとライムは気に入ってくれるかな?
暖かいお出汁の中に入っている長い麺は、ハクには食べにくいのではないかと気が付いたのは、ドアノブに手を掛けた瞬間のことだった。
どうしてこのタイミングなのか! もっと早く気が付いていたら、野菜とお肉たっぷりに焼うどんに変更できたのに!と後悔しても、もう遅い。
どうしよう!? 今から急いで何かを作る? でも、そろそろ2匹が起きてもおかしくない時間だから、新作は諦めてインベントリからハクとライムの好きなものを好きなだけ出してあげる?
気ばかりが焦ってしまい、どうしたらいいか迷っていると、
「アリスさま? ロビーにお客さまがお見えでございますが、いかがいたしましょうか?」
ドアをノックする音と、スタッフさんの声が聞こえて来た。
ここのスタッフさんは有能なので、今まで私が来客として迎えたことのある人なら名前を出して誰が来たかを教えてくれる。そんなスタッフさんが❝お客さま❞と言うからには、ここに来るのは初めての人だということになるんだけど……。
悪意の有無を確認しようと【マップ】を開いて、
「部屋にお通し……、ううん、私がロビーに行くわ!」
すぐにスタッフさんに返事をすると、びっくり顔のハクとライムを腕に抱いて部屋を飛び出した。
「おっ、アリス! ハク! ライム! 元気そうだなぁ!」
「アリス! 久しぶり! ハクちゃんもライムちゃんも相変わらず可愛いわね~!!」
行儀を気にする余裕なんてなくて小走りで向かったロビーには、とっても懐かしい人たちの笑顔があった。
「アルバロ! マルタ! どうしてこんな所にいるの!?」
ありがとうございました!




